Developers Summit 2016 Summer A-1 すべてが繋がるIoT時代の共創のあり方 聴講メモ
概要
IoTシステム構築の背景に流れる考え方とビジネス構築時の課題、情報収集を超えて実ビジネスをどう作り上げるかのポイントについて、ウフルの事例と活動を示しながら概説する。
スピーカー
- ウフルの八子さん。
- 松下、シスコを経て現職。
詳細
ウフルという会社
- スワヒリ語で自由を意味する。
- クラウドインテグレータ。
最近IoTに着手。
資本としては、三井、セールスフォース、電通が入っている。
当初、Salesforceが案件の70%を占めていた。Public CloudとしてAWSやAzureも使っていた。
- 最近ioTの相談を多く受けてきたことから、事業部門を立ち上げた。
すべてがつながるIoT時代とは
- IoTは直訳するとモノのインターネット。
モノとデータの結合が一般的な解釈モデル。
だが、実際はデータの活用はできていない。
- 1日2エクサバイトと言われているデータのうち、活用できているのは5%。
- これは現場が忙しすぎるため。
シスコのInternet Is Everythingという言葉があるが、これが理想型だと思っている。
- 人に繋げていくことを重要視していく。
- つながっていないすべてをつなげていくのがIoTではないか。
事例紹介
三菱重工の風車
- 回線はSORACOM
- クラウドはSalesforce。
- 風車の稼働状況の監視。
- 風速に対して適切なアラインをしたり、設計仕様と稼働状況の乖離を調査、分析したりしている。
- 結果は現場の作業員にフィードバックしているが、いずれ追い付かなくなるであろう、という見立てをしていて予測のモデルを立てるところまで考えている。
サトウホールディングスという会社のプリンタ
- 製品用ラベル印刷用プリンタで、壊れると製品が出荷できなくなる。
- 故障予報的な使い方をしている。プリンタのSOS。
- ここには24時間365日、絶対に止めない、という価値がある。
- ので、ゆくゆくはSLAのビジネスモデルも考えている。
- 機会損失で損害が発生するよりも、防止のための費用を支払う、という考え方は受け入れられるのではないか。
境目がなくなる
- IoTの特徴として『いろいろなものをつなげる、境目がなくなる』という点がある。
この考え方はすでに結構浸透してきている。
- 社内と社外
- 自社と他社
- 企業と個人
- 広告とコンテンツなどなど。
convergence/connected the unconnectedという言葉でとらえている。
- 接続によって収斂が起こっていく、という考え方。
- 収斂が起こる際には崩壊が起こるといわれ、収斂元は壊滅的打撃を受ける、と言われている。
これからは業界の境目がなくなるのではないか。
- デジタルオーシャンの間で業界間の融合は実際に発生している。
IoTビジネス構築時の課題
以下のような声をよく聞く。
儲かるビジネスモデルが分からない。
- 騒がれ始めて久しいが、儲かっている人はほとんどいないのでは。
- 物売りはできるがサービスはやりにくい。
- 売り切りたい、という話。
- IoT時代において売り切りはもっとも忌むべき言葉。
- サービスに繋げられない、と言っているのと同義だから。
場所がない、顧客がいない。
- 検討団体もたくさんあるが、調査目的でビジネスにならない。
IoTシステムに対しては、従来の基幹系システムの考え方は全く通用しない。
- 従来は適用技術、稼働環境も含めて安定した環境だったが、
- IoTシステムは稼働環境も含めて不安定な環境。
- これまでの考え方で構築していくこと自体に無理がある。
- また、基幹系システムと違って、IoTビジネスを丸抱えでやる、という考え方が有効なのかは疑問がある。
商用化への道が遠い
コンセプトの検証(PoC)から商用化に結びつけるのが非常に困難なのが特徴。
- 初期の試作では、予算が限られているため、十分な検証が困難。
- 次にやってくるのは予算が割り当てられない事業計画活動。
- 試作とは求められるスキルセットが違う。
- また、追加検証の予算がないので、初期検証で未検証だった点を調べられない。
- 事業計画活動が暗黒のトンネルといえる。
- これを抜けられればいよいよ全社プロジェクト。
- 『体制構築、全社プラットフォーム化など、誰が調整するのか?』という難しい問題。
並列で考えつつ、作りながら考えながら走っていく、というアジャイルな考え方をせざるを得ない。
技術的問題の特徴
- テクニカルな問題の列挙。デバイスからのデータロギング事例から。
- 処理負荷やデータ量によっては、エッジ側デバイスの処理性能と処理ノウハウを要求される。
- これは設計段階では分からない。
- なぜなら予算が限られた中でデバイスを決めないといけないから。
- また、設置環境によってうまくいかない、ということも起こる。
- 設置環境がノイジーでデータが届かないとか。
- 顧客環境も含めたトラブル切り分けまでが必要で、時間をかければできる。
- が、そのトラブルシューティングが大変。これをすべて丸抱えでやりますか? という話でもある。
- 処理負荷やデータ量によっては、エッジ側デバイスの処理性能と処理ノウハウを要求される。
IoTアーキテクチャ
レイヤ分けすると以下のような構成。
クラウド側
- 業界別サービス、コンテンツ
- 業界別アプリケーション
- プラットフォーム
- ネットワーク
オンプレミス
これに加えて全レイヤを串刺しにする考え方としてセキュリティがある。
- 多種多様、いろんなことを知ってないといけない。
- お客様の環境についても知っていることを含む。
- こうなると、全部自分でやるわけにはいかず、知っている人と連携せざるを得ない。
オープンコラボレーション
米国にIICという組織がある。
- 6月の時点で260社加入。
- 標準化団体ではない。
- IoTについて、どういう事例をどういうテストベッドで作っていくか、ということを検討する団体。
- ユースケースを実現することからビジネスを作ることを重要視している。
- 日本と違って商用化まで持っていく。
実は日本でも立ち上げられたがペンディングになっている。
- 『こういうのをやりたい』というアイディアがないから。
といって、別に日本企業が後れを取っているというわけではなくて、例えばIICにはInfoSysとサカタのタネのテストベッドがあったりする。
標準化について触れないと、『繋がるのか議論』が発生するが。
- そもそもインターネットだってはじめは繋がってなかった。
- まずはローカルで繋がるモデルを作ってくれという話。
IICの考え方で日本にイノベーションを起こせないか、と考えていて、ウフルはそのアクションを起こしている。
- OMGと一緒に日本らしいアプローチを学び、実装する団体の立ち上げ支援をしている。
- 情報収集ではなく、実際に作るということにコミットしている。
- 20社ぐらい。
- 実現したいことが明確だ、ということが重要。
- でないと米国IICのような団体に入っていけない。
- 何がやりたいのかわからない、というのは日本固有の課題。
共創の在り方
- ウフルの考え方は、お客様、パートナーと新しい価値を作るということ。
5つのキーワードを掲げている。
- Decide
- Collaboration
- Innovation
- Dream
- Ecosystem
IoTの真髄はビジネスモデルを変えていくこと。
- 米国の考え方に則りながら、解決する課題は日本の課題。
ウフルは4月にIoTイノベーションセンターを立ち上げた。
- 普通のIoT構築支援なら一気通貫で丸抱えするところ。
- だが、自分達はパーツ単位で提供している。
- 全部を取りに行ってしまうと、全部を買う人としか組めない、という弱点がある。
IoTパートナーコミュニティ
- 日本における企業間コラボレーションのコミュニティとして立ち上げ。
- 現在27社。
- 実ビジネスを構築することを主眼にしている。
- 実ビジネスにもっとフォーカスしてよい。
- 情報収集だけでは共創が生まれない。
- スピーディに検討推進できるかを条件としている。
- 検討や意思決定が遅い企業の参加は断っている。
- 我々だけでできない、という前提であらゆる会社と組んでいる。
コラボレーション
- ウフルのオフィスではあえて壁を作らない空間設計にしている。
- 共創カフェという場所があり、社外の人もコーヒーを飲めたりする。
- 気軽に来てほしい。
- 繋ぐことを重視している。
バックオフィス部門は共創本部と名付けられている。
- 社外の人から何をしているのかわからない、と言われることも。
コラボレーションとイノベーション、人と人との繋がりが重要。
昨日、ウフルは同業のクラウドインテグレータ(FLECT)とセミナーを共催した。
8/4にはSORACOMとセミナーをする予定。
- セミナーよりも懇親会の場が重要で、セミナーではみな本音を言わない。
- 懇親会の場になって、『実はうちもこういうことを…』とビジネスの話になる。
さいごに
- ポイントをまとめる。
- 様々な物事の境目を意識しない、繋いで解決する。
- 自分だけ、自社だけで取り組まない。
- 競合となる企業であっても競争ではなく共に作る。
- 競争の時代は終わっている。
- 小さな課題からスケールして大きな課題を解決することを狙う。
- 小さな課題では儲からないから。
- 生産性向上ではなく、新しいこと、イノベーションを狙う。
宣伝
- 11月に山崎直子さんと講演する。
- 今日の話とは全く違う内容を話すので、楽しみにしていてね。