おっさんエンジニアがまったり1年かけてTOEICを265点上げて800点を達成した話(3)
前回まででモチベーションについて書いたので、今回は具体的な学習サイクル、教材とか、戦術の話をします。
学習サイクル
実は今回の英語学習のサイクル、一昨年までにやってきた高度情報処理技術者試験勉強のサイクルとほぼ同じなんです。
学習時間的な話
学習時間で書くのが簡単かと思うのでリストアップしますが、実は以下2種類の時間しか使っていません。
- 通勤電車の中(往復合計で約30~50分)
- 週末午前中(土日、約120分づつ)
これを大体1年間やりました。ってことは単純計算で1…
学習タイミング | 学習時間[分] | 回数[回] | 合計[分] | 合計[時間] |
---|---|---|---|---|
通勤時間帯 | 40 | 260 | 10,400 | 173 |
週末(土日) | 240 | 52 | 12,480 | 208 |
合計 | 280 | 312 | 22,880 | 381 |
400時間に満たないですね。
ただまぁ、仕事の中で英語の文書を読んだりはしているので、その辺を加味するとずいぶん違ってくるとは思います。私は比較的読まされる量が多い方かもしれませんが、エンジニアであれば、最近のオフィシャルドキュメントはたいてい英語だったりしますから、そんなに大きな差はないかとは思います。
学習時間、今計算してみて意外に短いなぁ、と自分でも思いましたが、この学習タイミング自体は意図的に計画したものです。
前回も書いた通り、仕事をしたり家事をしたり、睡眠もしなきゃいけませんから、生活サイクルとコンフリクトする計画は立てられないですし、学習時間を延ばして苦痛になって辞めてしまったら意味がありません。
学習時間の『品質』
そうは言っても限られた時間なので一つ工夫したのが、
* 『高品質な学習時間』と『低品質な学習時間』を分け、それぞれに最適な勉強をしよう
ということでした。
例えば通勤時間は電車の座席に座って(あるいは立って)、学習コンテンツを視聴するわけですが、電車の中って語学学習の邪魔が結構入るじゃないですか。
ましてや紙と鉛筆を広げて問題を解く、なんてことはとてもできないわけです。
一方で、週末自宅の机に向かっているときは、
- 様々な娯楽コンテンツの誘惑はある
のですが、
- 電車に比べれば比較的静か
- 机も広いので紙と鉛筆を使おうがパソコンを使おうが自由自在
という環境の静謐と空間的余裕があります。
なので私は、
* 自宅週末の『高品質な学習時間』では、新しい概念(新単語、文法、発音)の習得に注力する
* 電車の中の『低品質な学習時間』では、既存概念の復習、適用に注力する
という立て分けをしました。
両時間ごとに、使用したコンテンツを紹介していくのが、この際ちょうどよさそうですね。
『高品質な時間』に取り組んだ事柄
大きく3つの取り組みをしています。
1. iKnowで『新規単語』のインプット
まずはiKnowで単語学習。
iKnowは『新規単語を学習』→『忘却タイミングに合わせて単語の問題を繰り返し出題して復習』→『一定数正解するとマスター』という流れで単語学習を進めるようにデザインされています。
iKnowを開くとこんな画面が出てくるんですが、下の『アイテム』に『新規のみ』と書いてある場合、既出単語の復習を全く行わずに、新規単語だけが出てくるようになります。
これを1回につき20から40単語回してました。
iKnowでは問題に回答した際、単語を使った例文が出てくるので、その例文を有声でリピーティングしてます。
最初に単語学習を持ってきているのは、簡単でとっつきやすく、気乗りがしないときでも、学習に手を付け、継続するための呼び水になるからです。
2. DSの英語アプリを動かす
最初は1回目で説明したえいご漬けをやっていたのですが、文字の認識率が低くてイライラしてきたので、このイライラは危険だなと。
今回は従来と違ってTOEIC照準で勉強しているので、途中から、比較的新しいこれに切り替えて勉強を進めていました。
各パートごとに勉強できて、それほどストレスなく操作できているので、割と長く続いていますね。
あえて自宅でDSによる学習方法を選択しているのは、
- 回答を紙に書いた後で、自分で自己採点するのが面倒
という心理があったからです。
そもそもTOEICの本試験だってOMR(マークシート)で採点しているのに、人間様がわざわざ手書きで採点する技術的必要性なんぞなかろう、と。
『公式問題集で勉強するといいよ』と周囲にも言われていて、やった方がいいんだろうなぁ、と思ってはいるのですが、結局手を付けずにここまで来ています。
このソフト位の手間で自動的に採点、評価してくれて、かつ新形式に対応した電子上の高品質な学習コンテンツがあれば、是非それをやってみたいと思ってはいます2。
大体このDSによる学習を30分から40分ぐらいやって、次に入ります。
発音または文法の学習
あとは発音の練習『か』文法の練習をやって、その日の学習を終えていました。
両方同時にはやらないようにしていました。疲れるので。
発音についてはこれで。
後半のParrot's Lawとか英文読書はとりあえず置いといて、発音バイエルを最初から最後まで、付属のCDをシャドーイングする形で練習していました。
TOEICに関しては、『正しい発音を知らないと、脳内でカタカナ変換を伴ってしまうので、英語をパッと理解できない』という点がListeningに効いてくるので、一見関係ない発音の練習は(今後会話に進むための下準備としても)しっかりやっておいた方がいいかと思います。
あと、この本の『はじめに』に書いてある
結局、語学の学習の秘訣は『壮大な慣れ』です。
という言葉はすごく私に刺さりました。
これを読んだとき『特別なことをする必要はなく、慣れないことと分かったうえで何度も繰り返して、長い時間をかけて慣れていけばいいんだな』という理解と安心を得たのを覚えています。
一方、文法についてはこれで。
この本、『構造、フレームワークで英語の文章構造を論理的に分解する』という点において、非常によくできた本です。
われわれ日本人は日本語の文章を理解するときに、わざわざ『単語を分解して、各単語の品詞を解釈して、構造を把握した後で意味を理解する』とか七面倒なことをやってないかに見えるんですが、それはやらないのではなくて、脳内で超高速に無意識的にやっているだけだったりします。
実はこれは英語についても同じことが言えるのですが、我々は英語の文章を超高速かつ無意識的に品詞分解、構造把握できるわけではないので、まずは意識的にそれをやりましょうよ、という本ですね。
個人的には、この本は論理的思考を求められるエンジニアに対しては結構親和性が高い本なのではないかと思いました。理詰めで、『なぜこの単語はそのように解釈しなければならないのか』といった問いに答えてくれる本です。
この本は文法の基本要素から少しづつ読み進めつつ、読み進めるたびに練習用テキストが提示されます。そのテキストに対して、文法上のQuestionが提示されるので、Answerをよどみなく言えるようになることを求められます。
このQuestionに対するAnswerを口頭で回答する練習をひたすらやっていました。
実はAnswerは暗記しても良い、とこの本自身に書かれているのですが、実際に暗記していくだけでも、練習用テキストだけでなく初見の英文に対して、構造を自動的に解析する癖がついてくるんですよ。
この効果はPart5以降のReadingにおいて絶大なものがあります。気づかない間に、
- あぁ、この"arrived"は『準動詞』で、『分詞構文』ではなく『過去分詞形容詞用法』で使われているから、『大黒柱』になる動詞は別の動詞"went"の方だな
- あれ? ここには現在形の『述語動詞』が2つある。両方とも『準動詞』にはならないから、後ろの方は『従属節』か
みたいな構造把握のための脳内回路ができて、問題を解くときに自動的に作動するようになってきます。
一方で、実はこの本についてはいろいろ批判があります。著者の薬袋先生もそのことを認識していて、『あとがきに代えて』で批判に対する回答をしていたりするんですが、その中にこんなことが書いてあります。
これは私の持論なんですが、英語の勉強法には、万人に妥当する唯一絶対の方法などというものはない。
大事なことは無作為に抽出した10人の中にいつも2人は私のやり方で劇的にできるようになる人がいるということなのです。また、この2人に入らなくても、私のやり方に触れて魅力を感じる人であれば、勉強を続けると必ず実力は向上します。
私はこの本で文法に関する理解が一気に進んだので、『劇的にできるようになる人』に近い感覚を抱きました。ただ、人によるのではないかとも思っているので、一度見てみて、合うと思ったらやってみるといいんじゃないかと思います。
TEDを聞く
これは余裕があれば。
ノルマをこなし終えて時間と精神に余裕があれば、TEDで興味のあるネタを見つけて聞いていました。
TEDについては最近取り扱い方を変えているので、最後にちょっと話をします。
『低品質な時間』に取り組んだ事柄
通勤電車内で何をやったか、って話ですね。
1. iKnowで既出単語の『復習』
週末に勉強した既出単語の『復習』に絞って取り組みます。
iKnowの学習サイクルの中で新規単語を学習しようとすると、そのサイクルはボリュームが増えてしまう、という特徴があるのと、落ち着かない電車内でやるなら、新規学習という高コストの学習作業ではなく、もう少しハードルの低い復習をやろう、という発想です。
この時もリピーティングしていますが、流石に声を出すわけにはいかないので無声で。
2. 英語リーディング教本の読解
文法書を読むだけならパッシブな作業なので、それほど苦も無くできます。ここで文法の内容を先に読んでおいて、週末に暗唱する、という流れです。
3. 英語ニュースを読んでみる
これは比較的最近の取り組み。POLYGLOTSを使っています。
テクノロジーのジャンルからニュースを取ってくると、TechCrunchのニュースとかを表示してくれるので、エンジニアも興味を持って読み進めることができます。
WPM(Words Per Minute)とか、読解速度を表示してくれたりするんですが、読むのが遅い私は大抵比較されると凹むので、あまり気にせずに読んでいます。
ここまでのまとめ
- 学習は通勤電車の中と週末に集中的に。苦痛にならないような時間配分を意識した。
- 週末の高品質学習時間では単語学習から入り、手や口を動かす高コストな学習を実施。
- 通勤電車の低品質学習時間では既出単語の復習や文法読解など低コストな学習に絞って実施。
こんな感じですね。
ただ、これで十分だとは思っていなくて、より良い勉強法を今もなお模索中です。
最後は試験によって得られた成果と、最近の取り組みについて話をしようかと思います。