dimeizaのブログ

興味のある技術(IoT/VR/Smart Speaker)とか、資格試験の話とか、日常で出会ったTechな話について書いています。

Developer's Summit 2016 【19-C-1】強いチームの作り方 聴講メモ

講演資料

http://www.ryuzee.com/contents/blog/7078

概要

 チームの課題解決(カイゼン)、スキルアップ、文化形成など、強いチームを作るための適切なアプローチについて、Amazonの例などを提示しつつ語る。

スピーカー

  • 吉羽さん
    • 野村総研AWSを経て現在フリー。
    • 新刊3冊出るので手に取ってね。

詳細

ピープルウェアの言葉

  • 過去の経験上、失敗するときは技術ではなく人間、社会学系で失敗している。
  • そこを学ぶべきでは、という問題意識。

チームの課題とカイゼン

  • 挙手でアンケート。

    • 『現状のチームに課題があると思う人?』
      • 会場の8割が挙手。
      • 課題はないと答えた人、そんなはずはない。
    • 『実際に改善に取り組んでいる人?』
      • 意外に少なかった。
      • 問題があるのに改善しない、というのは質が悪い。
      • できるところから改善してほしい。
  • 大きな改善をドカンとやると失敗する。

    • 目の前、手の届くところから改善していく。

カイゼンの進め方

  • バリューストリームを見る(全体を見る)事が重要。

    • 全体を見ないと部分最適化が進むから。
    • 『自分だけ改善しても、プロダクトをリリースする速度は変わりませんね』ってことになる。
  • 人間系の知恵を使う。

    • エンジニアはツール大好きなのでツールばかりに目が行くが、ツールに頼り過ぎないこと。
  • 目標を数字で図れるようにする。

    • 見えないものは改善できない。
  • 自分だけがやったら心が折れる

    • チームでやる。
    • 上からの押し付けはうまく行かない。
  • 製品開発の考え方にリーンスタートアップがある。

なぜチームが必要か

  • 一人で出来るなら一人でやったほうがコミュニケーションコストも不要。

    • が、世の中の仕事は一人でできない仕事のほうが圧倒的に多い。
    • だからチームを組む。
  • メンバーひとりひとりには得手不得手がある。

  • 強いチームの特徴は、以下3点を『続けられる』こと。

    • ビジネス上の結果を出す。
    • 変化に対応する。
    • 成長を維持する。
  • スポット的に出来るだけではなく、継続して成果を出せることが大事。

強いチームの形成

  • 工場労働のように、仕事が単純な場合、概ね以下の様な傾向になる。

    • 単純な繰り返し作業ならばらつきを減らす方向に。
    • 自分だけ別なやり方をすることは許容されない
    • 安定性を追求する。機械化されやすい。
  • が、ソフトウェアに関する仕事は複雑な仕事。

    • なぜならビジネスに紐づいているから。
    • 多様性が必要。

      • 性別、年齢、国籍など、表面的な多様性もあるが、
      • 考え方などのバックグラウンドも多様性。
      • 複雑な問題には多角的な視点で対象に迫る必要がある。
      • フィードバックによる軌道修正も必要。
    • 多様性がない場合

      • 従来のやり方に対してフィードバックしにくい。
      • 文句が外向きになる。愚痴ばかり言うようになる。
      • 思考を停止してあきらめる。

チームの形成ステージ

  • タックマンモデル。チーム形成のステージを5つに分類している。
    • 形成期
    • 混乱期
    • 統一期
    • 機能期
    • 解放期
  • 形成期、混乱期は、自分が良かれと思ったことをそれぞれやりだす時期。
  • 当初、タックマンモデルは4つだったが、後に解放期が追加された。
  • 安定して機能するチームの形成には半年、早くても3ヶ月はかかる。
  • 形成期、混乱期から統一期へ至るには、以下を合意していることが必要。
    • ゴール
    • 目標
    • 価値観
  • とはいえ、これらはそんな簡単には合意できない。
    • そこで、上記の合意に至る前に、以下を合意する。
      • 『相手のことを良く知ろう』ということについて合意。
      • 『自分たちはまだ合意していない』ということについて合意。
      • 『引き続き検討していく』ということについて合意。

Amazonのリーダーシップ原則

  • Amazonでは社員全員がリーダー。
    • 合意しないことについてどのように振る舞うか示されている。
      • 賛成出来ない場合は異議を唱える
      • が、一度チームが決定したら、全面的にコミット。
      • 『俺は反対したからやらない』はナシ。
    • リーダーシップ原則は14箇条ある。
      • Webに載っているので見ておくと良い。

多数決の危険な罠

  • とある、なかなか話が進まない漫画の中で、多数決のリスクについて書いてある。

    • 実は少数派の意見を抹殺している行為。
    • 常に少数派に回る側の人は不満を募らせることになる。
    • 初期の段階で多数決を決めるのはリスキー。
  • そこで、5本指で意見を聞くという方法がある。

    • 意思決定をする際、挙手を求めるが、その際の指の数で賛成度合いを示す。
    • この考え方はプランニングポーカーに通じる。
      • プランニングポーカーではフィードバックを行うことで理解を得る。

チームの責任

  • 説明責任と改善責任。

    • 完成責任をチームが負うことは無理。
    • ただ、全力を尽くす責任はある。
  • チームのルール

    • 外部のルールが障害になることがある
      • 思考停止しない事が大事。
      • 意図がわからないものや、不要なものは廃止する。
      • ルールにないものをやっていいと考えるか、やってはダメと考えるか。
        • その人のバックグラウンドによって大きく別れる。
        • やってはいけないわけではない。
    • 大野耐一の言葉。
      • 『言う通りやる奴はバカで、やらん奴はもっとバカ。もっとうまくやる奴が利口』
    • 自分たちのルールを自分で作ること。
  • 硬い会社だと、できない理由を先に言ってしまう。

    • 出来る方法を考えること。
    • 部下が何か提案した時に『ルールだから駄目だ』と返すマネージャがいる。
      • 私見だが、これはマネージャの職責を果たしていないと言える。

スキルの見える化

  • チームでスキルマップを決める。

    • 出来ること、できないこと、今後習得したいことをしるし付け。
    • 1ヶ月ぐらいの単位で更新していく。
    • スキルが見えると、そのチームのリスクが見える。
      • あるスキルを持った誰々が倒れたらヤバイ、とか。
    • 『マネージャが人事評価に使おう』と言い出すことがある。
      • そう言い出した瞬間に、みんな甘くつけ始める。
      • 絶対にダメ。
    • 『チームのためにやる』事が大事。
  • 個人としてのスキルアップをどう考えるか。

    • 『個人として変化に対応するか?』という問題。
      • 個々の価値観の問題。
      • 『1回限りのプロジェクトなので成長する気はない』
        • という人に対しては、
      • 『変化に対応しないなら生殺与奪の権利は自分以外の手に移るよ』
        • と一応言うことにしている。
    • 自分を守るために自分にスキルをつける、ということ。
    • 過去の成功体験と不安が変化を阻む。

単一障害点

  • チームに問題が起こった時のことを考える。
    • 問題が起こっても許容できるなら放置すればよい。
    • が、その結果夜も眠れないとしたら、何かが間違っている。
    • この時の対策は『特定の人しか知らない情報』をなくすこと。
      • 一方で、誰しも、自分の仕事を守りたい要求がある。
        • その要求を捨てること。
        • 外で役に立たないものを守る意味はない。

マネージと委任

  • SL理論
    • チームの成熟度に応じたマネジメント手法。
    • 成熟度に応じて4種類のマネージを使い分ける。
      • 指示(S1)
        • マネージャが意思決定し作業指示。
      • 説得(S2)
        • 考えを説明して方向性を示す。
      • 参加(S3)
        • 意思決定に参加し助言。
      • 委任(S4)
        • 進め方、意思決定も含めて任せる。
    • いきなり委任してもうまくいかない。

チームメンバーの入れ替え

  • 一度に入れ替えた場合、既存のチーム文化は失われることを覚悟しなければならない。
  • 一度に入れ替える人数は少なく(1,2人)。

採用

  • 一緒に働く人が採用の判断をした方がいい。

    • 期待値を明確に。
    • チームがぶっ壊れない人を。
    • 会社のカラーに合う人を。
    • チームの平均以上の人を取り続ける。
  • 退職

    • やめる理由を生々しく聞いたほうがいい。
    • その理由を聞いた上で改善すれば、同じ理由による退職を止められる。
    • ちなみに、退職理由の中で『給与』は5番目。

組織構造とアーキテクチャ

  • システムを設計する組織の組織構造は、その組織が作る製品のアーキテクチャとそっくりになる。
    • マイクロサービスをやりたい、と思うかもしれないが、
      • それができるかは組織に依存する。
      • 分業が増えるだけかもしれない。
      • 自分のチームに合うかどうかを考える。
    • チームの外側を見る。
      • 開発(Dev)のスループットは高いが、運用(Ops)のリードタイムが長いかもしれない。

コミュニケーション

  • コミュニケーションはHow。

    • 目的ではない。
    • 何のためにそれが必要かの合意が要る。
  • コミュニケーションには段階がある。

    • 送信済み
    • 受信済み
    • 理解
    • 合意
    • 行動
  • 行動になって初めてコミュニケーションが成立した、と言える。

  • 同期型と非同期型のコミュニケーションを使い分けること。

  • チームが生産性を保つためには、会議を減らす方向に持っていったほうがいい。

    • 挙手アンケート『1日の業務のうち、会議の比率が25%を超えている人?』
      • 25%を超える人は3割ぐらい。
      • ドラッガー『1/4以上会議に使っているなら、組織構造に問題』
  • コミュニケーション頻度が高い場合、組織構造が問題。

  • 技術的に解決する方法もある。

    • Amazonの事例。
      • 昔、繁忙期のサーバ機能増強の際、都度インフラ部門に調達要求をしていた
      • この手続きをAPI呼び出しに置き換えた。
      • コミュニケーションのオーバヘッドを削減。
      • 人のリアルコミュニケーションにしておく必要は必ずしもない。
      • Amazonには他にも『2ピザルール』1とか色々なルールがある。
        • 調べておくといい。

評価とフィードバック

  • 評価の基本原則

    • 価値観、優先度、期待値、求める成果を『先に合意せよ』。
      • 後出しを避ける
    • 当たり前だが公平、公正であること。
    • 定量評価と定性評価を組み合わせるとよい。
      • 定量だけにすると倫理観が崩壊する。
    • 仕事をうまくやるのが目的。
      • 1ヶ月から3ヶ月程度のスパンで頻繁に行う。
      • ピアレビュー(1:1)で行う。
        • アマゾンだと1ヶ月に1度、全従業員が直属上長と1:1で話す。
  • フィードバック方法

    • 頻繁に。
    • 常時ネガティブなことを言ってはダメだが、必要に応じて。
      • 個人攻撃と取られないように言う。
      • 個人攻撃と取らないように聞く。
      • "I message"(私はこう思う/感じる…)を使う。
      • 対立構造に見える座り方を避ける。

  1. チームの規模はピザ2枚でまかなえる程度にせよ、というルール。