dimeizaのブログ

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Developer's Summit 2016 【19-C-4】事業に貢献する商品開発とその成長の仕組み作り~これからのエンジニアに必要とされるスキルとは~ 聴講メモ

講演資料

http://www.slideshare.net/JSUXDesign/ss-58461116

概要

かつてWordに押された『一太郎』『ATOK』の開発元ジャストシステム。 継続成長のために、B2B/B2Cに複数の事業の柱を作り、事業構造を変えながら行ってきた製品開発の中で見えてきた、エンジニアに必要なスキルと、それを有効に活かすための仕組みについて語る。

スピーカー

ジャストシステムの三木CDO(Chief Development Officer)。

詳細

継続成長するために変えたこと

  • ジャストシステムは1979年創業、37年の社歴。
  • 一太郎』と『ATOK』。
  • IT業界では老舗と言われる会社。

  • 変えることの前に変えないことを決めた。

    • 変えないこと:提案型の自社商品開発。
      • 役に立つ、使いやすい、喜んでもらえる を愚直に。
      • 自分たちで価値を考え、価格、売り方を決めて、より良く変えていく。
  • 一方で時代の変化と環境の変化があった。Microsoft Wordに押された。

    • 単独商品では難しい。依存したくない。
    • 沈んでからもがくのは大変。避けたい。
      • 実際に大変だった。
  • 会社を継続成長させたい。

選択と集中ではなく、戦略的分散』

  • 継続成長するために、複数の事業を確立していく。
    • 個人向け(B2C)と法人向け(B2B)の両輪を作る。
    • 新しい価値を生み出しながら、事業構造を変え続ける。
    • 実行できるか?
      • 我々は、自分たちを『一言では言えない会社』にしたいと考えた。
  • 結果、現在個人向け(50.9%)と法人向け(49.1%)の売上構成比が半々。

  • 継続成長する基盤ができてきており、営業最高益更新中。

    • 成長カーブを加速していきたい、というのが会社の現状。

商品開発が直面する課題

  1. 『新しい価値を生み出しながら、事業構造を変え続ける』
  2. 個人向けと法人向けのサービスはそれぞれ多種多様

    • 売り方も技術も違う。
      • パッケージソフトの場合は、1年掛けてバージョンアップするだけの価値を訴求し作りこんでいくが、
      • Webサービスはそんなまどろっこしいことを言っていられない。LaunchしてDevOpsしながら絶え間ない改善が必要。
  3. 課題は

    1. 価値を生み出し続けられるか。
    2. 他にない多様性に対応できるか。
  4. そのためには、強い個人、強い仕組みが必要。

エンジニアに必要なスキル

 以下の3つだと考えている。

  • 価値創造力
    • 何を作るか。
  • 技術力
    • どう作るか。
    • PM力も含む。計画通りにものを作るという、広義の技術力。
  • 価値想像力と技術力を支える、プロとしての姿勢

  • この3つの育成、強化について、仕組みや施策を整備していきたいと考えた。

  • メンバーごとに強みはバラバラで良い。

    • が、この2つから素晴らしい商品が生まれる。
    • なので、組織としてはあえてこの2つを分業せず、混ぜこぜになるようにした。
    • 他社の話を聞くと、『何を作るかを決める部隊』と『作る部隊』を分ける会社も多いが、うちは分けないことにした。
    • いい意味でのカオス状態にして議論していきたい、というこだわり。

製品開発の実例

  1. ATOK Medical

    • 電子カルテシステムのフロントエンド。
    • 法人向け最大のヒットは病院。
    • 全国の営業部隊が直接コンサル営業して販路を作っている。
    • 医療用語が自分の手に馴染むように出てくるのが医者に受けている。
    • 『助かっているよ』と医者に言われつつ、明確な機能要望はない。
    • が、どんな利用シーンでどう使っているか、開発者が行動観察してみた。
      • 医者はとても忙しくいろんな場所で端末にログイン。
      • すると、端末ごとに設定、単語がバラバラで使いにくそう。
    • そこで、プロファイルローミング(端末間で設定を同期できる機能)を提案し、仕組みごと提供した。
      • 結果大好評。当たり前に欲しいよね、という機能に。
    • 開発が行動観察して提案した例。
      • 同期する価値に気づくことと、同期する技術の両方がある。
  2. Actionista

    • BIツール。販売分析に使う。
    • 分析用途はバラバラ。
    • が、使われ方をよく見てみると、日付を扱うのがめんどくさい、という共通の困りごとが見つかる。
      • 客からは言われてないが、開発が用途例を見ていて気づいた。
    • そこで、日付を簡単に高速処理できるOLAPインメモリ列志向SQLエンジンを開発した。
      • 1億件レコード処理50秒から400msに大幅短縮。
      • 差別化ポイントになった。
    • 用途分析から差別化要素に。価値と技術を混在させた所から生まれた。
  3. スマイルゼミ

    • タブレットによる通信教育。
    • 2011年当時、教育課程に完全にマッチしているタブレット通信教育はなかった。
      • ipadが出始めて面白いねーと言っている程度だった頃。
    • 学校系には1999年から『ジャストスマイル』という製品を導入していた。
      • スマイルゼミを作ろうというのは、ジャストスマイルのユーザから意見をもらったのが端緒。
    • 買う人と使う人が違う。
      • 買う人(親)の課題で、かつ開発によって解決できそうなことは? と考えた。
    • 小学生では学習を継続させることが課題。そこで、こんな仕組みを導入した。
      1. 勉強したら親に連絡する。
      2. 連絡すると親が、アプリの鍵を開ける。
      3. 鍵を開けると、決められた時間アプリで遊べるようになる。
    • 某社通信教育のテキストよりも取り組むようになったわ、と言ってもらえるように。
    • 中学生では定期テストで点を取ることが課題。
      • オーダーメイド型の教材を配信。
      • 学校名と時期を入力すると、学校の教材に合わせて対応する試験範囲を決定し配信する仕組みを提供した。
  4. 新規開発テーマだったが、価値と技術の両面を有しているため、本質的な困りごとに対して、価値と実現性の両面性から具体化できる。

  5. 言われたものではなく、当事者意識を持って作っている。
    • 開発効率が良い。
    • 価値と技術をまぜこぜにするチームだからできること。

仕組みの実例

 取り組んでいることの幾つかを話す。

訴求ファースト

  • 『変えないこと』として話したように、提案していくことをやめないでいきたいと考えている。
  • エンジニア視点だと機能とか品質を見てしまうが、提案に当たっては、購入決定権のある人に、提供価値が伝わるか、心を動かせるかが勝負。

  • 作る前に、訴求が成り立つかどうかを徹底的に勝負する。

    • 提供価値の確信に絞って開発できるから。

TechCABINET

  • 事業ごと、商品ごとにそれぞれ同じ課題で悩んでいたりする。

    • そこで、技術分野ごとに"大臣"を置いて、事業商品横串で技術課題を解決していく体制にしてみた。
      • WEBブロントエンド、サーバシステム、サービスインフラ、データベース、セキュリティなど。
  • 大臣ごとの検討項目

    • 技術軸での課題抽出、推進
    • 社内の情報共有、ガイドライン
    • 社外の情報収集
    • 技術力向上、勉強会など
    • 人材戦略 キーマンの把握と育成
  • ディープラーニングとかセキュアプログラミングとかもやっている。

社外勉強会(JustTechTalk)

ジャストシステムの育成方針

  • 成果を出すための手段として学ぶ、ということを忘れない。
  • 目標達成のために、試合だけではなく、良質なトレーニングで鍛える、というイメージ。
    • OJTが一番、という時代もあった。
      • が、課題が増えて来ると、良質な、楽しいトレーニングが必要ではないか。
      • 最近はリーダブルコードとかリファクタリングのワークショップをやり始めている。

まとめ

  • 価値創造力と技術力の混在がポイント。
  • CTO(Chief Techinical Officer)というより、CDO(Chief Development Officer)にこだわっていきたい。

    • なぜなら、(示してきた通り)製品開発は技術だけではないから。
  • 多様なポートフォリオ経営の商品開発はかなりしんどい。

  • だが、それに耐えられる強い集団、強い仕組み、変化に強い商品開発力そのものが、競争優位を作り出せると考えている。