dimeizaのブログ

興味のある技術(IoT/VR/Smart Speaker)とか、資格試験の話とか、日常で出会ったTechな話について書いています。

情報処理安全確保支援士の経過措置対象者に関する問い合わせと、回答を受けた私の決断

はじめに

 ここしばらく表題の件でIPAと話をしていたんですけど、彼らと経産省から回答が来たので、経過措置対象者たる私1 の肚も決まったという話でもしようかなと。

情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)と経過措置対象者について

 情報処理安全確保支援士という『国家資格』があります。この資格は登録することで名乗ることを許される名称独占資格です。

 この資格はIPA(情報処理推進機構)が情報処理技術者試験と同時に実施する試験に合格すると、登録する権利を得ることができるのですが、IPAが過去に実施していたセキュリティ関連試験である『情報セキュリティスペシャリスト』と『テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)』の合格者も、2018年8月19日までに申請を行うことによって、登録を行うことができます。

 これは経済産業省令に基づく経過措置によるもので、この経過措置を受ける2資格を有する者のことを『経過措置対象者』と呼びます。

経過措置の法的根拠

   経過措置対象者が登録資格を有する法的根拠は、情報処理の促進に関する法律施行規則(平成28年経済産業省令第百二号)の附則第4条によります。

この省令による改正前の情報処理技術者試験規則(以下「旧規則」という。 ) の規定による情報セキュリティスペシャリスト試験又は情報処理技術者試験規則等の一部を改正する省令(平成十九年経済産業省令第七十九号)による改正前の情報処理技術者試験規則の規定によるテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験に合格した者は、支援士試験に合格した者(ただし、この省令の施行の日から起算して二年を経過するまでの間に、法第十五条の登録を受ける場合に限る。 ) とみなす。

 つまり、省令施行の日から2年以内に登録を受けた場合、経過措置対象者は支援士試験に合格した者と見なされるというのが、経過措置対象者が登録を受ける法的根拠になります。

 省令の施行日は平成28年(2016年)10月21日です。

 一方で、情報処理安全確保支援士試験の事務を代行するIPAは半期に1回しか登録事務を行っていないので、10月21日以前の直近の登録締め切りである、2018年8月19日が、経過措置対象者が措置を受けることができる最後の締め切り、というわけなのです。

 なので、IPAは経過措置対象者にこんなハガキまで送って知らせてきたわけです。

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経過措置対象者の地位

 ところが、実は経過措置対象者の登録資格は、情報処理安全確保支援士試験合格者と比して、非常に不安定なものなのです。

 ここで問題になるのは以下の文章です。

支援士試験に合格した者(ただし、この省令の施行の日から起算して二年を経過するまでの間に、法第十五条の登録を受ける場合に限る。 ) とみなす。

 実はこの文章には、法的に2つの意味があります。

  1. 2年以内に登録を受ければ支援士試験に合格したものとみなす。

2. 当該登録を受けた事実が消滅した場合、経過措置対象者は支援士試験に合格した者『ではなくなる。』

 法的には2が厄介でして。

 普通に考えると、過去に行われた事実が消滅することってないじゃないですか。ところが、法的にはあり得るんですよ。

 民法第121条にこうあります。

第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

 つまり取消という行為が行われた場合、法的には、当該取り消された行為が、(取り消された時点ではなく)、そもそもの初めからなかったこととなるわけです。

 これが、IPAがWebページに載せているFAQのQ2-18(登録が取り消された後の再登録)の法的根拠になります。

お問合せ・FAQ:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

Q2-18.経過措置対象者の場合、登録が取り消されたあとに再登録は可能でしょうか?

A.経過措置対象者の場合、登録申請できるのは2年間です(平成30年8月19日申請締切)。登録が取り消された場合は、その後2年間登録ができませんので、再登録するためには、新たに情報処理安全確保支援士試験に合格することが必要となります。

 これにより、支援士試験合格者と経過措置対象者の間に、取消について異なる法律効果が発生するわけです。

支援士試験合格者:取消を受けても支援士試験合格の地位は変わらないので、2年待てば再登録可能。

経過措置対象者:取消を受けると経過措置期間内の登録の事実が消滅する→支援士試験合格者と見なされない→そのままでは再登録できず、支援士試験合格が必要。

消除について

 この辺のことを考えながら、IPAのページで申請書類一式を見ていた私は、こんなものを見つけて考え込んだんですよ。

情報処理安全確保支援士登録消除届出書

https://www.ipa.go.jp/files/000058522.pdf

 支援士は支援士の仕事を辞めるときに、登録消除を自ら行うことができます。これは情報処理の促進に関する法律施行規則24条に基づくものです。

 ところで、この消除の届出が行われたときの事務処理については、情報処理の促進に関する法律施行規則27条に規定があります。

第27条 経済産業大臣は、第二十条の届出があったとき、第二十三条の届出があったとき、第二十四条の届出があったとき、又は法第十九条の規定により情報処理安全確保支援士の登録を取消し、若しくは期間を定めて情報処理安全確保支援士の名称の使用の停止を命じたときは、登録簿の当該情報処理安全確保支援士に関する登録を訂正し、若しくは消除し、又は当該情報処理安全確保支援士の名称の使用の停止をした旨を登録簿に記載するとともに、それぞれ登録の訂正若しくは消除又は名称の使用の停止の年月日を記載するものとする。

 この辺りを見たときに、こう思ったんですよ。

  • あれ? 登録の自己消除を行うと消除の記録が残るのだけど、それでも最初からなかったことになるの?

IPAに聞いてみた

 そこでIPAに聞いてみたわけです。

  • 消除を行った場合、記録が残るのだから取消とは異なる効果を有するのではないの?

 と。

 IPAが最初に返してきた回答は、単なるFAQの焼き直しだったんですが、上記の論点をもっとはっきりさせて問い詰めたところ、経産省と協議したらしく、先日IPAがその経産省の応答を送ってきたんですよ。

情報処理の促進に関する法律施行規則(平成28年経済産業省令第百二号)附則第4条において、改正前の情報セキュリティスペシャリスト試験又はテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験に合格した者は、「支援士試験に合格した者(ただし、この省令の施行の日から起算して二年を経過するまでの間に、法第十五条の登録を受ける場合に限る。)とみなす。」となっています。

 この「場合に限る」とは、「施行後2年以内に登録されている状態にある場合」に限ると解釈します。

 このため、登録が取消しになった方、又は、登録を消除した方は、登録されている状態ではありませんので、施行後2年を経過した後に、改めて支援士の登録を受ける場合には、支援士試験に合格していただく必要があります。

 ということだそうです。

 結局、消除も取消と同じ法律効果を有するというのが、お役所側の認識という事でした。

IPAに同時に伝えていたこと

 法的には無理筋なのかもしれませんが、一応IPAにはこう伝えていたんですよ。

  • 現状、支援士登録、講習費用に見合ったメリットが登録者に与えられているとは毛頭思えない。
  • 経過措置対象者に消除と将来の再登録の自由を与えることで、現状メリットがない登録講習費用負担を強いることを回避すれば、登録者をもっと増やせるのでは?

 また、IPAは登録消除時の取り扱いについてFAQでも何ら言及しておらず、各種法令にも登録消除時の明示記載がなかったので、適切な法運用をしているのか疑念がある(審査請求の対象となりえるのでは?)、というところまで話をしていました。

 が、審査請求を受ける上級官庁の経済産業省がこう答えを返してきたとなると、仮に請求を起こしたところで徒労に終わるのは間違いないので、この辺が私の引き際かな、と思いました。

費用対効果、価値の検討

 彼らがそういう態度で経過措置対象者に臨む、ということであれば、私としては登録以外の他の選択肢を机上に並べながら、自己の原点に返ってデジタルに考えざるを得ないわけです。

 すなわち、

  • 3年間で15万(5万/年)の費用、約3人日の講習時間は、自己のキャリアプランに対して明確なリターンをもたらす、有益な投資たり得るのか?

 と。

 しかし、10回考えても得られる結論は微塵も揺るぎませんでした。

  • こんな不安定な地位を維持するのに使うぐらいなら、その登録講習費用と講習時間、他の資格や技術習得に使った方が圧倒的に有益。

自己研鑽の観点から見た適切な投資先

 例えば他のIPA資格という狭い範囲で捉えなおしても、年2回の高度試験合格に投資する金額としては、年5万でも場合によってはお釣りがくるでしょう。1個に絞るというならトレーニングコースの学費すら捻出できます。

 ベンダー資格なら2,3万ぐらいは普通にかかりますよね。(こいつも有効期限付きですけど)最近儲かる資格と言われているAWS認定を代わりに受けたっていいでしょう。選択肢は無数にあります。

 言わんやセキュリティ資格なら、世界に通用するCISSP、GIACを受けるために投資した方がさらなる挑戦ができますよね。

 …実は私自身も、(そんなに難しくはないんですが)準備にお金がかかる資格 2 を、(スキルの幅を広げるために)受ける算段をしているところです。

 そもそも、投資先を資格に絞る必要すらないわけです。資格に関係なくセキュリティを学習する場に投資することは可能なのですから。サイバー攻撃対応訓練、CSIRTの訓練をしているところも今はたくさんあります。

ペーパー試験資格の登録に拘る意味

 先日このセミナーに出てきたんですけど、

www.ipa.go.jp

 パネルディスカッションの場で、パネリストの一人が『資格試験はペーパー試験でしかない』 3 と言ってたんですよ。じゃあこだわる必要なくね? って話ですよね。

 もっと言ってしまうと、後日どうしても支援士資格が欲しい、という状況になったなら、その時5700円払って、改めて受けて取ればいいじゃないですか、と。取れる実力があるという推定故の経過措置なわけですから。

 そうなると、酷い言い方ですが、経過措置対象者が登録に拘るのは、単に『試験を受けるのが面倒』という事でしかないな、と。私自身もそういう認識があったなぁと自省しました。

 しかも登録講習の内容については、IPAの主張とは裏腹に懐疑的な見解が散見されていてですね…。

ameblo.jp

登録セキスぺを『オワコン』にする自己研鑽

 こうやって棚卸してくると、経過措置対象者として登録を受けることで、費用負担的にも姿勢的にも、かえって自己の成長に縛りをかけてしまうなぁと思いました。

 本当にスキルアップを考えていくのなら、たかだか日本国内の1資格を登録維持するための費用にではなく、外の世界に打って出るための投資のために財布の中身をぶちまけたほうが、エンジニアとしてはプラスになるよね、と。

 『登録セキスぺは自分にとっては通り過ぎた道、すなわちオワコン』という姿勢で、新たな技術領域、もっと広いセキュリティの世界を学んでいきたいという思いを強くしました。

さいごに

 そういうわけで、私は登録のことは忘却して、今後も『情報セキュリティスペシャリスト4と名乗りつつ他の研鑽に精を出しますが、これをお読みになった、去就に迷われている経過措置対象者の方は、改めて登録講習の投資が、真に自分にとってプラスになるかをご一考なさることをお勧めします。

 あ、ちなみに、支援士試験を受けようか迷っている人は、特に迷わなくていいのでそのまま受けましょう。

 受験の過程における知識の獲得と、支援士登録資格の取得自体には意味があります。

 そのうえで合格の暁には当面登録せず、IPAにも国庫にも金を入れずに静観することをお勧めします。


  1. 2015年秋合格。ぶっちゃけ支援士と区切られるほど、試験で要求された知識に差はないと思っています。

  2. 実はIT資格ですらありません。

  3. 多分口が滑ったのでしょう。『確かにそうかもだけど、それこの場で言っちゃっていいのかよ』とは思いましたが。

  4. といっても、IPA資格ベースで自己紹介するときは、(IPAの職員が件のセミナーで、ITアーキテクト』って間違えて読んでいた)『システムアーキテクト』で大抵通してます。

HD ピコ レーザー プロジェクター 自作キット for Pi [HD301D1]を組み立てて使ってみた

はじめに

 Twitterを見ていたら、たまたまこんなのを見つけてですね。

 実は我が家ではずいぶん昔に"羊の皮をかぶったオオカミ"と呼ばれたこれを使っていたんですが(1万円ぐらいで買いました)、

https://www.amazon.co.jp/Wis-KVD-Z240K-%E7%A5%9E%E7%94%B0%E7%84%A1%E7%B7%9A%E9%9B%BB%E6%A9%9F-%E9%AB%98%E8%A7%A3%E5%83%8F%E5%BA%A6%E5%B0%8F%E5%9E%8B%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC/dp/B00ABYEUBKwww.amazon.co.jp

 そろそろ年季も入ってきたのと、(ファンを交換したにも関わらず)そこそこファン音がするので、次世代品をそれとなく探していたところだったので、何も考えずにポチって見ることにしました。

 組み立てて使ってみたところ、簡単に組み立てできて、なかなかの使い勝手が期待できそうなので、写真を付けて組み立て手順を共有してみます。

部品

 こんな感じです(ヒートシンクの袋だけ撮り忘れてたので別撮り)。

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組み立て方

1. ①のねじで入出力用基板を金属板に固定

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2. フィルムケーブルをヒートシンク付き基板(レンズ付き基板)と入出力用基板に差し、レンズ付き基板を1のねじで金属板に固定

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 フィルムケーブルは"TOP"って書いてある方を上にします。

3. ②のねじで③のスペーサーを金属板に固定

上面

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底面

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 この底面中央の大きなねじ穴は三脚固定用です。

5. アクリル板のシールをはがし、④のねじでスペーサに固定

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 これで出来上がりです。簡単でしょ?

使用例

 自宅は天井がほぼ白なので、天井投影で試してみました。

 昼間(午前11時頃)ですが、1級遮光カーテンを2重にしてがっつり遮光しています。

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 これ1はPCのDVI-HDMIケーブルから入力しているんですが、PCからの入力解像度は1280x720で認識されていました。

 取り急ぎ天井に映しただけなので、角度とかは適当ですが、まぁ特に問題なく見れる感じです。

 何となくKVD-Z240Kの方が画像がくっきりしているような第一印象でしたが、もう少し使い込んでみたいところです。

設定

 側面についている音量調節の歯車はボタンになっていて、押し込むと設定画面を出すことができます。

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 最初は中国語表示なんですが、Language設定を選択すると日本語表示にすることができます。

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 明るさは最初から最大設定になっていました。

 精細度はピント調節みたいな調整でしたね。多少ぼやけているようであれば設定しておくといいかもしれません。

所感

 光量はお世辞にも強くないので、昼間ならがっつり遮光するか、夜間に使用することをお勧めします。

 ファンがないので無音なのはかなりありがたいです。

 音声出力はHDMI経由で入力できていて、ステレオピンプラグから取ることができます。

 RasPi向けってことになってますが、別にRaspberry Piが必要なわけではないので、軽く手を動かしながら小型、静音、高コスパのプロジェクタが欲しい人は、試してみてもいいんじゃないでしょうか。

 しばらく使い込んでみて、新たに感想が出てきたらまたシェアしようかと思います。


  1. やっぱりTwitterを見ていたら、これの聖地に撮影に行った人が怒られた、って話が流れてきたので興味を持って見てみました。インドア派なので多分キャンプには行かないと思いますが、現在3周目です。

おっさんエンジニアがまったり1年かけてTOEICを265点上げて800点を達成した話(4)

 最後は試験によって得られた成果と、最近の取り組みについての話でも。

TOEICに取り組んだ結果

 よく、『TOEICに意味はない』『TOEICなんてやっても無駄』とか言われたりもしますが、私にとっては結構意味がありました。

1. 一定のレベルに達すると、『英語に関わる』ことに対する抵抗感がなくなる

 一言で言うと、『英語アレルギーを克服できる』ってことです。

 私の場合大体700点台に到達したあたりから、

  • あれ? 何か英語勉強していてもあまり苦しくなくなったな

 という感覚が出てきたんですね。それどころか、

  • この英語圏の情報、取りに行ってみるか

 と、自分から英語の情報に手を伸ばせるようになります。

 昨年9月にこんな記事を書いたと思うのですが、

dimeiza.hatenablog.com

 このNUC、amazon.comで、つまり英語圏で買い物をしているんですが、実は昨年の7月に700点を達成していた後のことだったりします。

 その後、昨年11月のサイバーマンデーRyzenamazon.comで注文してみたり、先日はEssential Phoneを注文したりと、英語圏で買い物をすることができるようになったばかりか、先日はサポートを受けるために英語でチャットしたりと、自分の目的を達成するためのツールとして使い始めるようになりました。

2. 英語アレルギーを克服するまでの間は、スコアが補助輪的なインセンティブになる

 英語アレルギーを克服して、英語に自然に触れるようになると、学習と実力の間に障害なく正のフィードバックが回り始めますが、それまでの間はどうしても『分からない』『理解できない』苦痛が出てきてしまうんですね。

 自然な成長実感が得られないこうした時期においては、数値として見えるスコアが上がっていく、という『分かりやすいフィードバック』が、学習者を補助的に支えるという効果を持ちます。

 TOEICのスコアは優劣を競うものではなく、実力を序列化するものでもなく、単に『一私的団体が作成した問題をどれだけ解けたか』の指標でしかありません。どう使うかはすべて受験者に委ねられている、と言ってもいいでしょう。

 なので、受験者としては、『自分にとって最も価値のある解釈の仕方をする』のが合理的です1

 その一つとして、『成長を可視化して実感を作り出す』という使い方をしてもいいんじゃないかと思います。

3.英語で世界に働きかけられるようになる

 ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、昨年末からこんな取り組みをしていてですね。

qiita.com

qiita.com

qiita.com

qiita.com

qiita.com

 AlexaとGoogle Assistantを1台のRaspberry Piで同時に動かす、って話なんですが、両者の公式情報に当たるとすぐに分かる通り、いずれも英語の情報なんですね。

 読めるようになったので英語の情報を拾ってくる、ってだけじゃなくて、この成果をyoutube英語で公開したら、外国の人から質問が来たので、諸々やり取りしたりしています。

 さらに調子に乗って、githubに成果物を公開して、英語でREADMEを書くところまでやってしまいました。

github.com

 この辺、(特にRaspberry Pi zeroでのWakeword付き並行動作は)あまり先例のない試みなので、ほんのわずかですが世界にcontributeできたんじゃないかな、と。

 アウトプットはまだ始めたばかりで、google先生の力も借りていて、見る人が見ると下手なんじゃないかと自覚はしているのですが。

* 下手だろうが知ったことか! 全力で伝え、伝わればいいんだ!

 という開き直り感が最近出てきましてね。

 日本のAmazonで、片言の日本語で一生懸命商品を紹介しながら、それでも売り上げを稼いでいく中国の人たちの商魂を見ていると、

* 上手下手に拘らず、とにかくコミュニケーションに挑む

 ということが、今後英語を一層求められるようになるであろう、われわれ日本人が認識しておくべきスタンスなんじゃないかなぁ、と最近思い始めています。

ここから先、歩むべき道

 ぶっちゃけですね。

* 730取ろうが800取ろうが、読めない単語も多いし意味の取れない文章も多い

 のですよ。世間で憧れられているような、ペラペラスラスラの領域はまだまだ程遠いのです。

 ただ、800は一つの節目であり、私自身の今年の目標と合わせて、今後はReading, Listeningの取り組みと並行して、Speaking, Writingの2つの側面を新たに加え、4つの領域から英語を深耕していこうと思っています。

 今取り組んでいることを書いておくと、こんな感じです。

Reading

 通勤電車の中で、過去に読んだ邦訳文書の原典に当たっています。

 一つはこれ。

www.joelonsoftware.com

 私は若いころからJoel On Softwareの大ファンで、20代のころはmoreも含めて暗記する位読んだんですよ。

 これを英語で読んだらどんな感じだろうなぁと思って、邦訳があるエントリを中心に読み始めています。

 もう一つはこれ。

 これも邦訳を読んで瞠目させられた口なので読み始めていますが、まだちょっと難易度が高いかな、という印象。

Listening

 『1日1TED』と勝手に名付けたキャンペーンを絶賛実施中です。

www.ted.com

 実は枕元にiPadを据え付けていて、寝ながら動画を見れる環境があるんですが、平日は必ず寝る前に1つTEDを聞くことにしているんです。

 聞き方は、あえて日本語字幕を表示しつつ、英語を聞き取って、日本語字幕と対比する、という感じです。

 ヒアリングした単語から日本語の文章を組み立てられるか、という視点で聞くと、聞き取りの精度に自覚的になりつつ、聞き取れなくても興味深い内容を取りこぼさなくて済むので、楽しみながらヒアリングを鍛えられるかな、と思っています。

 寝る前の学習は記憶にもいいらしいですし、寝ながらで気楽に聞けるので、いい感じで続いています。

Speaking

 ここはまだ始めたばかりで、今のところは瞬間英作文に手を付け始めました。

 もう少し力を付けたら、TerraTalkとかにも手を付けつつ、慣れてきたら英会話教室かなと思っています。

https://www.terratalk.rocks/ja/www.terratalk.rocks

Writing

 この辺は先日のGitHub以来、まだあまり手がついてません。

 技術情報を英語で書ければなーと思っていますが、もう少し学習寄りの活動を視野に入れた方がいいのかも、と考え中です。

さいごに

 1年間にわたって挑んできたTOEICですが、スコアを徐々に上げながら、英語学習のループを作ることができ、いい感じで成果を収穫できたように思います。

 まだまだ会話も含めた実用には程遠いので、学習はずーっと続くのですが、とりあえず苦手を克服し、次の領域へのステップを踏むことができたかなと。

 『万人にとって有効な唯一の英語学習法はない』ので、ここに書いてあることがどれぐらいの人に役立つのか分かりませんが、私と同じように英語アレルギーに苦しみ、苦手を克服して世界を広げようとする人々(特にエンジニア)の役に、少しでも立つことができたら、筆者としては何よりの幸いでございます。


  1. そういう意識もあって、最初の回で述べたように、私はあえて非対称な解釈の仕方をしていた、というわけです。

おっさんエンジニアがまったり1年かけてTOEICを265点上げて800点を達成した話(3)

 前回まででモチベーションについて書いたので、今回は具体的な学習サイクル、教材とか、戦術の話をします。

学習サイクル

 実は今回の英語学習のサイクル、一昨年までにやってきた高度情報処理技術者試験勉強のサイクルとほぼ同じなんです。

学習時間的な話

 学習時間で書くのが簡単かと思うのでリストアップしますが、実は以下2種類の時間しか使っていません。

  1. 通勤電車の中(往復合計で約30~50分)
  2. 週末午前中(土日、約120分づつ)

 これを大体1年間やりました。ってことは単純計算で1

学習タイミング 学習時間[分] 回数[回] 合計[分] 合計[時間]
通勤時間帯 40 260 10,400 173
週末(土日) 240 52 12,480 208
合計 280 312 22,880 381

 400時間に満たないですね。

 ただまぁ、仕事の中で英語の文書を読んだりはしているので、その辺を加味するとずいぶん違ってくるとは思います。私は比較的読まされる量が多い方かもしれませんが、エンジニアであれば、最近のオフィシャルドキュメントはたいてい英語だったりしますから、そんなに大きな差はないかとは思います。

 学習時間、今計算してみて意外に短いなぁ、と自分でも思いましたが、この学習タイミング自体は意図的に計画したものです。

 前回も書いた通り、仕事をしたり家事をしたり、睡眠もしなきゃいけませんから、生活サイクルとコンフリクトする計画は立てられないですし、学習時間を延ばして苦痛になって辞めてしまったら意味がありません。

学習時間の『品質』

  そうは言っても限られた時間なので一つ工夫したのが、

* 『高品質な学習時間』と『低品質な学習時間』を分け、それぞれに最適な勉強をしよう

 ということでした。

 例えば通勤時間は電車の座席に座って(あるいは立って)、学習コンテンツを視聴するわけですが、電車の中って語学学習の邪魔が結構入るじゃないですか。

 ましてや紙と鉛筆を広げて問題を解く、なんてことはとてもできないわけです。

 一方で、週末自宅の机に向かっているときは、

  • 様々な娯楽コンテンツの誘惑はある

 のですが、

  • 電車に比べれば比較的静か
  • 机も広いので紙と鉛筆を使おうがパソコンを使おうが自由自在

 という環境の静謐と空間的余裕があります。

 なので私は、

* 自宅週末の『高品質な学習時間』では、新しい概念(新単語、文法、発音)の習得に注力する

* 電車の中の『低品質な学習時間』では、既存概念の復習、適用に注力する

 という立て分けをしました。

 両時間ごとに、使用したコンテンツを紹介していくのが、この際ちょうどよさそうですね。

『高品質な時間』に取り組んだ事柄

 大きく3つの取り組みをしています。

1. iKnowで『新規単語』のインプット

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 まずはiKnowで単語学習。

 iKnowは『新規単語を学習』→『忘却タイミングに合わせて単語の問題を繰り返し出題して復習』→『一定数正解するとマスター』という流れで単語学習を進めるようにデザインされています。

 iKnowを開くとこんな画面が出てくるんですが、下の『アイテム』に『新規のみ』と書いてある場合、既出単語の復習を全く行わずに、新規単語だけが出てくるようになります。

 これを1回につき20から40単語回してました。

 iKnowでは問題に回答した際、単語を使った例文が出てくるので、その例文を有声でリピーティングしてます。

 最初に単語学習を持ってきているのは、簡単でとっつきやすく、気乗りがしないときでも、学習に手を付け、継続するための呼び水になるからです。

2. DSの英語アプリを動かす

 最初は1回目で説明したえいご漬けをやっていたのですが、文字の認識率が低くてイライラしてきたので、このイライラは危険だなと。

 今回は従来と違ってTOEIC照準で勉強しているので、途中から、比較的新しいこれに切り替えて勉強を進めていました。

 各パートごとに勉強できて、それほどストレスなく操作できているので、割と長く続いていますね。

 あえて自宅でDSによる学習方法を選択しているのは、

  • 回答を紙に書いた後で、自分で自己採点するのが面倒

 という心理があったからです。

 そもそもTOEICの本試験だってOMR(マークシート)で採点しているのに、人間様がわざわざ手書きで採点する技術的必要性なんぞなかろう、と。

 『公式問題集で勉強するといいよ』と周囲にも言われていて、やった方がいいんだろうなぁ、と思ってはいるのですが、結局手を付けずにここまで来ています。

 このソフト位の手間で自動的に採点、評価してくれて、かつ新形式に対応した電子上の高品質な学習コンテンツがあれば、是非それをやってみたいと思ってはいます2

 大体このDSによる学習を30分から40分ぐらいやって、次に入ります。

発音または文法の学習

 あとは発音の練習『か』文法の練習をやって、その日の学習を終えていました。

 両方同時にはやらないようにしていました。疲れるので。

 発音についてはこれで。

 後半のParrot's Lawとか英文読書はとりあえず置いといて、発音バイエルを最初から最後まで、付属のCDをシャドーイングする形で練習していました。

 TOEICに関しては、『正しい発音を知らないと、脳内でカタカナ変換を伴ってしまうので、英語をパッと理解できない』という点がListeningに効いてくるので、一見関係ない発音の練習は(今後会話に進むための下準備としても)しっかりやっておいた方がいいかと思います。

 あと、この本の『はじめに』に書いてある

結局、語学の学習の秘訣は『壮大な慣れ』です。

 という言葉はすごく私に刺さりました。

 これを読んだとき『特別なことをする必要はなく、慣れないことと分かったうえで何度も繰り返して、長い時間をかけて慣れていけばいいんだな』という理解と安心を得たのを覚えています。

 一方、文法についてはこれで。

 この本、『構造、フレームワークで英語の文章構造を論理的に分解する』という点において、非常によくできた本です。

 われわれ日本人は日本語の文章を理解するときに、わざわざ『単語を分解して、各単語の品詞を解釈して、構造を把握した後で意味を理解する』とか七面倒なことをやってないかに見えるんですが、それはやらないのではなくて、脳内で超高速に無意識的にやっているだけだったりします。

 実はこれは英語についても同じことが言えるのですが、我々は英語の文章を超高速かつ無意識的に品詞分解、構造把握できるわけではないので、まずは意識的にそれをやりましょうよ、という本ですね。

 個人的には、この本は論理的思考を求められるエンジニアに対しては結構親和性が高い本なのではないかと思いました。理詰めで、『なぜこの単語はそのように解釈しなければならないのか』といった問いに答えてくれる本です。

 この本は文法の基本要素から少しづつ読み進めつつ、読み進めるたびに練習用テキストが提示されます。そのテキストに対して、文法上のQuestionが提示されるので、Answerをよどみなく言えるようになることを求められます。

 このQuestionに対するAnswerを口頭で回答する練習をひたすらやっていました。

 実はAnswerは暗記しても良い、とこの本自身に書かれているのですが、実際に暗記していくだけでも、練習用テキストだけでなく初見の英文に対して、構造を自動的に解析する癖がついてくるんですよ。

 この効果はPart5以降のReadingにおいて絶大なものがあります。気づかない間に、

  • あぁ、この"arrived"は『準動詞』で、『分詞構文』ではなく『過去分詞形容詞用法』で使われているから、『大黒柱』になる動詞は別の動詞"went"の方だな
  • あれ? ここには現在形の『述語動詞』が2つある。両方とも『準動詞』にはならないから、後ろの方は『従属節』か

 みたいな構造把握のための脳内回路ができて、問題を解くときに自動的に作動するようになってきます。

 一方で、実はこの本についてはいろいろ批判があります。著者の薬袋先生もそのことを認識していて、『あとがきに代えて』で批判に対する回答をしていたりするんですが、その中にこんなことが書いてあります。

これは私の持論なんですが、英語の勉強法には、万人に妥当する唯一絶対の方法などというものはない。

大事なことは無作為に抽出した10人の中にいつも2人は私のやり方で劇的にできるようになる人がいるということなのです。また、この2人に入らなくても、私のやり方に触れて魅力を感じる人であれば、勉強を続けると必ず実力は向上します。

 私はこの本で文法に関する理解が一気に進んだので、『劇的にできるようになる人』に近い感覚を抱きました。ただ、人によるのではないかとも思っているので、一度見てみて、合うと思ったらやってみるといいんじゃないかと思います。

TEDを聞く

 これは余裕があれば。

 ノルマをこなし終えて時間と精神に余裕があれば、TEDで興味のあるネタを見つけて聞いていました。

www.ted.com

 TEDについては最近取り扱い方を変えているので、最後にちょっと話をします。

『低品質な時間』に取り組んだ事柄

 通勤電車内で何をやったか、って話ですね。

1. iKnowで既出単語の『復習』

 週末に勉強した既出単語の『復習』に絞って取り組みます。

 iKnowの学習サイクルの中で新規単語を学習しようとすると、そのサイクルはボリュームが増えてしまう、という特徴があるのと、落ち着かない電車内でやるなら、新規学習という高コストの学習作業ではなく、もう少しハードルの低い復習をやろう、という発想です。

 この時もリピーティングしていますが、流石に声を出すわけにはいかないので無声で。

2. 英語リーディング教本の読解

 文法書を読むだけならパッシブな作業なので、それほど苦も無くできます。ここで文法の内容を先に読んでおいて、週末に暗唱する、という流れです。

3. 英語ニュースを読んでみる

 これは比較的最近の取り組み。POLYGLOTSを使っています。

play.google.com

 テクノロジーのジャンルからニュースを取ってくると、TechCrunchのニュースとかを表示してくれるので、エンジニアも興味を持って読み進めることができます。

 WPM(Words Per Minute)とか、読解速度を表示してくれたりするんですが、読むのが遅い私は大抵比較されると凹むので、あまり気にせずに読んでいます。

ここまでのまとめ

  • 学習は通勤電車の中と週末に集中的に。苦痛にならないような時間配分を意識した。
  • 週末の高品質学習時間では単語学習から入り、手や口を動かす高コストな学習を実施。
  • 通勤電車の低品質学習時間では既出単語の復習や文法読解など低コストな学習に絞って実施。

 こんな感じですね。

 ただ、これで十分だとは思っていなくて、より良い勉強法を今もなお模索中です。

 最後は試験によって得られた成果と、最近の取り組みについて話をしようかと思います。


  1. 1週間52週、毎週5日通勤。祝日や休暇を考えるともう少し少ないかも。

  2. PC、DS、スマホ等でよさげなのがあれば教えてください。

おっさんエンジニアがまったり1年かけてTOEICを265点上げて800点を達成した話(2)

 前回までで英語学習のための背景を話しましたが、次は学習の骨格となる、モチベーションの話を。

モチベーション

 『英語を勉強する』って言うと、この現代社会、右にも左にも勉強法が溢れていて、頼まなくてもノウハウを教えてくれるような世界だったりするじゃないですか。

 ところが、あちこちで聞きまわったノウハウを手にして実際に英語学習に取り組もうとしても、長続きしなかったり効果が出なかったりするというケース、割と多かったりしません?

 少なくとも私はそうでした。

  • えいご漬けでゲーム感覚で勉強しているはずなのに、いつしか苦痛まみれになり、勉強を止めてしまう
  • iKnowをLifetimeプランで買って自腹を切っているのに、やっぱり苦痛で単語が身につかない
  • そもそも12年間も学校英語やってきて、しかも好成績で卒業しているのに、一向に英語が楽しくない

 最後の奴、実はそうなんですよ。学校英語の成績は決して悪くなかったのに、社会人になってから英語に苦しんでたりするんです。

『自分にだけ意味のある、英語に取り組むメリット』に腹落ちする

 この理由はいたって簡単で、

* 英語を習得する/使いこなすことに対するメリットを腹落ちしていない

 ことに尽きます。

 口でも頭でも『英語を理解できたらいいなー』と漠然と思っている状態だと、英語学習を作業以上の何者かにすることができないんです。

 前の記事で長々と、個人的な背景を語ってきたのには明確な理由があって。あそこで書いたことが、『私にだけ意味のある、英語に取り組むメリット』なんです。

 客観的に見れば、英語を習得した程度で、一個人が世界に何等か影響を与えることなんてできないのかもしれません。

 しかしそれは他人にとっての意味付けであって、私にとっては関係のない話です1

 自分の中に、自分のためだけの、英語を取得するメリットが内発的に存在し、燃え続けている限り、英語学習の歩みを止めない原動力になりますし、空回りを防ぐこともできます。

 まずはこれを灯し、薪をくべ続け、消さないことを意識しましょう。

長期戦であることを覚悟する

 よく、『2か月で』『3か月で』800点取るぞ的なキャッチーな広告なり、成果報告なりを目にすることがあります。

 短期間でがむしゃらに、というのは確かに一見効率よく見えますし、実際に成果を得られるのであれば、それはそれでよいことだと思います。

 一方で、学業にすべての時間を使える学生と違って、現実世界で日々の仕事や生活に追われながら生きる我々としては、1日10時間の勉強なんて空想の中だけの話ですし、5時間確保するのだって極めて難しいわけです。

 また、後述しますが、TOEIC800点取ったからと言って、一部で喧伝されるような英語全能者になれるわけではないですし、これから先も絶え間なく学習の道は続くわけです。

 この辺の状況を考えると、

* 会話も含めた実践的な英語習得はロングスパンで計画し、行動する

 ということは大事です。

 私の弟は大学時代から英語に秀でていて、今は世界を飛び回りながら英語で研究者と議論するような堪能な奴なんですが、その弟にして、

『英語の勉強ってコスパ悪いからね』

 って言ってましてね。短兵急に結果を求めて落胆しないようにするためにも、長期戦であることは覚悟しておきましょう。

苦痛にするほど追い込まない

 長期戦である、ということは、『一瞬だけ苦しい思いをして突き抜ければあとは楽』みたいな戦術が使えないってことです。

 もし日々の戦いが苦痛で、その戦いが長期戦なら、ずーっと苦痛が続くことになりますが、それは誰だって嫌ですし、脱落者を生む道ですよね。

 であるならば、

* 日々の取り組みを苦痛にしない。苦痛だと思ったらいったん止めるなり、やり方を変えて苦痛でないようにする

 という意識もまた必要になってきます。

 ずいぶん昔にこういうツイートが流れてきたんですが、

 私はこれとは逆の立場を取っていて。

 例えば今は昔と違って、新技術を広く展開しようと思ったら、ペインレスなチュートリアルって必須じゃないですか。

 最近だとAVS Device SDK/Google Assistant SDKAmazon FreeRTOSのチュートリアルなどは、指定された機材(Raspberry Pi等)をそろえて指定された手順通りにやれば、サクッと動く成果物を作ることができます。

 学習曲線を急峻にせず、一段階づつ着実に、転ばないよう無理なく知識を与え、最終的に何等か動く成果物をインセンティブとして与えるように設計されているわけです。

 適切に設計された学習計画を公式が与えることで、新来者を増やしてユーザの水かさを増し、市場を取っていくのが今どきのイケてる技術普及戦略ではないかな、と。

 我々が英語のチュートリアルを自分たちのために作るとしたら、同じように学習曲線を急峻にせず、転ばないように整備し、(自分という)ドロップアウトを出さないデザインにしたいと思いませんか?

 私はそう思いました。

 となると、

  • 1回の学習時間を長時間にしない。
  • 生活や仕事とコンフリクトするサイクルで学習しない。
  • 学習時間の中に、学習の本質と関係ない不要な手間を含めない。
  • 学習にリズム、サイクル、イテレーションを与え、成果にインセンティブを与える。

 といった円滑化を考えていくことも、一つ無視できない要素になってきます。

自分にとって最適な勉強法は自分でしか発見できない

 最後はこれです。

 Qiitaですげー数のいいねがついているこの勉強法、私も見たのですけど。

qiita.com

qiita.com

 2つ目は私が英語学習に取り組む前に見ていました。両方とも、私もいいねしましたし、成果を出していて立派だと思いましたし、一部は参考にしています。

 ただ、『これが私にとって最適な勉強法か?』と言われると、答えは明確にNoなんです。

 例えば前者で言うと、

1000時間やることにします。1日3時間くらいやればよさそうです。

 この時点でエー、と思うほど、私は根性なしですし、

まず最初に発音、基礎文法、瞬間英作文をやりました。

 発音と文法は私も取り組んだんですが、瞬間英作文は800取るまでに全く手を付けていません(今ちょうどやり始めています)。

 後者については、

2010年10月(大学2年生/学習開始時)

 先方は学生、一方でこっちは社会人(しかもいい歳の)で、置かれている環境、コンテキストからして全く違うわけです。

 自分にとっての勉強法を考えるときに、(このBlogも含めて、)他者の成功体験を参考にすることはできます。

 が、自分という人間のコンテキスト(境遇、仕事、性格、傾向)を知っているのは自分だけなので、そのコンテキストに最適な学習法を編み出せるのは自分だけだ、ということは認識しておくといいと思います。

 誰かが成果を出した勉強法であっても、自分がやりたくなかったり、成果が出なかったりするのであれば、自分にとっては無価値。逆に誰かにとって意味がなかったとしても、自分が成果を出せるなら、そのやり方には自分にとっての価値がある、ということです。

 平たく言うと、『英語の勉強法は(自分も含めて)学習者の数だけ存在する』のです。

 自分の学習法は他人からコピーするのではなく、これまで述べた3点を意識しつつ、いいと思ったものをまずは取り込んでみて、実際に回しながら評価し、組み立てていくと、しっくりくるものができるんじゃないかと思います。

ここまでのまとめ

  • 誰よりも自分にとって、英語を学ぶメリットを意識し消さないようにしよう。学習という作業をする価値はそこからしか生まれない。
  • 長期戦であることを覚悟する。たとえ800取っても英語への学びはずっと続くのだから。
  • 学習を苦痛にしないようにしよう。自分にとっての英語チュートリアルをペインレスに、ドロップアウトを出さないように設計する。
  • 自分に最適な学習法は自分で組み立てる。他人の成功例をうのみにする代わりに使える所を盗み、回しながら評価しよう。

 一見ポエム的に見えるんですが、自分の感触としては学習計画や方法よりも、この辺りのモチベーションが学習の骨格であり、成否を分けると思ったので力いっぱい書きました。

 では、そろそろ戦術的な話に入っていくことにしましょう。以下次号。


  1. 最後に成果をちらっと話しますが、英語でアウトプットをし始めたりしているので、ほんのわずかではありますが影響を与え始めたりしています。

おっさんエンジニアがまったり1年かけてTOEICを265点上げて800点を達成した話(1)

はじめに

 先日、表題の事項が発生しまして。

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 今回に関しては、まぁなんというか、率直に言ってまぐれだとは思ったのですが、

  • もう若くもなく、学力も全盛期(20台)には到底及ばない、いいお年頃のエンジニアが、
  • 英語好きではなく、むしろ英語アレルギーを抱えた状態から、
  • バリバリがむしゃらにではなく、仕事と両立しつつ、無理せず、ゆっくり着実に
  • 予定より半年前倒しで、多くの人の目標点に到達した

 という状況になってしまったので、これは自分のやってきたことをシェアしておかないと罰が当たるんじゃないかと思い、筆を執ることにしました。

背景

 TOEICへの挑戦を始めたのはちょうど1年前ぐらいの頃でした。

仕事からの要求

 これまでも仕事の中で参照技術仕様やら何やらで、英語の読解を求められることは多かったのですが、そのたびに『なんとなく理解』『勘』『他力本願』で何とかやり過ごしてきました(と言うと関係者にすっごく怒られそうですが)。

 ただ、ここ最近は以前にもまして、対峙する技術仕様に英語の割合が増えてきたのです。

 しかもソロで動くことが増えてきていて、他人の力を借りることも難しくなってきました。

情報獲得の速度

 一方で、Twitterとかで諸外国やら、識者から流れてくる情報を眺めていると、大抵英語が最初の情報源じゃないですか。

 そして、英語で発信されたものが日本語に変換されて国内で周知されるまでに、どうしてもタイムラグが発生してしまう、と。

 技術の情報源が母国語頼みだと、タイムラグの長さによって、われわれ日本人は2種類の不利益をこうむってしまう、と思ったのです。

1.情報の鮮度が失われ、価値を失い陳腐化する。

 せっかく収集の努力をしても費用対効果が悪くなってしまいます。

2.母国語では決して発信されない情報が存在する。

  海外の技術書だと、ずーっと翻訳されない名著があったりしますよね。

 どの本だか忘れましたが、2000年代に英語で著された本が、10年以上後になって邦訳された、なんて話を聞いた辺りで、

  • 英語の情報源の取り扱いを他人には任せておけないな

 と思いました。

自分は世界を変えられるかもしれない

 もう一つ、あまり社外にアウトプットしてないので張り子の虎なんですが、IT関連のセンスは(周りの人と比べると)自分では結構あるなと思っているのです。

 小手先の技術だけではなく、取り扱う技術の広さや、設計やマネジメントの考え方、知的財産等異分野の知識など、若手にはない地力もついてきています。

 そういった(ある程度肥えた目で)、英語圏から発信されてくる情報とか、海外を渡り歩くような一流の有識者の言動行動を見ながら、不遜にも

  • こんなの、単に英語だってだけで、言っていることや考え方は(我々と)それほど大きな差はないんだな

 と思い始めてしまったのです。それどころか、

  • ひょっとして、自分は英語ができるようになったら無敵なんじゃないか?

 傍から見ると噴飯物な、根拠のない自信を持つようになってしまったのです。

 まぁ実際そんなことはないでしょうし、大抵の人は鼻で笑うと思うのですが、この、

  • 英語を学ぶことで、自分は世界を変えることができるかもしれない

 という、アウトプット、アクティブ志向のモチベーションは、実は情報を取りに行くというパッシブ志向のモチベーションよりも、自分にとってずいぶん魅力的で、大きな原動力になっていました(今でもなっています)。

そういうわけで

 2016年までに高度情報処理技術者試験に3連勝して勢いをつけ、継続的な自己学習も習慣化できたことだし、

  • ここらで一度本気になって、英語、ぶっ潰しますか

 と、昨年の初頭から取り組みを始めた、という次第でした。

スタート地点

 そもそも最初はどうだったのか、という話です。

最初のスコア

 表題の通り、265点上げて800点なわけですから、最初の結果は当然こうだったわけです。

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 600点行かないにしても、そこそこできてた方じゃん、という方もいらっしゃるかもしれません。Qiitaに掲載されていた記事の300点台よりはよほど恵まれていますね。

 この辺は、

仕事の中で参照技術仕様やら何やらで、英語の読解を求められることは多かった

 という点が多少効いてはいます。ただ、いきなり無勉強でTOEICを受けるわけはなく、年明けから多少勉強してこの数字だったりします。

これまでやってきた取り組み

 割と前からこれをやってきてはいました。

 一応最後まで走ったんですが、後半の方は惰性というか、あまりやる気がない状態で進めていて結構苦痛でした。

 あと、実はずーっと昔からこれをやってまして。

iknow.jp

 5,6年ぐらい前に友人が続けて取り組んでいるという話を聞いていて、Lifetimeプランを契約して、出勤前の時間帯とかにちまちまやっていたのですが…。

 しばらく続けていると面白い技術や技術書が出てきて、そっちに飛びついて英語の方は忘れてしまう、なんてことを何度も繰り返していました。この辺はエンジニア特有の落とし穴かではないかと思います。

 そういうわけで、世間標準からすれば英語に触れる機会は多めだったのですが、英語自体には強烈な苦手意識が伴っていました。通りの良い言葉で言うと『英語アレルギー』という奴です。

  • ググる→英語のページしか出ない→必死で日本語のページを探す→そこから読み始める

 とか、

  • 英語のページしかない→読み始める前にエキサイト先生にご登場願う 1

 みたいな行動パターンを紹介すると共感していただけるでしょうか(今までよくやってこれたな…)。

推移

 こんな感じでした。

受験日 Listening Reading Total
2017/3/12 265 270 535
2017/5/21 350 295 645
2017/6/25 380 285 665
2017/7/23 415 290 705
2017/10/22 370 340 710
2017/11/19 390 340 730
2017/12/10 355 315 670
2018/3/11 445 355 800

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 まぐれ、って言った理由が分かったでしょ? 前回の試験が予想外に悪く、今回が予想外に良かった、というのが正直なところです。

 Listeningのスコアがガッと上がっているので、最後こんな値になっているんですが、紆余曲折ありながらもじわじわ上がっている格好になっています。

 『TOEICは受け続けているとスコアは上がっていくよね』と、英語堪能な知り合いには言われたのですが、このグラフやら上述の事項やらを見て言えることは、

勉強し続けても、必ずしも順調に上がっていくわけではない。 スコアは試験の内容やらコンディションに依存して上下にブレる。

 ということです。

 TOEICのスコアに一喜一憂してはならない、とよく言われますが、一歩推し進めて私は、

* 上がったら『ハードルを越えられた』と全力で喜び、落ちたらなかったことにしてスルー

 という風に、非対象に取り扱うように心がけていました。

 ちょっと先走ってしまいましたが、ここから先、(ある意味で勉強法より大事なメンタル面について)話をした後で、実際の戦術を書いていこうかと思っています。

 以下、次号。


  1. 岡部「英語か! エキサイト先生にご登場願え!」ダル「そんなめんどいことしてられねっつの! 訳すると…ハ~イ、ポールゥ!」 …改めてこのシーン見直したんですが、ダルが使った翻訳ソフト、2010年だというのにGoogle先生真っ青の翻訳精度ですよね…。

Developers Summit 2018【16-C-6】The Amazon Way~Amazonのソフトウェア開発~ 聴講メモ

講演資料

 資料公開予定なし。

概要

 外部から伺い知ることが少ない、Amazonのソフトウェア開発の姿について、特にAmazonのバックボーンであるカルチャーを中心に紹介する。

スピーカー

 Amazonの西谷さん。

詳細

  • 今日は、ソフトウェア開発の手前のところ、カルチャーの話をしたい。

The culture of Innovation

  • イノベーション、インベンションがクリエイティビティを開放する、という言葉がAmazonにはある。

  • ミッション

    • 地球上で最もお客様を大切にすること
      • ここでお客様とは、ものを買う消費者だけではなく、販売者、企業、コンテンツクリエイターも含む。
    • 安心感をもたらす
      • お客様の生活を楽にする、というコミットメントに根ざしている。
    • 常にお客様を起点に行動する
      • ミッション、コミットメントのスタート地点として。
  • Customer Obsessionという考え方。

    • Obsessionという言葉の訳は難しいが、お客様への執心、執着というニュアンス。
  • 顧客重視と長期的視点

    • 創業時から一貫して変わっていない。
    • 1997年の株主向けレターにおいて既に明言されている。
      • お客様への徹底的なフォーカス。
      • 長期的視点での投資を継続。
    • 売上は成長し続けているが、純利益自体はフラットに推移している。
      • 得た利益を次の投資として回し続けているということ。

イノベーションの例

  • こうした投資の結果、いろんな領域でイノベーションを起こし続けている。

    • Amazon Dash Button

      • 汎用的なボタンだけではなく機器に組み込まれたボタンなどもある。
    • Amazon倉庫内の流通システム。

      • 商品を搭載した、たくさんの棚が自律的に可動している。
      • 各棚の軌道計算、衝突回避はAWSで行っている。
    • 配送システムも刷新し続けている。

      • ドローンによる配達の実証実験とか。
    • 最近だとAmazon go。

      • シアトルにある実店舗。
      • レジで会計せずに品物を買える。
    • ただ、国ごとに差があって全てのイノベーションを同時に実現することは難しい。

創業時のコンセプト

  • 紙ナプキンのスケッチ。以下の要素が配置された図。

    • Selection(品揃え)
    • Customer Experience(顧客満足)
    • Traffic(トラフィック)
    • Sellers(売り手)
    • Lower Cost Structure(低コスト構造)
    • Lower Price(低価格)
  • 以下の循環の中で成長する。

    1. Selection(品揃え)の実現でCustomer Experience(顧客満足)が向上する。
    2. Customer Experienceが向上するとTraffic(トラフィック)が増える。
    3. Trafficが増えるとSellers(売り手)が増える
    4. Sellerが増えるとSelectionが増える
  • また、以下の構造も含まれている。

    1. Lower Cost Structure(低コストのオペレーションの実現)がLower Price(低価格化)をもたらし、
    2. Lower PriceがCustomer Experienceにつながる
  • AmazonAWSの社員も普段から親しんでいて、AWSも同様の考え方になっている。

イノベーションのための組織づくり

メカニズム

  • PRFAQ(PR+FAQ)

    • 新しいプロダクトの開発時にプレスリリースから書き始める。
      • 主題、副題、サマリ、課題、解決、引用など。
    • 製品の具体的なアイデアとデータを提供する。
    • FAQも事前に準備する。  
    • こうしたプレスリリースを書くための研修が社内にある。
    • もちろん初版をそのまま使うことはない。

      • 書いて、見てもらって、リバイスして、プロダクトにつなげる。
    • どういったものを作って誰に売るかというDecisionの後押しをすることが目的。

      • 誰に何を売るかわかりやすくする効果がある。
  • プレゼン文化はない。

    • アマゾンにはプレゼンを使った会議はほとんどない。
      • プレゼン形式だとプレゼンターの喋りが上手ければ、内容も良く聞こえてしまう。
    • Amazonで複数名で検討を行う際には、6pagerと呼ばれるレポートを使う。
      • ファクトベースの数ページのレポートを先に配布し、
      • 数分間読んでもらい、
      • その後ディスカッションする。

アーキテクチャ

  • いわゆるマイクロサービスとセルフサービスプラットフォーム。

    • セルフサービスプラットフォームがAWSの元になった。
  • 2001年頃、Amazonが大きくなる中で、アプリのモノシリック構造が問題になった。

    • 大量のディベロッパーが1個のアプリを構築し、1本のラインでデプロイするプロセス。

      • ちょっとした修正も重厚長大なパイプラインを通さないといけない。
      • アプリ一つ(機能一つ)デプロイするのに全体更新が必要だった。
    • 解決策としてはいわゆるマイクロサービス。

      • そしてDevOps。
      • この辺りは組織とも切り離せない。

組織

2 Pizza Team
  • Amazonのチームは2 Pizza team。

    • ピザ2枚でまかなえる人数がちょうどいい、という発想。
    • アイディアを早く形にしてフィードバックにすばやく対応するには、大規模な組織ではなく少数精鋭でやったほうが効率的。
    • AWS含め様々なプロジェクトで適用されている。
  • こうして作られた2 Pizza teamは、作るものに対するすべてのオーナーシップを負う。

    • プロダクトの計画策定 ロードマップ
    • 開発
    • 運用、カスタマーサポート
  • "You build it, You run it."

    • AWSのCTO(Werner Vogels)が言った。
    • 『Devが作ったものをOpsに投げつけて忘れてしまう』のはやめようという話。
    • なので、DevとOpsを隔てる壁がAmazonにはない。
    • 自分で作ったものは自分たちで動かし、面倒を見る。
      • 小さなチームで独立して全てを見る。
  • という観点で見ていくと、こんな問答になる。

    • QAは誰がやる?
      • 2 Pizza team。
    • オンコール対応は?
      • 2 Pizza team。
        • 順番に持ち合って24時間対応もするし、障害対応もする。
    • Opsは何をするのか?
      • Ops単体、という存在はいない。
チームの動き方
  • 全ての機能はサービスチームに存在するが、自身の役割に集中している。

    • 開発、ディレクション、支援など、個々がそれぞれの担当業務を専任している。
    • (自分たちでお守りをすることになるので)夜遅く起きないようにするために必死に作る。
  • 開発方法についてもチームに権限が与えられている。

    • 会社として統一した手法を指定するのではなく、各チームでアジャイル、ウォータフォールを選んで良い。
    • 採用も各チームでやっている。
    • 言語、開発ツールも自由。
    • ただ、そうは言っても効率化のために、共通で使えるリソースをまとめて用意したりもしている。
  • こうした動きを実現するためには、チームとして高い水準を維持する必要がある。

    • オンボーディングと呼んでいるトレーニング。
    • 定義されたパターン、プラクティス。
    • レビュー。
    • 内部的な技術共有。
    • Our Leadership Priniciple
      • これについては後程述べる。
    • といった原則を徹底的にやっている。
  • パイプラインについては、上述のカルチャー(独立かつ自由選択的な多数のチーム)から、

    • セルフサービス。
    • テクノロジ非依存。
    • ベストプラクティス。
    • 単一目的のサービス群。
    • を提供するためのツール群を社内で共有している。
      • 利用するかも裁量だが、90%以上のチームが使っている。
  • こんな感じで、各チームが開発からデリバリまで並列に動くことになる。

    • 年間5000万回ぐらいのデプロイが行われている。
  • AWSは昨年1年間だけで1400ぐらいの機能、サービスをリリースしている。

    • ただ、これは対外的にアナウンスしたものだけ。細かいリリースはもっと多い。

カルチャー

  • 文化の根底にはOur Leadership Principleがある

    • 14個の行動規範。
    • Amazonでは、マネージャであるかどうかに関係なく、全員がリーダとして動くことを求められる。
  • Web上で公開されている。

    • ちなみに中身は何年かに一回変わったりする。
      • ただし、一番最初の原則と最後の原則は不変。
  • 人事評価にも組み込まれている。

  • 以前からもこのOur Leadership Principleは知っていたが、入社して驚いたのは、普段の会話でこのキーワードが出てくること。

    • コミュニケーションにおける共通言語として使われている。
    • 社外の人が言われても、何のことか分からないが、社内だとニュアンスが伝わる。
  • Amazonの社員を捕まえて『どのOLPが好きか?』と聞くと、それぞれ異なる答えを返してくれるだろう。

Our Leadership Principle
  1. Customer Obsession

    • 全てはお客様から、という発想。
    • Empty chairという慣習がある。
      • 会議を行うとき、あえて椅子の一つを空けておき、そこにお客様が座っているかのように意識して会議を行う。
  2. OwnerShip

    • 長期的な視野に経って役割分担をすること。
    • テストで重要なこととして、すべてを自動化しようとしている。
    • 運用も全て自動化しようとしている
    • 自動化が非常に重要、という考え方が根付いていて、実現している。
    • テストをしやすいようにアーキテクト、デザインし、
    • テストや運用を自動化するためのアプリのアーキテクチャを考えている。
  3. Dive Deep

  4. Learn and be curious

    • 深堀していく。
    • Rootcause analysys
    • 5Whys
      • いわゆる『なぜなぜ』と同じようなことをやっている。
    • Brownbag sessions
      • 社内勉強会。ランチボックスを持って集まって取り組みをシェアしたりしている。
  5. Frugality

    • お客様にとって重要でないことにお金を使わない
    • Door Desk
      • 社員の机はドア用の板に木の足をつけた簡素なものを使っている。
      • 創業時の気持ちを忘れないようにするため。
    • この影響で、目黒のオフィスではドアが天井に並んでいたりする。
  6. Think big

    • お客様に貢献するために大きな視点を持つ。
    • 常識にとらわれない。
  7. Bias for action

    • スピード重視。
    • 取り組みにはやり直しがきくことも多い
      • プロトタイピングとフィードバック。
  8. Hire and develop the best

    • 採用時に高いバーを維持する
      • 各チームが採用活動をしていると話したが、人が足りないから採用する関係上、本来求めるべきレベルを下回っていても採りたくなる心理がある。
      • そこで、そのチームに直接関係ない人が採用に入ってバーを上げるという取り組みをしている。
    • カルチャーにフィットするかを非常に重視する。
      • カルチャーに合わない人だと、会社の成長を妨げてしまうので。
  9. Have backbone;Disagree and commit

    • 敬意をもって異議を唱える。
      • 偉い人に対する反論があっても空気を読んで言わない、とかいうのはやめよう、という話。
    • ただし、決定には全面的にコミットする。
  10. Invent and simplify

    • イノベーションとインベンションを求めてシンプルに。
      • コード、プロセス等全てにおいて。
  11. Are right, A lot

  12. Earn Trust.

    • 話をよく聞く。
  13. Insist on the Hightest Standard

    • 常に高い水準。
    • 同じ失敗、問題を繰り返さない。
    • コードレビューを非常に重視している。
  14. Deliver Results

    • 決して諦めない。
重視している点
  • こういうことを求めていくと『寝ずに働く』しかない。

    • のではなく、重要なことにフォーカスするようにしている。
  • イテレーションを重視している。

    • 必ずしも開発に限らない。
    • 溜め込みすぎずに、小さくしてなるだけ繰り返す。
    • 貯め込むと頻度も下がってしまうのでよろしくない。
  • MVP(Minimum Viable Product)

    • としてモノを作っている。
    • 最小限の仕様でモノを作って、お客様のフィードバックをもとにプロダクトを成長させていく。
    • マーケットに届ける時間と機能セットのどちらを優先するかは悩ましいが、トレードオフして必要最小限の仕様で届けていく。
    • いろいろ考えて、でかいモノを作っても、お客様にマッチしなかったら嬉しいものにはならない。

さいごに

  • Every day is still Day Oneという言葉がある。
    • 常に毎日が最初の一日である。
    • 現状に満足せずに新しい挑戦をし続けよう。