Developers Summit 2016 Summer B-2 事例で学ぶ、わかりやすいIoTプロジェクトの進め方 聴講メモ
概要
課題からIoT導入を進めてきた自社の経験を踏まえ、Usable、課題志向に代表されるIoTに対する重要な考え方、技術的な側面、そしてIoTプロジェクトの進め方について、自社事例を説明しながら示す。
スピーカー
詳細
大事にしている考え方
- 個人としても企業としても、『今ある課題にまだない技術を』大事にしている。
- 『まだない課題に今ある技術を』はダメ。
- 価値という点に目が行っていない。
自社ビジネスとIoT
- ECオレンジというサービス名で有名。
- 小売流通サービスが多い。オムニチャネル的なものを作っていた。
- が、サービスを作っていく中で、ソフトウェアだけでは解決できない課題が出てきた。
例えば配送。宅配ロッカーを作ったらどうか、というのがきっかけでIoTをはじめた。
かつては顧客と話をしていると、『ネットのデータとリアルのデータを統合管理したい』という需要が多かった。
- 例えば在庫とかポイントなど。
- 店頭とPOSレジを一括化したい、という需要からiPadを使っていたりしていた。
コンシューマに近い企業を相手にしているので、駐車場、宅配ボックスなど、IoTがソリューション化されているもの、分かりやすいものを作っている。
最近だと、『おかわりコースター』(グラスを置くだけでおかわりをオーダーできるコースター)とか。
IoTとは
- IoTの市場規模は、現状の5,402億円、197億個から13.8兆円、530億個(2020)へと拡大していく、という流れだが、取り組めていない企業が多い。
トップダウンで指示が来ても具体的に進められてない、という感じではないか。
- 『IoT担当になったんだけど、何やっていいか分からない』
何が分からないのか。顧客からはこういう話を聞くことが多い。
- 始め方が分からない。
- 繋ぎ方がわからない。
- アナログ企業だから。
- そもそも定義がわからない。
今までのITとIoTの文脈を同じに捉えている。
- 『IoTわかっている、わかってない』議論は意味がない。
- 方法論を持つことが大事だと思っている。
IoTの定義
- 概念が腹落ちしていないので、考える気にならない。
では、IoTの定義はというと、実はIoTにきちんとした定義はない。
M2Mとの差
- M2Mのシステムとして、コインパーキングのシステムがある。
- 実はネットワーク化はされているが、プログラムの更新が外部からできなかったりする。クローズドネットワーク。
- M2Mにインターネット的概念はないのでは。
- インターネットに出ることは、リスクと隣り合わせ。
- 個人情報、ハッキング等々。
- 最近はSORACOMがSIMを使ってインターネット閉域網を作ったりしている。
- インターネットに出ることは、リスクと隣り合わせ。
- 人が介在する点はM2Mと異なる点。
- M2Mのシステムとして、コインパーキングのシステムがある。
IoTについては、『スタンドアローンだったものが、つながって異なる価値を創造する』 というざっくりとした理解でいい。
IoTの構成要素
8つのレイヤに分けて考えている。
- アプリ
- クラウド
- 通信規格
- コアモジュール
- ソフトウェア
- 認識、検知
- ハード、物理
- 以上を横串で通すレイヤとして、セキュリティ。
こうしてレイヤ分けてして考えているのは、『組み合わせの柔軟性を確保すること』と、 『難しいところを特定する』ことが目的。
- このレイヤ上だと、コアモジュールが一番難しいと思っている。
- Raspberry Piとか、Armadilloとか
- あるいはSIMとかハードウェア。
成功するIoTとは?
- 『モノをネットにつなごう、ビッグデータを使おう』ではなく、
- 『課題を明らかにし、その課題をIoTを使って解決できないか』が大事。
IoTの類型と課題解決価値
- モノ型
- モノがネットワークにつながること自体の価値を享受する。
- データ型
- ビッグデータ活用、集積に価値がある。
- これからは、課題解決型が重要では。
- ITでは解決できなかった企業課題の解決に価値がある。
Usable
IoTをビジネスとして成立させるキーワードとして、『Usable』を掲げている。
- 『User』+『Able』。
- 使い手が、今までできなかったことができるようになるということ。
- モノから発想すると課題解決にならないものが多い。
Usableには5つの観点がある。
以下2点を出発点として意識するようにしてほしい。
- 課題を解決できているかどうか
- Usableであるかどうか
IoTプロジェクトの進め方
IoTプロジェクトの進め方がわからない。
企画、試作、評価、製品化の4つのステージ。
最近は3Dプリンタの登場もあり、少し前にブームになったリーンスタートアップができるようになった。
- IoTの始めもこれでなければ無理と考えている。
- ソフトウェアと同じで、作って壊してを繰り返していく。
企画
ゴールデン・サークル(Why, How, What)を意識する。
- Whyから始めよ。
- 何を作るかから始めるな。
- そうでないと無価値。
以下の流れ。
- 事業方針の確認
- 要件整理
- ニーズを探る
- コンセプトメイキング
- 企画ラップアップ
試作
- まずはプロトタイプしか作らない。
- 自分たちはCAD設計から始め、DMM.makeの3Dプリンタを使っている。
- が、CADの設計自体もDMM.makeとかで外注できるのでそうしてもいい。
評価
- はじめにできたモノは、99%うまくいくことはない。
- テストして改善案を検討する。
- このとき、改善対象はプロトタイプ。
- 製品として改善するのではない。
製品化
- 運用のフェーズでサイクルを止めてはダメ。
- 製品化後のPDCAをまわすこと。
事例紹介
スマート宅配ボックス
- オムニチャネルの概念は『いつでもどこでも購入して受け取れる』こと。
でも実際、受取は不便。
- 不在時に受け取れなかったり
- 宅配ボックスが無かったり埋まっていたり
- コンビニまで行かないといけないとか、近くにコンビニがないとか
そこで、『スマートフォンが鍵になる宅配ボックス』を2年前に作った。
- かねてから『○分後なら都合がいいです』『了解』等、ドライバーとのコミュニケーションが取れたほうがいいのでは と思っていた。
試作を繰り返す中で、
- 『屋外だから電池運用がいい』とか、
- 『中が空ならLEDは緑のほうが分かりやすい』とか、
- 作らないとわからない知見を蓄積していった。
が、実は製品としては販売されていない。しかし運用されている。
- これはプロトタイプと製品の利用形態が違うというケース。
グローバルWifi受け取りサービスへの転用
実は空港で『グローバルWifi』の受取に使われている。
グローバルWifiの空港受付で、ピーク時に受取に長蛇の列ができるという課題。
- 利用者側は『待たされる、飛行機に遅れる』という問題。
- 運営側は『窓口を増やすと人件費もかかる』という問題を抱えていた。
- 費用対効果が見込める案件と判断した。
試作の段階で、自分たちでは物理的なロッカーを作れないので、『アルファロッカー』にロッカーを作ってもらった。
- が、インターネットには繋げなかったので、自分たちでつなげるようにした。
商用システムなので、『基幹DBとの接続』とか『真夜中の運用』等、運用条件がシビアだった。
- が、実現した結果、真夜中でも、無人で素早く(30分以内)受け取れるようになった。
- 明確な導入効果。
eCoPA
自分はかねてから、駐車場について、『空き状況が事前にわからない』『事前予約もできない』点が不満だった。
そこで、スマホで予約決済できるパーキングを考えた。
- 車の後ろのポールでナンバーを認識(特許)し、費用取りっぱぐれを防ぐ。
実はこのeCoPAも試作と実際の運用が異なるケース。
普通のパーキングではなく、観光バスのパーキングに使われている。
- 京都などの観光地だと、観光バスの駐車場がないので、仕方なく運転手が市中をぐるぐるまわるという運用がされていた。
- 自治体としても、渋滞になるので駐車場を作ろう、という動き。
- 導入によって
- 駐車場の運営会社は『満空情報を取得する』という効果。
- バス会社は『駐車場の利用率向上』という効果が得られている。
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- 今回話したような内容を、『世界一わかりやすいIoTプロジェクトの進め方』という資料としてWeb上に用意している。無料なのでダウンロードして欲しい。
- 8月にIoTの書籍を出版する。
- Facebookでも『Usable IoT』として情報発信している。
- 10/18にIoTカンファレンスを開催する予定。