dimeizaのブログ

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あるITエンジニアが立ち向かった認知症在宅介護の記録(7. 認知症専門医への転院)

認知症専門医への転院(2024/5)

診断前後のかかりつけについて

 元々、もの忘れ外来に行く前から、母は精神科に通っていて、薬の処方を受けていたことは以前に書きました。

 で、日本医大で認知症の診断が下ったあとも、診断結果はその精神科に連絡され、引き続きそこから認知症の薬(アリセプト)を処方されていたのです。弟の伝手とはいえ、紹介状はその精神科から出ていましたからね。

 これとは別に、母には脂質異常症の既往があって、別の内科から治療薬の処方を受けていたのです。認知症初期にオーバードーズで問題になったのは、主としてこの辺りの定期処方薬と、精神科の薬に関するものでした。

転院を考えた事情

 ただ、私が見た感じ、ここから先の介護を考えるに当たって、今の医療体制を継続するのはあまり良くないかも、と思っていました。

 主として理由は3つあります。

1. 精神科の先生との信頼関係が欠如しかかっていた

 精神科は徒歩圏内ではなく、父が母を車に乗せて通院していたのですが、特に認知症の診断あと辺りから、通院に連れて行った父が色々と心配をこぼし始めたのです。

 『本当に効果があるんだろうか』『わからないまま言われたとおり処方しているんじゃないか』とか。

 私からは『よく先生と対話してみたほうがいいよ』とは言ったのですが、どうも毎回行くたびにそんな感じで、腹を割って話せていないようでした。

 母は結局1年以上精神科に通院したものの好転せず、私が問題提起して弟が病院手配して、ようやく真因として認知症が明らかになったという経緯があります。

 父にとってみればこの経緯は、真因にたどり着けず1年間も漫然と薬を処方されたのも同然で、主治医の専門性を疑うのに十分ではあり、無理のないことではありました。

2. 認知症の専門性を求めるべき局面であること

 認知症と介護の準備を進める中で、こういう本を読みました。

 この本は認知症の家族を見る子供(親族)の心身の負荷をどのように軽減し、体制構築していくか、という本なんですが、こういう図が載っていました。

 認知症については認知症専門医1、他の病気についてはかかりつけ医という分担が書いてあります。認知症の症状進行に従ってしっかりと専門医に頼ることの重要性が示されています。

専門医制度について

 日本に医者はたくさんいるんですが、いくつかの医療分野においては、その分野の学会などの団体が、当該分野に特に優れた/詳しい医師に対して『専門医』という認定を与えています。

 実は認知症についても日本認知症学会が『認知症専門医』を認定しています。この認定を受けた医者は認知症について十分な経験と知識を持っており、認知症への専門性を期待できる医師です。

 認知症専門医がどこにいるかは、認知症学会のページから調べることができます。

dementia-japan.org

 このページから、認知症家族がお住まいの都道府県、市町村を入れると、認知症専門医が所属する病院、または医師名が出てきます。

 あとは各病院のページから診療状況や来歴を確認し、目星がついたら是非相談に行くと良いと思います。

認知症家族の状況を鑑みる

 我々の状況に照らしても、専門性の高い認知症専門医にバックアップしてもらうのは大変ありがたいです。そもそも、認知症を診断してくれた日本医大の石渡先生も、上記の本の著者である西村先生も、そして、この後でご紹介するYoutube動画で啓発してくださっている長谷川先生も、全て認知症専門医です。

 これらの先生方から認知症について得られた知見は、認知症について何も知らなかった我々家族にとって非常に重要なもので、相当助かりました。

 これから中核症状が進行し、周辺症状が出てきた場合、どのように対処していくべきかということを、家族としては相談したくなってくるはずです。こうしたときに、認知症の専門性を十分に持った医師に相談できる環境を作っておくべき、と私は思いました。

3. 今後の通院負荷の増大

 もう一つは、母の症状の進行によって、通院の負荷が確実に増大していくであろうことです。

 今はまだ自力で歩けていて、父と同伴で病院に行くことにそれほど困難はないものの、ゆくゆくは表に連れ出すことも困難になってくる可能性があります。そうなった時に、車で連れ出して複数の医療機関に何度も受診しなければならない、というのは家族にとって負担になります。

 精神科は車で行かなければならない距離なので、父が車で連れ出す必要もあります。車が使えなくなった場合、公共交通機関で診察に行ける、理想的には徒歩で行けるぐらいの距離に病院があれば、今後の通院負荷に対応しやすくなるのでは、という思惑もありました。

認知症専門医を探す

 実は日本医大に行く前に認知症専門医については少し調べていて、

  • ちょっと遠いが、精神科も持っていて、認知症向けデイケアを併設している医院

 を見つけていました。もし弟が日本医大を勧めなければ、ここに行ってみようと思っていた病院です。

 ただ、主介護者として母を連れて行くのは父なので、過去の経緯を考えると、父との相性が合うかどうかが大きなポイントです。なので一度父にこの病院にコンタクトを取ってみるように話をしました。

 相談してみた所『いつ来てもいいよ』と先生に言われ、コミュニケーションも問題なかったので、特に問題なければそこに…と思っていました。

 が、改めて認知症専門医の検索ページから、実家近辺の専門医を調べ直した所、

  • 最寄り駅付近でバスでも行けそう、かつ内科を併設している医院

 を見つけました。

 結構目立たない病院で、私も時々実家に帰る際に見かけてはいたのですが、単なる内科だと思っていた所、ホームページを見ると『脳神経内科』『認知症について』とさり気なく書かれていたのです。

 合わせて包括に『認知症介護についてよく連絡をする(良い評判がある)医院ってどこがあります?』と質問した所、その医院の名前がでてきたのです。

  • 最寄り駅、バス通院も視野に入り、相対的に通院負荷がだいぶ低くなる
  • 内科を併設しているので、別のかかりつけの薬も一本化でき、ワンストップで完結できる可能性
    • 更に言うと、父のかかりつけも引き受けてもらえば両親ともに1医療機関で済む
  • しかも包括との連絡もよく行っている(認知症介護実務にも通じている)

 これらの条件が揃っているなら言うことはないなと。

 父から連絡を入れたら初診の予約が取れたので、(平日でしたが)私も都合を付けて付き添うことにしました。

転院の初診

 今でも忘れませんね。あれは雨の日の午前中でした。

 病院の前で父母と待ち合わせをして病院に入り受付を済ませた所、父はヒアリングのために診察室に入っていき、一方で母は複数の検査(CTとか血液検査とか尿検査とか)を受けることになりました。

 母には私が付き添っていて、待合室で待ちながら個々の検査を受けていくという流れで、私は都度検査に母を送り出していたのですが、全ての検査が終わって母が戻ってきても、父が一向に帰ってきません。

 この頃から母は、病院で待つことに徐々に耐えられなくなってきていました。

 昨年の日本医大でも結構待たされたのですが、それでも普通に会話をしてしっかり待てていたはずの母が、非常に落ち着かなくなってきていて、とにかくなだめるのに苦労した記憶があります。

 数分ごとにトイレに行きたがっていたり、5分ごとに『まだ帰れないの?』と私に聞いてくるなど、かなり堪え性がなくなってきていました。トイレについては後で『過活動膀胱』の診断が下ることになるのですが、同じ質問に同じように淡々と答える、という心づもりが事前にできていなければ、私にも相当なストレスになっていたでしょう。

 ただ、その時に待たされた時間は客観的に見ても結構長い時間だったのも事実です。認知症の周辺症状由来で落ち着きがなくなっていたのは事実ですが、私から見ても2時間近く、父が診察室に行ったまま帰ってこないのは疑問ではありました。気づけば午前の診療時間は終了し、受付も閉じ始めています。

 もうお昼になるぞ、というタイミングで、母と私が診察室に呼ばれたので入っていくと、診察室には父がいて、前には認知症専門医の先生がいました。

 先生は母にいくつか簡単な質問(眠れているか? 食事は取れているか?)をし、その時の母は特に問題なく答えていました。それで診察は終了。

 だいぶ長かったね? と父に話を聞くと、どうもかなり長い時間、母の状況をヒアリングしていたそうです。認知症診断に至るまでの病状の経緯はもちろん、母の生い立ちから現役時代の仕事の話まで、ありとあらゆる情報を収集していたのだとか。

 一人の患者に対して充てる時間としては法外なぐらい大きく、全力で患者の状況を把握するという姿勢を感じました。

 その上で先生は、『認知症の診療ガイドラインに基づいて診療するからね』と言ってくれたそうです。

www.neurology-jp.org

 これは日本神経学会が発行した医療者向けのガイドラインなので一般人が読むのは難しいのですが、認知症の診療方法、基準、指針について専門家がコンセンサスを取った方針なので、我が国の標準に基づいて対応いただけるということで、父の疑念を払拭するに良い説明だったと思っています。

 母のかかりつけと薬についても合わせて話をしており、引き受けてくださるという回答だったそうです。これで母についてはかかりつけと認知症対応を最寄りの医院に一本化することができました。

 これから母が施設入所するまでの間、過活動膀胱に対する方針、食事の管理に関する問題、健康診断対応、皮膚や腰の問題への対処、補聴器の相談など、あらゆることを相談しており、非常にお世話になりました。

 この状況を持ってしても、この先の認知症対応は大変だったのですが、もし転院をしていなかったら苦労はその比ではなかったと思っています。

 認知症介護における体制構築においては、医療機関の座組についても十分な専門性でバックアップいただきつつ、負荷最小となるような構成を立てておくことをおすすめします。

ようやく一段落

 というわけで、これでひとまず母の認知症介護の初期体制構築は落ち着きました。

 ここから約1年半、在宅介護が続いたのですが、次回は続きを話す前に、この在宅介護を支えた情報収集の方法やら、自宅の環境構築やらと言った情報についてご紹介する回にしようかと思います。


  1. 認知症専門医とは別に、独立行政法人国立長寿医療研究センターが養成している『認知症サポート医』という制度がありますが、これはどちらかと言うとかかりつけ医と専門医の橋渡し役に近い存在です。専門性の観点では認知症専門医のほうが上ですが、お住まいの地域に専門医がどうしてもいない場合は、サポート医にお世話になってもいいと思います。

あるITエンジニアが立ち向かった認知症在宅介護の記録(6. デイサービス開始)

デイサービス(2024/4)

ケアマネのアサイン

 包括からケアマネの紹介を頂いたので、私、父、弟の3人で相談して、お願いすることにしました。

 しばらくして契約手続きのため自宅に訪問頂き、契約に関する説明を受けました。

居宅介護支援事業者との契約

 要介護1以上でアサインされるケアマネ(介護支援専門員)は、基本的に民間の事業者(居宅介護支援事業者)から派遣されてくるので、支援を受けるに当たっては利用者(並びに家族)は契約をする必要があります。

 と言ってもそんな難しいことではありません。

 ケアマネは、在宅介護を継続するに当たっては不可欠な支援をしてくれます。

  • 居宅を定期的に訪問し(モニタリング)、利用者や家族が抱える問題を把握する。
  • 利用者や家族が利用可能な介護サービスを紹介しつつ、これを適切に利用して課題解決を図るための居宅サービス計画(ケアプラン)を立てる。
  • 利用する介護サービスとの連絡調整を行う。
  • 介護認定の更新申請や区分変更申請を支援する。必要に応じ手続きを代行する。

 介護サービスを行っている事業者は星の数ほどありますが、これらのサービスから最適なものを家族が選び出すのは大変です。

 ケアマネは利用者の状況を把握して、適切な介護サービスを探し、組み合わせて提案してくれるので、利用者や家族は膨大な検索負荷を負わず、ケアマネの提案を吟味しつつ利用するサービスを決定することができます。

 このケアマネの活動に関する必要については全額介護保険から充当されるので、利用者は基本的に無償で支援を受けられるのですが、一応これらの支援を受けるに当たっての注意事項等もあるので、契約を取り交わすという話です。

早速の紹介

 で、来てくれたケアマネさんは既に下調べを済ませてくれていて、いくつかのデイサービスの紹介をしてくれました。

デイサービス(通所介護)

 デイサービスは在宅介護サービスの代表格の一つとも言えます。日中の時間帯だけ施設に行って介護を受けるというサービスです。

 提供するサービスは施設によって結構違いがあるんですが、基本は食事、入浴、機能訓練、レクリエーション辺りかと思います。

 高齢者サービスのステレオタイプとして、幼稚園のようなレクリエーションを高齢者にやらせている光景をTVで流したりしていることもありますが、あれはあくまでも一側面に過ぎません。

 実際、認知症が進行してくるほど、それ以外の機能が非常に重要になってきます。この辺については追々。

 さておき、介護相談の際に川内さんに言われたとおり、私としては父と母にある程度距離を作る必要があるので、初手としてデイサービスを使い、まずは日中に母を預かってもらいつつ、父に母から開放された時間を作らなければなりません。

 一方で認知症の母を適切に預かってくれるサービスがあるかどうか、我々に探しきれるかどうかは結構不安がありました。

 ケアマネさんは認知症という状態を鑑みて、地域密着型通所介護というタイプのデイサービスで4箇所ぐらい候補を選び、パンフレットを持ってきてくれました。

 地域密着型通所介護というのはデイサービスの一種なのですが、

  • 比較的少人数で、個々の利用者に目が届きやすい特徴がある
  • 要介護1以上、かつその市町村に在住していないと利用できない

 という特徴があります。

 デイサービスは大規模だと数十人単位でまとめて面倒を見るところもありますが、認知症の場合は比較的目の届きやすい環境が好ましいという配慮1でした。

 とりあえずパンフレットを見てみると結構特徴がありまして。

  • 食事が美味しくて非常に人気が高いところ
  • 古民家を活用して田舎の家っぽくしずかに過ごせるところ
  • 音楽療法に力を入れているところ
  • 菜園を持っていて農作業ができるところ

 いろいろな特色があるんだなぁと感心しました。

母に適したデイサービスは…?

 このデイサービスの紹介を受ける前の事前連絡で、一つ質問されたのが『母の趣味、嗜好』についてでした。

 これから新しい施設に行くに当たって趣味、嗜好に合った所を選ぶというのは結構重要なことで、それこそ本人の日頃の趣味をデイサービスでできれば、馴染むのも非常に速いと思うのですが、この点に関しては非常に泣き所ではありました。

 というのも、母には趣味と言えるほどの趣味がなかったのです。

 振り返ってみれば父母が結婚した頃は我が家は貧しくて、母は幼い私を床で遊ばせながら、当時の法務やビジネスを支えていた和文タイプライターの内職で生計を支え、私が小学校に入ってからも主婦業とは別に仕事を持ち、更に地域社会に貢献するなど、趣味に費やす暇がない人生でした。

 趣味がないと歳を取ってからボケる、と昔聞いたこともあって、私は高校の頃からずっと、なにか趣味を持ったほうがいいよと母に言い続けてきたのですが、ついにこの歳まで母は趣味らしい趣味を持つことがなかったのです。

 強いて言えば母は園芸が多少好きで、庭の花をよく育てていたので、趣味嗜好の一つとしてガーデニングという話をしたのですが、デイサービスのマッチングという観点ではあまり有用な情報にはならなかったなぁ、と今でも思っています。

 趣味を持っておくということと、親の趣味嗜好を押さえておく、という意外な点が、こうした施設選びにおいても効いてくる、というのは知っておくと良いと思います。

施設見学

 というわけで契約の締結は終わり、紹介は受けたものの、デイサービスの選択に関する決定打がなかったので『見学で決めるしかないね』という家族の合意に達しました。

 どのみち本人の趣向に好適なデイサービスがあっても、実際に見学してみなければ実態は分かりません。

 決め手がなかったのでまずは『食事が美味しくて非常に人気が高いところ』かねぇ、という話をしていたら、ケアマネさんが早速電話を書けて見学の予約を取ってくれました。しかも当日の午後に。

 この辺り、ケアマネの存在意義の重要なところで、適切にお願いをすれば介護施設との連携に家族の手がかからないのでありがたい所です。

 結構バタバタしてたんですが、家族が揃っている数少ない機会だったので、昼食後見学に行くことにしました。

 だいたい自宅から来るまで10分ぐらいの距離でした。デイサービスを使う場合送迎があるので、自宅からの距離も考慮すべき要素の一つです。

 着いたのは一見するとただの2階の一戸建て住宅でした。インターホンを鳴らしたら職員の方に迎えていただいたので入室。

 土曜日だったのですが利用者の方がいてレクリエーションをしていました。我々はその隣室で説明を聞いたんですが、

  • 戸建て住宅の規模なので目が届きやすいという点
  • 利用者が至極和やかだった点

 という2点が印象的だったのを覚えています。ここであれば母も不安なく過ごせるのではないか、と思ったので、その場で家族で相談し、申込みをすることにしました。

 ケアマネさんに連携してもらい、後日、デイサービスとの契約を行い利用開始という段取りになりました。

デイサービス利用の難しさ

 その一方で、我々にとっては結構難しい課題が3つ残りました。

1. 人気のデイサービスは枠の取り合い。

 後で調べたんですが、そのデイサービスは地域でも非常に人気が高く、なかなか利用枠が空かないという問題がありました。

 申し込んだタイミングだと、週1回(土曜日)しか空きがなかったので、やむなく週1回から利用を開始しました。

 母の場合、要介護1の認定を受けていたので、週4ぐらいまでは介護保険の範囲内でデイサービスを使える余裕があり、かつ私としては週1と言わずもっと利用して父の負担を軽減したかったので、この点はなかなか痛いところでした。

 とはいえ複数ヶ所のデイサービスを使うというのは、これはこれで大変です。点々とするので定着もしづらく、母にも父にも負担がかかります。

 一方で、いきなり週4もデイサービスを使うと、ずっと家にいた母が環境変化に適応できない可能性もあったので、将来の利用枠拡大を念頭に、ケアマネさんに継続的に空き枠の確保をお願いすることにしました。

 最終的に週4回まで枠を確保できたのですが、そうなったのはだいぶ後のことです。

2. 送り出しとお迎え時に家族に負荷がかかる。

 デイサービスではたいてい送迎サービスがあるので、指定時刻に玄関先まで連れてこれれば、あとは職員の方にお任せすれば施設までは連れて行ってくれます。

 逆に言うと、玄関先まで本人を連れて行くところまでは家族の領分で、本人の状態によってはこれが結構大変なのです。

 母の場合、認知症が出ていたとはいえ、この当時はまだ意識がはっきりしていたので、突然自宅外の施設に連れて行かれる、という点に違和感を持っていました(これはどの在宅介護の家庭でもそうだと思います)。

 私と父は『母をどうやって玄関先まで連れてくるか』ということに心を砕き続けることになります。

 母には『家にずっといると体にも頭にも悪いから、心身の訓練のために行ってきて欲しい』と話をするのですが、それでも『なんでこんなところに行く必要があるの?』と何度も父に、私に尋ねます。

 これこそが認知症介護家族にとっては最もきつい点で、どれだけ趣旨を説明しても、そしてその趣旨を納得しても、納得した事実も説明された趣旨も全部忘れてしまうのです。

3. 世間体と本人に対する配慮

 さらに、ことここに至っても、父はデイサービスの利用になかなか前向きになれずにいました。

 父に聞いてみると、どうも母自身が『デイサービス利用をあまり知られたくない』と父に言ったらしいのです。

 今思うと、おそらくこの時、認知症といえども母にも病識がないでもなかったのだと思います。

  • 自分が少しおかしな状態になっていて、介護サービスの世話になっていると言う(主観的にはみっともない姿を)近所に知られたくない。

 という母の認識を父が汲んでしまって、頭では分かっていても、どうしても後ろめたさがあったのだと思います。

母の世間体について私が思っていたこと

 この時私によぎったのは、私自身が中学生の頃不登校になった際の母の反応でした。あの時もそうだったな、と。

 当初は自分の息子が不登校という、人並みの子供とは異なる無様な状態になったことを恥ずかしがっていたんですよ。

 その後、我々家族が世間体を捨て、外部から様々な支援を受けた結果、私は不登校を克服して、学業成績の階段を駆け上がっていきました。

 このプロセスの中で父母は世間体という縛りを一度脱したはずで、ピンチの時はなりふり構わずなすべきことをすべきだ、という学びを得たはずだと私は思っていました。少なくとも私はその学びをずっと持ちつつけていたので。

 一方で、高齢になると人間は後天的な学びを捨てて、もっとプリミティブな個性に回帰していくものなのかもしれません。ましてや母はまだ自分が歳相応の状態だと思っていて、父に想像以上に負担をかけている自覚がないので、ピンチという認識もなく、世間体を優先してしまったのでしょう。

障害の克服

 しかし今はそんなことを言っていられる状況ではありません。母に過剰に忖度した結果、一家が介護負荷に押しつぶされたら元も子もありません。

 認知症になることは別に恥じることでもなんでもないし、歳をとったら社会に介護してもらうのは我が国の制度設計上当然のこと。

 折しもこの歳に施行が開始された認知症基本法の趣旨を念頭に、折れそうになる父の送り出しの背中を押すようにしました。

 ひとまず初回の送り出しは(平日の朝だったんですが)仕事を調整して私が立ち会い、私が母に何度も趣旨を説明し、手を引いて家の外に連れていき、職員の方におまかせするようにしました。

 一旦職員の方の前まで来てしまえば、彼らはプロなので、認知症の人にとって有効な誘導を上手にしてくれます。

 とにかく送り出しの型を作り、父母がこのデイサービス利用に慣れる形に持っていくことが必要でした。

 幸いなことに2回目以降は父だけで送り出すことができ、デイサービス送迎に遠隔地の私が立ち会うことはなくなりました。

 ただ、このあと利用回数が増え、母の認知症が進行していくとともに、デイサービスで確保した自由時間と相反する形で、父の送り出し負荷は大きくなっていくことになります。

初期体制構築最後の課題

 というわけで、介護相談から始まった介護体制の初期構築はサービス利用開始という形で一応収束したのですが、もう一つ私にはやるべきことがありました。

 それは母のかかりつけを認知症専門医へ転院させることです。このお話は次回。


  1. 実はデイサービスの中には認知症対応型通所介護という、認知症にドンピシャなデイサービスがあるのですが、父母が居住していた自治体の認知症対応通所介護は少なく、家から結構距離があったので見送っています。

あるITエンジニアが立ち向かった認知症在宅介護の記録(5. ケアマネ探し)

5. ケアマネ探し(2024/3)

 ひとまず母の認定結果が出たので、ようやく介護サービスを使い始められるようになりました。

介護保険と介護サービスの関係

 認定を受けて介護度がつくと、世の中の介護サービス利用時の費用を介護保険で軽減することができます。

 基本的に介護保険では、①介護サービスにかかった費用の1〜3割が利用者負担となる一方、②在宅介護で介護保険を使う場合、利用できるサービスの限度額が決まっています。

サービスにかかる利用料(介護事業所・生活関連情報検索) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

 この限度額の範囲内であれば超えても利用は可能なのですが、限度額を超えると全額自己負担になるという制約がついています。

 なので介護度がついた場合、家族負担を可能な限り減らせる方向で、限度額内まで使い倒すのが基本的な考え方です1

 ただ、その前に我々はケアマネをつけてもらう必要があります。

介護サービスとケアマネ

 ケアマネ(ケアマネージャー)は、要介護1以上の介護度を持つ人に対して割り当てられる専門職の方で、介護サービスを使って在宅介護を行う計画(ケアプラン)を立てつつ、家族、市町村、サービスとの連携を行う役割を持っています。

 また、月1回居宅に訪問し、介護を受けている人の状況を確認したり、家族の相談に乗るなど在宅介護支援の中心となる役割です。

 今回要介護1となった母にもケアマネをつけないと介護サービスが使えないわけですが、ここが在宅介護を始めた家族としては一つの関門でした。

ケアマネ探しの問題

 というのも、ケアマネは家族が探す必要があるのです。介護度がついただけではケアマネは自動的にはアサインされないんですね。

 ケアマネが在宅介護の鍵を握る、というのは今日では広く知られていて、どの介護の情報源を見ても、『いいケアマネを引き当てるかどうかが在宅介護の鍵だ!』って必ず言われます。

 ところがその探し方については、どの資料も大して役に立たないのです。

 …いや、語弊がありましたね。『ケアマネの探し方』は調べればでてきます。例えば地域包括センターに聞いたり、市区町村の窓口に行ってみる、とか。

 しかし介護家族が知りたいのは『良いケアマネの探し方』なのです。この点に関しては上述した行政は無力というか、助力できない縛りがあるのです。

 包括や市町村が『この人は良いケアマネですよ』と言ってしまうと、行政として公平ではなくなってしまう(えこひいきになってしまう)ので、うかつに推薦できないわけです。

 『ケアマネが所属している事務所(居宅介護支援事業所)のリストを出すのが限界』というのが行政側の基本原則で、この点は介護家族として先に知っておく必要があります。

理想的な『良いケアマネの探し方』と、認知症家族の乖離

 で、今の私なら『良いケアマネの探し方』を探している人に対して言うとしたら、こう言うと思います。

  • 同じような症状の被介護者を抱えている介護家族から『このケアマネがいい』と推薦されたケアマネがおすすめ。

 実は一番強力なのは口コミで、当時私も同じような話を情報源から聴取したんですが、この口コミを得る方法が、当時の我々にはなかったのです。

 ここは同様の落とし穴にハマる家族が多そうな気がするので、要因を深堀すると、こういうところだと思います。

  • 家族(父、私、弟)がそれぞれ別の地域にいる。
    • 例えば私が近所の情報を聴取しても、遠方の実家でケアマネを探す役には立ちません。
  • 介護家族全員が男性。
    • 最も社交的なのは認知症になってしまった母だったのです。もし父と母が逆であれば、母が地元でケアマネを探してきたかもしれません。
    • しかも母は実家で祖母の介護をしたことがあり、家族の中で最も介護を知っている人でした。
  • 被介護者本人が、自身の認知症を周辺に知られたくないと思っている。
    • 母は病識が乏しかったのですが、それでも自分が介護を受けているという自覚があって、そのことを近所に知られたくない、と父に話していたようなのです。
    • 父は地元でそれなりに近隣関係を持っていたのですが、母にそう言われてしまうと聞いて回ることもできません。
  • 認知症に対する社会の偏見を恐れるあまり、家族が介護の状況をクローズにしがち。
    • 家族としても認めづらく、オープンにしづらいので情報が集まりづらい側面がまだまだ強いです。

 もっと地域社会で認知症介護に関する情報共有がオープンであり、我々介護家族が気兼ねなく参加していけるマインドであればよかったのですが、男性はなかなかこういう場に参加することが難しい側面があります。

 国もこのことをよく認識しており、折しもこの年は認知症対策基本法が施行された、まさにその年でした。

それでもケアマネを探さなければ

 ということで、どうやってケアマネを探すかが課題になりました。

議員に相談してみる

 私が一つひらめいたのは、父はたまたま福祉に強い政党を長年支援していて、その党の市議会議員とも知り合いだったので、議員経由で評判を調べられないか、という案でした。

 当時私が結構忙しかったので、父に話を通してもらって弟がこの議員との折衝に当たったのですが、どうもその結果は上記の行政の対応と同じだったそうです。

 結局市の居宅介護支援事業所のリストを渡してきただけだったらしく、苦労した割には得るものが少なかったと弟は言っていました。

ベンチマークを取る

 どうしたものかと頭を悩ませ、さんざん調べ回った結果、私がたどり着いた情報源はここでした。

 介護事業所・生活関連情報検索

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/

 日本の介護事業所に関する限り、おそらく最も信頼性の高い情報が集積されているのはここです。

 ここには日本で介護事業所として登録されている全ての事業所の情報が集積されており、しかも国に対する報告事項として集約されているので一定の信頼が置けます。

 ここから、自宅近隣のケアマネの事務所(居宅介護支援事業所)の情報をリストアップして、良さげなものをチョイスする、というのが私の思案でした。

居宅介護支援事業所を探してみる

 トップページから都道府県(今回は私の例として千葉県で選んでみましょう)を選択すると、こんな感じのメニューが出てくるので、

 『介護事業所を検索する』を選びます。

 ここからいろいろな検索方法が選べて、メニューによっては対話的に選べたりもします(最初に調べる時は『本人家族にあったサービスを探す』でいいと思います)。

 ただ私としては条件をしっかり決めたかったので、『詳しい条件で探す』を選びました。

 操作が若干難しいんですが、ここでサービスの種類に『居宅介護支援』と入れると、かなり細かい条件で検索を絞ることができます。

 特に重要なのが以下の情報で、自分たちの状況に合った事業所を選ぶ際に重要です。

  • 事業所の所在地
    • 基本的には介護を受ける人の居住市区町村になります。
  • 住まいから検索
    • ケアマネには毎月モニタリングに来てもらう上、何かあった際に駆けつけてもらう可能性もあるので、なるべく居宅から近いほうが良いです。
    • 住所を入力して、事業所までの距離を指定すると、その距離内にある事業所を絞り込めます。
  • 休日の営業の有無
    • 土日の不測の事態などへの対応のため、基本的には土日に連絡のつく事業所が良いです。
  • 特定事業所加算の有無
    • 一定の条件を満たす介護事業所は、厚労省から評価され、介護報酬を加算して受け取れるようになります。この制度のことを特定事業所加算と呼びます。
    • つまり特定事業所加算がある事業所は、そうでない事業所よりもサービスグレードが高い可能性があるわけです。
    • ただ、加算の種類は多様なので、自分たちが重視する事業所加算(力を入れている領域)を意識して選ぶ必要があります。

 試しに私の居住市区町村である千葉県船橋市の市役所の住所でも入れてみましょうか。上記の情報をチェックしつつ、半径3km以内で検索します。

 するとこんな感じで事業所のリストが出てきます。

 この時点で居宅からの距離で絞り込んでいるので、実質的に選択可能(サービスを受けられる)事業所をかなり限定できます。

 ここから先がポイントです。『詳細情報を見る』というボタンを押すと、各施設の細かい情報が出てくるんですよ。

 まず最初に出てくるのがレーダーチャートですが、これは一定のチェックリストに基づいて、各施設のサービス状況のチェック結果を点数化したものです。この時点で介護施設のスコアリングがある程度出てくるわけです。

 我々の目的である認知症介護に対する取り組みの度合いを見ることもできます。レーダーチャートの設問の中にこういうのがあるのでチェック状況を見ます。

 さらに、認知症に関する研修実施や人材の配置状況なども確認できます。

 事業所のサービスに関しても記述があるので、本人と家族に合致しているかどうかの確認もできます。

 こういう情報が得られるので、『居宅から近いケアマネの事務所が、どういうサービス品質を持っているか』をある程度把握できます。

 で、私はこのサイトから近隣の事務所の情報を調べてリストにしたのです。

 このようにExcelで手元リスト化しておくと、フィルタ条件を適宜変えながら、条件を満たす施設を優先度をつけてチョイスしやすくなるわけです。

この事業所情報取得方法の力

 こういった介護事業所の情報取得方法は、見ての通り多少面倒くさいんですが結構強力です。

 というのも、この方法は母が在宅介護を終えるまで、すなわち施設介護を受ける際の施設探しに至るまで一貫して使い倒しています。

 この情報収集方法があるとケアマネと話をする際にも家族の立場がブレなくなります。ケアマネにおすすめされるままにサービスを使うだけではなく、そのサービス事業者の裏取りもできますし、妥当性についてケアマネと議論する際にも有用です。

 介護家族が一貫性のある情報収集をするための重要な方法なので、特に口コミで情報が得られない場合は手の内に入れておくと良いと思います。

 ただ、手動だと結構大変だったので、後で簡単なプログラムを書いて、情報取得を一部自動化しています(後でお話しようかと思います)。

現実との妥協

 ただ、これはあくまでも資料上の結果であって、何点か制約事項があります。

  • 事業所の受け入れ人数はリアルタイムに更新されていない。
    • 事業所の厚労省への報告はリアルタイムではないので、サイト上の受け入れ可能人数は最新のものではありません。
    • 我々の場合、自治体が1ヶ月程度の間隔で受け入れ人数を共有していたため、そこを参照しています。
  • 全ての条件を満たす理想的な事業所がない可能性もある。
    • ある程度妥協が必要な場合に備えて、Excelファイルのフィルタ条件を切り替えながら妥協点を探していました。

 理想の条件を全て満たす事業所があるとは限らないし、仮にそういう事業所があっても受け入れしてない可能性があるわけですね。 

 なので手元でリストをフィルタリングしながらあれこれ比較検討する必要があるわけです。

 それでも2,3箇所、お眼鏡にかなった事業所が見つかったので、情報が全く無い場合はここという目星をつけることができました。

もう一つのキーワード

 もう一つは、会社で介護相談を受けた際に川内さんから言われた、これです。

母の今の状況に合致したケアマネを選ぶとよい。ケアマネごとに得意な分野が違う(看護婦出身で骨折に強い、認知症に強い、など)。

包括に予め現状(認知症の状態と環境、困りごと)をよく伝えた上で、『現状に合ったケアマネを自分たちで探すつもりだが、探し方をアドバイスしてほしい』と頼むと、割と教えてくれることがある。

認知症の特性(ひと目見ただけでは深刻さが分からない)を経験し、よく知っている人がいいと思う。

 『良いケアマネ』ではなく、『我々の状況にあった得意分野を持つケアマネ』を教えて欲しい、と依頼する手です。

 これであれば、別にえこひいきをしているわけではなく、被介護者とのマッチングの問題になるので、割と助力を頂きやすいのかなと。

 上記を念頭に、『認知症対応を得意とするケアマネがいれば、優先的に教えてもらえないか』という話を、先程見つかった事業所の名前とともに、包括の方に話しておきました。

その後しばらくして

 包括から電話があったんですよ。

 『ご希望の事業所で、認知症の経験があるケアマネがひとり空いたのでどうですか?』という話が。

 やはり希望した事業所は割とレベルが高かったので、なかなか空きが出ないんですよね。本命と目していた事業所ではなく次点の事業所ではあったんですが、両親のかかりつけの病院にも近いので、これを奇貨としてお願いすることにしました。

 後で伺った話だと、ここでアサインされたケアマネさんも認知症の父上を介護した経験があったそうなので、ひとまずマッチング的にはうまく行く形でケアマネを見つけることができた次第です。

 さて、ここまでで結構大変でしたが、まだまだ道半ばで、今度は介護サービスを使う算段をしなければなりません。


  1. 介護認定をつけたのにサービスを使わない、みたいな話をたまに聞きますが、だったらなんで認定を受けたのかと疑問しきりです。

あるITエンジニアが立ち向かった認知症在宅介護の記録 (4. 介護認定)

介護認定(2024/2 下旬)

 前回、包括の人がやってきて、父と母の介護認定申請書を自治体に提出してくれました。

 そもそも介護認定とは何か、という話なんですが、厚労省はこんなページを用意しています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html

 結構とっつきづらいページながら、実はこのページから辿れる情報は、介護認定を有利に進めるのにかなり重要な情報が書かれています。追々説明します。

 端的に言うと、申請者(本人)の状態を確認した上で、介護度(要支援1〜2、要介護1〜5)を決定するプロセスです。

 この介護度というのが、介護保険で介護サービスを受ける際の限度額や範囲に影響してくるので、家族の立場としては結構重要なプロセスになります。

介護認定申請 → 認定調査

 介護認定申請書が(包括経由で)自治体に提出されると、自治体は申請者の状態を確認するため、 『介護認定調査』 という調査にやってきます。

 基本的には自治体の職員(認定調査員)が申請者の居所(自宅や施設)にやってきて、申請者の状態を直接確認したり、家族や関係者からの聴取を行う活動です。

必要なものを揃える

 認定調査に先立って、いくつか揃えておくべきものがあって、調査日が決まるまでの間に、私と弟はこれを準備していました。

  • 問診票
  • 主治医意見書
  • 生活状況を説明したメモ

問診票

 介護認定を行う際、自治体は主治医の意見書提出を求めることが多いです。

 介護認定を受けるということは、一人で自立できない何らかの疾病、障害があってのことなので、それを医学的にどう評価するかは重要なわけです。

 この意見書提出に当たり、申請者(もしくは家族)の側から症状を説明する文書が問診票で、たいてい自治体の介護認定のページに書式が載っています。

 初回は父と母、両方の認定を申請したので、両親の既往歴を聴取しながら欄を埋めていきました。

 記述や判断に迷う箇所もでてきますが、この文書自体はそれほど迷いなく書けると思います。

医師の意見書

 で、前述の通り、問診票を元に医師の意見書を書いてもらう必要があります。

 基本的にこの意見書を書くのは主治医なのですが、今回は認知症介護の初回認定なので、認知症の診断を下した医師に書いてもらうことになりました。

 そもそも日本医大で診てもらった先生にも

私から介護保険の話をした所、最初の診断書については私が書く、と先生はおっしゃってくれた

 という経緯があります。

 こっちは問診票が完成した所で、弟経由で日本医大の先生にお願いして書いてもらいました。

 (自治体によるのかも知れませんが)基本的には医師の方から自治体に送ってくれるはずです。

生活の状況が分かるメモ

 で、このメモの提出は自治体からは求められることはありませんが、実は一番重要です。

 認定調査という限られた機会、時間しかない調査プロセスの中で、申請者の実際の状態を家族目線で伝える、というのは結構難しいのです。

# ポイント 趣旨
1 時間 長くても2,3時間しかなく、実生活の細かい状況を伝えるだけの時間がない。
2 調査観点 調査員は予め用意された観点、項目に基づく質問をするが、これらに関係しない実情は家族から意識的に伝える必要がある。
3 本人のプライド 家族が困っている事項は本人の能力に関する問題なので、調査の場では本人はできるように振る舞うし、本人の目の前で伝えると激しく反発される。

 認定調査は、オフライン面談の場でありながらも、同時に本人とは別のチャネルで情報を伝えなければならない、という制約を同時に抱えているのです。

 このような本人と生活に関する実態を(本人の裏側で)調査員や自治体と握るために、介護関連のページではよく、『予めメモを用意して、調査後にこっそり渡しましょう』のように書いてあったりします。

https://sumai.panasonic.jp/agefree/qanda/answer-3-06.html

特にメモ等を活用して、調査当日に調査員に手渡しましょう。

 メモって言うと数行程度で済むような内容を想起しがちですが、実際困ってることを数行で書けるわけはないのです。

 実際我々が初回の介護認定で書いたメモは『生活の状況が分かるエピソード』としてA4で2枚ほどになりました。

 この辺、初回作成時は弟と散々議論して記述しています。

生活の状況が分かるエピソード
* 服薬管理ができない。
    * 毎日朝食及び夕食時の処方服薬のため、毎回介護者による見守りと飲む量の指示が必要。
    * 高脂血症、うつ、認知症の3種類の薬をお薬ケースに分包する作業が、週1回発生している(所要時間:10分/回)。
    * 介護者(夫)が大病で入院して不在となった際、予めきちんと分包していたにも関わらず、自ら処方量の2-3倍の量を過剰摂取してしまう事態が生じた。事態を説明したが納得せず、過剰摂取が繰り返されたため、結局、次男が薬を隠し、隔日で実家を訪問して薬を提供する対応を要した。
* 日常的に実施する手順を覚えておくことができない。
    * 簡単な料理(レトルト食品(宅食等)の電子レンジによる加熱等)もできなくなり、毎日3回程度、介護者(夫)が補助している。
    * 以前までできていたゴミ出しができなくなった。ゴミ出しの日時、集積所を覚えられず、不安になって10分ごとに確認してくる。結果、介護者(夫)が全てのゴミ出し(週5回)や分別指示(毎日)を行っている。
* ガスコンロの使用方法を覚えておくことができず、付けたり消したりを繰り返し続けたため、危険だから控えるように説得を続けたが納得せず、結局、ガスコンロを一時的に使用不可にする対応を要した。
    * ヒートショック防止のため風呂には浴室暖房をかけてから入るという手順を教えても、覚えていることができず、毎晩、介護者(夫)が手順を指示し、補助する負担が生じている。
    * スマホが使えなくなった(以前はスマホで積極的に家族に連絡していた)。電話やLINE等の連絡が来ても『使い方が分からない』と言い、介護者や息子の支援がないと全く操作できない。
* 介護者(夫)の入院手術時、意識回復の連絡が病院から来ていても気づかず、長男が本人のスマホを代わりに操作して病院と連絡を取リ、状況把握する必要があった。

* 過去行った場所のことを覚えていない。
    * 何度も行った近所のレストランに来ても、『初めて来た』『こんな所滅多に来ない』と言う。
* 介護者(夫)が退院し、自宅で自ら出迎えたのに、その後訪問してきた近所の人に「まだ入院している最中」と話をしていた。配偶者が退院したという重要な事実すら忘れてしまっている。
* 貴重品(Suica、診察券、保険証等)の収納場所を覚えていることができない。
    * 外出時には10分間隔程度でカバンや財布を開けて調べ始める。その都度、介護者が「ここにあるから大丈夫。開けなくて大丈夫」と説明を繰り返すが、「なんで開けちゃいけないの」とパニックになり、落ち着かせるといった対応を要する。
    * 在宅時(家庭内)でも記憶が困難なため、常に介護者が代わりに探す必要がある。包括の職員が訪問した際、お薬手帳や保険証を自ら探せず、介護者(夫)に探してもらう必要があった。
* 介護者(夫)が深夜、腰痛で救急搬送された際も被介護者(妻)は適切な対応を取ることはできず、結局介護者が自分で救急通報した。
* 日常作業手順や重要な情報を宅内に張り紙にしているが、張り紙だけで思い出すことが困難。
* 一人で外出することができない(被介護者(妻)は、元は仕事で市中を駆け回っていた)。
    * 病院の付き添いとして月に1回程度、介護者(夫)が車で送迎、診察への同席を要する。
    * 外出には毎回介護者等の同伴が必要(一人で交通機関を使うことも困難)。
    * 日常的な買い出しは介護者(夫)が全て行っている(週2〜3回)。その他の買い物も毎回介護者等の同伴を要する。
* 介護者(夫)の退院時も付き添いをすることができず、長男が代わって介護者に付き添った。
* 一人で行動できないため、体力維持のため介護者が散歩に連れ出している。が、被介護者が途中で疲れて帰宅が必要となり、体力低下が著しい。
* 介護者(夫)が入院した時は息子達が実家に出向いて火の元、施錠、ゴミ出し等の面倒を見る必要があった(週4回程度、息子達が入れ替わりで対応した)。
* 本人に病識が乏しい。健常で自立し支援を受ける必要はなく、年相応の記憶力低下だと思っている。

特に困っていること
* 上述の通り、介護の手間、頻度共に積み上がっており、特に、主たる介護者(夫)への負担が大きくなっている。介護者(夫)は現在精神科に通って精神安定剤を飲む状態になっている。
    * 服薬管理、ゴミ出し、食事の手配、貴重品管理等、毎日、見守り・指示・対応・補助が必要。
    * 同じ事を聞き返されたり、拘ってしまう認知症特有症状への対応で心理的な負荷も大きい。
    * 不安症状が激しくなると介護者(夫)を困らせる言動をしてしまう。
    * 介護者(夫)・被介護者(妻)双方に非常にストレスが溜まってしまうので、なるべく早くストレスを軽減したい。
* 介護者(夫)が体調を崩したり万一のことがあると、被介護者(妻)単独で自立生活が難しく、息子達への負担も発生する。現在、介護者(夫)も、強直性脊椎症(発症:2024/1/26)、心身症(発症:2024/1/9)等を患い、介護保険申請中である。
    * 息子二人は同居していないため、いざという時にすぐに駆けつけられる状況ではない。
    * ガスコンロの操作等、火の元の管理にも不安があり、火事等につながる可能性があり心配。
* 一人で外出できないため、介護者(夫)が動けないと引きこもってしまい、心身のケアが十分にできない。
    * 病院に一人で行けないため、医師の診察を受けて薬をもらってくることが困難。
    * 外出が困難になると認知症ケアの観点からも、身体能力の観点からも悪影響で衰弱が心配。

 よく見るとこの情報、前々回で介護相談会に行く前の事前準備の情報がかなり含まれていると思います。

 これが介護において状況を文書化することの大きなメリットで、介護認定の場ではこの手の状況取りまとめと文書による説明、というのが認定結果に大きく響いてくるのです。

 また、介護認定準備でこうしたメモを作成する際に、予め情報が揃っていると作成時の負荷も軽くなります。

家族としての準備

 初回の認定については日程調整や文書のたたき台作成は私がやっていましたが、先程の厚労省のページから辿れる認定調査員テキストを弟に紹介したら、結構中身を読み込んで質問事項を一通り把握してくれました。

 この分担によって、当日の認定日の動き方に影響を与えています。

認定日

 『認定調査にはかならず家族が立ち会うべき』というのは鉄則なので、全員が参加できるように日程調整した所、土曜日の午前中に設定することができました。

 当日の朝、市役所から調査員の方が見えて、居間に通した上で認定調査が開始されました。

2段階の認定調査

 本人の状態に依存する話ではあるんですが、我々が体験した認定調査の時間配分は2段階になっていたなぁと。

  1. 身体能力を確認する、本人同席必須の調査
  2. 認知能力や生活状況を把握する、本人が席を外して家族が話す調査

1. 身体能力を確認する、本人同席必須の調査

 立ち上がったりとか歩いたりとか、関節に拘縮がないかとか、身体的な障害の有無を確認するプロセスです。

 これは当然本人同席が必要な調査なので、本人を立たせてみたり関節を動かしたりと、本人の挙動、所作を確認します。

 母は身体的な能力には何ら問題はなかったので、この調査自体はすぐに終わりました。

2. 認知能力や生活状況を把握する、本人が席を外して家族が話す調査

 身体的な要因のみで介護認定を受ける場合、これはあまり必要ないのですが、認知症の場合、このプロセスが必要になってきます。

 ここから先、『やたらものを忘れる』『料理ができなくなった』『薬の管理もできない』のような、本人にとってできないことを家族が第三者に声高に話すことになってしまうので、誰にも悪意はないのですが本人のプライドを強く傷つける話にならざるを得ないのです。

 そこで、本人には外してもらって、家族と調査員だけで生活の実情を話す、というプロセスが、こと認知症の介護認定に関しては出てくるようでした。

 我々はメモを用意していたので、最悪こういう時間がなくても文書で伝えることはできたのですが、調査員からこの申し出があったので、これに乗ることにしました。

 ただ、母に退出してもらうだけだと(体が元気なので)すぐに戻ってきてしまいます。自分の話なのに自分を外して話をされているという点もそうですし、(後日の認定調査では)不安になって自制心が効かず、家族のもとに戻ってきてしまうのです。

 そこで、母には私が付き添って2階に退出させるとともに、調査員の相手は父と弟がする、という感じで役割分担をしながら進めることにしました。


 弟は認定調査員テキストを結構読み込んでいたので、その知識をベースに調査員とガッツリ話をしていたようでした。

 私は母をなだめながら、最近の仕事の話とかで気を逸らしながら2階で時間を稼いでいたのですが、1時間、2時間経っても終わる気配がないので、母を置いて一旦居間に様子を見に行きました。

 居間では弟が結構舌鋒鋭く調査員と話をしていたのですが、調査員の方が若干困り顔でこう話していました。

『お気持ちと状況は非常によく分かったのですが、伺った話だと"認知機能"の基準に全部集約されちゃうんですよね』と。

認知症介護認定における泣き所

 というのも、調査員が調査すべき事項は介護認定マニュアルにおいて、予め決まっているのです。

 私と弟がまとめた症状をそのまま説明して調査結果に反映すると、この中の『認知機能』にまとまってしまうのです。

 それ以外の項目については(この時点では)大きな症状が出ていないので、『認知機能』以外の項目については結果が軽くなってしまい、全体として介護度が低くなる可能性がある、という話でした。

 例えば身体能力については前述の通り、何ら問題なく動けますし、日常生活行動(排尿、排便、食事摂取、着衣)なども(この時点では)自分でできていました。

 あくまでも介護認定上、調査項目上の見え方ではあるのですが、単に『忘れっぽい』だけという見方だけをされてしまう可能性がある、とのことでした。

 そこで、私と弟と調査員の3人で、『認知機能』以外の項目に該当し得るものをできるだけピックアップするように相談したのですが、この時点ではあまり有効なアイディアを出せなかったように記憶しています。

 『頂いた情報をしっかり反映して、介護度が落ちないようにはします』という話までは調査員からいただけたのですが、我々としてはここまでという感じでした。

 最後にメモの文書を手渡しして、丁重にお願いして認定調査は終了しました。

 …ちなみにこのときは父の認定調査も行いましたが、一時的な病気を除けば、父は認知能力も含めて元気だったので、介護が必要というアピールをあまりすることはなく、母の問題を中心に話をしていた感じでした。

結果(2024/3 上旬)

 で、2,3週間ぐらいしてから介護認定の結果が出て、

  • 母: 要介護1
  • 父: 自立

 という結果でした。

 まずは母の要介護1が取れたという点、1つ目の重要な分岐点でした。

 介護度は自立、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3…という段階があるのですが、要支援2と要介護1の距離は近くて遠いのです。

要支援2と要介護1

 近いという点では、実は『要介護認定基準時間が同じ』だったりします。

 介護度は基本的に、『介護に必要な手間』を時間として計算し、その時間の量に応じて割り振られるのですが、 要支援2と要介護1は両方とも『32分以上50分未満』なのです。

 一方で、要支援2と要介護1で得られるサービスはかなり違います。

  • 要支援2では介護予防が目的のサービスに限られるが、要介護1では介護サービスそのものを使える。
  • 介護保険支給度の限度額が大きく異なる。
    • 月6万円ぐらい違います。
    • この差がデイサービスやショートステイの利用回数差、つまり介護者の負担軽減度につながってきます。
  • 要介護からは、ケアプラン作成を担当するケアマネをつけることができる。
    • 要支援の場合、ケアプランは包括の職員が作成する。

 例えばこういう差があるので、父の負担軽減を念頭に置くと、母には要介護1以上が必要なところでした。

 やはり認知症の診断があったのが大きかったと考えられます。

 要支援2と要介護1の判断の一つは認知症高齢者の日常生活自立度で分けられている旨が、厚労省のテキストには書いてあるので、この基準に基づいて要介護1と判定されたのでしょう。

ケアマネ探しへ

 というわけでひとまず私と弟は胸をなでおろしたのですが、次にやるべきことはケアマネと介護サービス探しです。

 要介護1になったのでケアマネを母に割り当てつつ、父の負担を軽減するようなサービスを組む必要があります。

 …というところから、次は話を始めましょう。

あるITエンジニアが立ち向かった認知症在宅介護の記録(3.各所への相談)

介護相談(2024/2)

 こんな情報を揃えつつ介護相談に臨んだのですが、ここで話をしたのが、NPO法人 となりのかいごで代表を務めていた川内さんでした。

www.tonarino-kaigo.org

 実はこの介護相談に先立って、私は川内さんのこの本を先に読んでいました。

 私は両親と別居しているので文字通り遠距離介護になるのですが、この遠距離介護というのは果たして良いことなのか、非常に悩みました。あるいは実家に帰って直接介護に切り替えたほうが良いのではないか、という悩みをきれいに断ち切ってくれたのがこの本です。

 遠距離介護になりそう、という人はまず最初にこの本を読んでおくと良いと思います。むしろ遠距離介護は介護を抱えた親子の関係としては悪い関係ではありません。

 自分の親の介護だからといって、親の意向に沿ったり完璧にやり切ろうとせずに、適度に距離を取って、 『親孝行』の呪いから開放された介護をすることの大事さ、公的支援とつながってプロフェッショナルの力を借りることの重要性が書かれています。そうしないと仕事を抱えた現在の介護世代は潰れてしまいます。

 気にはかけつつ手を動かしつつも、決してのめり込まない。外野から親不孝と言われても、回っているならそれでよい。ビジネスパーソンが陥りやすい落とし穴も含めて書いてありました。

 そういうわけで、

  • 現状実家とは距離があるが、別に介護で実家に戻る必要もなく、遠距離のまま進めて問題ない。
    • あえて距離を取ったほうが、私自身の精神的安定、仕事との両立上もベスト。
  • 介護は自分でやろうとせず、プロに任せるスタイルで進めるべき。
    • そのために一刻も早く公的支援につなげることが大事。

 この辺の整理がついた上での相談でした。

 で、前回まとめた質問事項に沿いつつ話を聞いたんですが、こういうアドバイスを受けました。


  1. 直ちに介護認定を受けたほうが良いと考えるが、包括に連絡すれば良いのか?
    • 包括に電話で連絡すれば良い。両親を連れて行くことは難しいようであれば、相談したら両親の方に訪問してくれるのでは。
    • 包括が現状把握すれば、介護認定申請という流れになると思う。
  2. 介護情報を収集していくと、『ケアマネが大事』という話を聞くが、ケアマネはどう選べば良いのか?
    • 母の今の状況に合致したケアマネを選ぶとよい。
    • ケアマネごとに得意な分野が違う(看護婦出身で骨折に強い、認知症に強い、など)。スキルのミスマッチが起こるほうが問題。
    • 包括に予め現状(認知症の状態と環境、困りごと)をよく伝えた上で、
      • 『現状に合ったケアマネを自分たちで探すつもりだが、探し方をアドバイスしてほしい』と頼むと、割と教えてくれることがある。
      • 認知症の特性(ひと目見ただけでは深刻さが分からない)を経験し、よく知っている人がいいと思う。
  3. 認知症になると銀行預金が下ろせなくなるなどの資産凍結のリスクがあるようだが、家族信託などの組成は考えたほうが良いか?
    • まず、口座は認知症ではすぐに凍結されない。プライバシーの観点から、本人の病態は銀行に伝わることはない。トラブルがあって初めて口座凍結等になる。
    • なので、本人同伴で銀行口座を操作できれば基本的に問題になることは少ない。
    • 認知症が進行したあとで成年後見を使うケースが多い。
    • 父の家族信託が父の意向であれば進めるのもありだが、母については(認知性が発症しているので)ヒアリングの席上で認知能力を認めてもらえない可能性があることは覚えておいたほうがいい。
  4. 介護認定はどのように受ければよいか?
    • 介護度は介護時間がどれぐらいかかるかどうかを推計して判定するのだが、本人が直接応対すると訪問調査で満点になってしまうことがある(できることをできると言ってしまう)。
    • なので帰り際にメモを渡して伝えるとよい。プライドがずたずたになるので、本人の前では直接伝えない。大事なのは調査時点で調査員が見たものと、見えていない実態の食い違いを伝えること。
    • 高い介護度を確保してたくさんのサービスを受けても、逆に本人のできることを奪ってしまう可能性もあるので、適正なレベルで認定を受けたほうが良い。
    • 父が言わない(言えない)ことを息子たちが見たもので補完することも大事。腰を壊していたり精神科で薬をもらっていることなどは、とても重要なので必ず伝えておくように。

 で、これに加えて、以下のアドバイスを受けています。


  • お父様がお母様のケアからある程度引くことができたほうが良い』。これは母のためでもある。
    • 認知症では長期記憶が重要で、長期記憶を思い出せる人との生活を維持することはすごく大事。なので父との落ち着いた生活というのは重要。
    • 認知症の症状は、①脳の萎縮、②ストレスが大きな影響を持っているが、父が頑張りすぎることでかえって母のストレスになっている可能性もある。
    • そういう意味では父と母の距離感をある程度取ったほうが良い。父が一人で出かけられるぐらいの距離感を取れると良い。
  • 『母が不安がるので父は表に行けない』と父は言っているが『お母様が不安になるのは必ずしも悪いことではない』。母にとって、父以外の安心材料、安心の場を作ることが大事。 * 父と母のこの距離感がないと、介護サービスを受けられるようになっても利用しなくなるケースも多い。
    • そういう関係性の構築は第三者に関わってもらったほうが良い。プロの介護士であっても、家族の介護は実施してはならないと言われる(冷静にできないから)。
  • 現状の状況だと、息子が冷静さを失ったらSOSが出せなくなって終わる。
    • 『家族一丸で何とかしよう』などという美しい言葉は危険なので気をつけること(外部の公的な力、第三者の力を積極的に借りろ、という趣旨)。
  • 介護の情報収集は果てがない。今回も大量の情報を調べてもらったが、だからといっていい介護にたどり着けるとは限らない。
    • 逆に果てしないものを追いかけた結果、家族の関係性が崩れてしまうこともあり得る。
    • ビジネスマンとして優秀な人ほど、自分で全部できると思い込みがちだが、介護はその構造上、家族がやるべきではない。介護職がやるべきことは介護職にやってもらおう。

 以降の介護におけるアクションで、これらのアドバイスは非常に役に立つことになります。

 特に『父と母の距離を作る』という点は、閉鎖された高齢者家庭に父と母が二人きりで過ごしており、母の認知症で父がイライラしているという現状、非常に重要な点だと思いました。

 結局の所、同居しているがゆえに父が主介護者になってしまった関係で、施設介護に至るまで距離を十分に作ることは難しかったのですが、内圧が高まってしまっていたこの現状を打破する重要な目標になったように思っています。

包括に電話

 この介護相談の数日後、私から直接地域包括支援センターに電話をかけました。

 先程の現状をまとめて話をした所、実家に訪問してくれることになったので、(たまたま私も都合がついたので)訪問時に同席して説明を聞きました。

 実家の現状を確認いただいた上で、認知症の診断を受けている母の介護認定と、体が弱くなってきた父についても介護認定を受けることになりました。

 その場で認定申請書類を記入して提出し、介護認定の認定日については後日調整、ということになりました。

 …と、言うのは簡単なんですけど、この時点での親の抵抗感はまだあったようで、都度なだめながら進めていた、というのが実際のところです。

 父に対しては『とりあえず認定を受けてみて…』という形でステップ一つを軽めに説明しつつ、母に対しては認知症の話をせずに『年取って二人共体が弱くなってきたから、心配した息子たちが生活を安定させるためにやってることなんだよ』という感じで。で、両方に対して『今は歳を取ったら公的支援を受けるのが当たり前だから、俺らのためにやってほしい』という話を何度もしながら進めました。

 親の言葉は聞きながらも、進むべき方向は子供が舵を取って決めて進める。我が家のケースはこれが突破点になったと思っています。

 こっちの方の話は、そのまま介護認定に進むことになります。

家族信託に関する相談

 一方でもう一つの懸念は財産管理に関する事柄でした。

 認知症になってしまうと銀行口座の取り扱いが困難になるという話は、私もこの段階で聞いてはいました。

 特にこの話は銀行が良くしてきます。

www.iyobank.co.jp

 銀行なんかがこういう話をするときって、やれ任意後見制度だの成年後見制度だの、家族信託だのと言った

  • 事前にやっておかないとどうしようもない上に手続きがクッソ面倒
    • しかも場合によっては予後がすごく悪い

 こういう制度の話しか言わないんですよ。

 しかし介護家族の実務はそんな話で片がつくもんじゃないんですよね。

介護家族のお金に関する実務と誤解

  • 大前提として、介護にかかる費用は被介護者(本人)の口座から負担させる。
  • しかし、認知症によって金融機関からお金を下ろせないと、日常の生活費すら家族が差配することすら困難。

 Webの情報だけを集めていくと、認知症の介護家族を抱えた瞬間にこういうジレンマを感じることになります。

 ここから先、この問題に対して家族で様々に話し合い、手続きをいくつもやってきた経験からすると、結論的にはこれに帰着します。

  • 実務上、本人手続きが必須な手続きやタスクは、認知症になると詰みやすい。
    • 対面での手続きが必要とか、セルフ写真撮影が必要とか、認知能力を確認される場面があるとか。
    • 特に伝統的、地場的なサービスほど、資金取り扱い手続きに本人確認を噛み込んでおり、融通がきかない傾向がある。
  • 一方で実務上、家族の代行が効く手続きやタスクは、工夫次第で詰まないし、資金を融通することは難しくない。

 この方針にしたがって、本人の口座や資産管理を本人手続きが必須とならないように構成していくと、日常的に大きな困りごとにぶつかる可能性は減ります。

 (具体的な詳しい話はこれから何度か出てくることになります)

しかし体制構築前はそういう肌感を知らない

 ところが介護にぶつかった直後って、そういう資金管理の肌感を知らないのです。

 よって私も前述のジレンマを感じることになったのですが、そこで父が持ってきたのが『家族信託』という話でした。

家族信託

 家族信託というのは、信託法という法律に基づいた家族間の特別な契約に基づいて、家族で財産を管理する手法のことです。

 資産を持っている側が、信頼できる相手に資産の管理権限を委託しつつ、契約に従ってその資産の使途や管理方針を規定するというやり方ですね。

 我が家の場合、例えば母が委託者となり、私(長男)を受託者として、母と私の間で信託契約を結びます。そして私は母の財産を信託され、契約の内容に従って管理する、というやり方ですね。

 家族信託の場合、信託された財産は普通預金口座ではなく、『信託口口座』という受託者が管理可能な口座に入れられます。

 なので、受託者が家族であれば、仮に委託者が認知症になっても受託者が資産を管理して介護資金を融通できるようになる、という仕組みです。

父の懸念と相談

 母の認知症による資産凍結リスク、という点を私が話したときに、父は『自分が認知症になったらどうなるか』まで不安になったようなのです。

 そこで色々調べて持ってきたのがこの言葉だったのですが、当然私も家族信託についてよく知らなかったので、色々考えた挙句、家族信託を大々的に取り扱っている会社に電話をかけて、一度相談してみることにしたのです。ここに。

kokorono.info

 母の病状と資産状況を説明したあとで、こんな話をしました。


  • 家族信託の締結に当たっては意思表示ができるかがポイント。

    • (母は難しい内容がわからなくなっているので心配と話した所)、難しい内容について逃げがちな顧客も多かったのだが、契約は締結できている。
  • 現預金、不動産、株式以外に生命保険についても確認しておいたほうが良い。

    • 受取人が母名義の生命保険があると、保険金が入った時に動かせなくなる。
  • 両親が共に施設に入居した場合等、主が不在になった場合の実家の扱いを検討しておくことを勧める。

    • 実家が持分分配になっていると、売却に両方の合意が必要になってしまう。不動産としては扱いづらい。
    • 片方の持分と言うより、二人分の持ち分を(例えば息子に)信託したほうが良い。
      • というのも、持分不動産というのは双方の合意がないと処分できないので、片方が意思能力を失った場合、売りたくても売れなくなってしまう。
  • 株式については信託口口座に対応した証券会社(数社あるらしい)に移管手続きを行ってから信託口口座を開設する。

    • が、実は委託者と受託者の信託口口座をそれぞれ開設する必要があり、結構面倒。
    • このため、配当が収入源となっている場合は別だが、そうでない場合は現時点で現金化しておくことを勧める。
  • 費用は財産管理する額に依存する(財産の総額ではなく、管理対象とする財産の範囲を決めた上で管理する) 。

    • 一般的なご家庭だと、費用は50万から60万ぐらい。
    • 父と母の二人をカバーする場合、契約書が複雑化するので70〜80万ぐらいかかると考えて欲しい。
    • 様々なケースに合わせて中身が追記される。例えば①父に問題が発生した場合→②母に問題が発生した場合…のように、ケースが増えて予備的な文言が追加されていくイメージ。
  • 家族信託の運用負荷はどれぐらいか?

    • 成年後見制度と比して負荷は低い。
    • 成年後見制度は第三者に対する説明の義務を追うが、家族信託は年1回、家族間(信託者)に対して説明の義務を負う。書類は基本的に入出金の記録をつけるだけで良い。また、負荷軽減のためのアプリを用意している。
  • 家族信託を自分でやるというのはおすすめしない。契約書の一つの文言で突然贈与税がかかることもある。

    • 文言一つで税金というのは解せないが、どのようなケースなのか?
    • 詳細には答えられないが、家族信託の文言は信託法に則って書かれていて、この法律の目的に合致しないような文言があると問題になる。

 こんな話をして、まずは家族で相談してみます、という形で相談を終えています。

結果的には

 結果的には、我々家族は家族信託を使いませんでした。

 介護認定だのケアマネ選びだの施設見学だのでそれどころではなかった、というのが最大の事情なんですけど、結局のところ、

  • 本人同伴での銀行口座操作
  • 代理人手続きの実施による代理人カードの利用

 この2つができれば、何ら問題なく日常の口座取り扱いはできますし、(契約上は問題にはなりますが)最悪、

  • 本人のキャッシュカードと暗証番号を預かり、本人の代わりに介護者が銀行口座を操作する

 ということも実務上は不可能ではありません(契約違反と分かっていても、実務上このように処理されているケースは多いと後で聞きました)。

 また、介護費用の支払いを行う場合、基本的には銀行/郵便局引き落としとなるケースが多く、大半のケースでは印鑑ベースでの引き落とし用紙の非対面やり取りになります。

 このため、本人の強い意志能力が問題となる局面は少なく、家族による代理手続きでどうにか回るのです。

 ただ、家族信託こそやらなかったものの、ここで得たアドバイスの中で何点か気をつけておくべき事項がありました。

 それは"流動性の低い資産"に関する扱いです。

流動性の低い資産

 父と相談して母の資産をリストアップしてみたんですが、(我が家は貧しいので少額とはいえ)母には現預金以外の資産がいくつかあったのです。

  • 実家の持分(土地+建物)
    • 購入時に母が少しだけ持分を持つ形になっていた。
  • 株式
    • 母が以前勤めていた会社の持株会で購入したもの。
  • 保険金
    • 養老保険を郵便局でいくつか。

 これらの資産は現預金と比較して流動性が低く、キャッシュカードを持ってって現金化することもできず、誰かに移転することも難しいものです。

 これに加えて、母の預金口座の多くは『定期預金口座』で占められていました。

 定期預金口座もキャッシュカードで即現金化することは難しい流動性の低い資産です。

 これらの流動性の低い資産に関する重要なポイントは『移動に本人の手続きが必要』という点で、この点については結構あとまで頭を悩ませることになります。

 このあたりの流動性の低い資産にどう対処したかは、認知症家族のもう一つの関心事だと思いますので、おいおい触れていくつもりです。

あるITエンジニアが立ち向かった認知症在宅介護の記録(2.対応遅れと状況の悪化)

それからしばらく(2023/12〜2024/1)

 それからしばらくは、やれ父の体調が食欲が、という父の病後の対応を行った程度で、私も弟も忙しさから、この認知症の問題にあまり向き合っていませんでした。

 我が家は毎年正月に実家に家族全員が集まるのですが、その時も父が元日こそ体調を崩して心配したものの、ガンから回復して生還したことの祝いの趣旨が強く、母の問題についてはあまり触れませんでした。

 ここは私の大きな油断で、

  • 認知症と診断されたからって、すぐに進行するわけでもないし、父が家に帰ってきたのなら、とりあえず当面は何とかなるだろう。

 と思いこんでいたのです。

 実は決してそうではありませんでした。すぐにそのことが明らかになります。

父の体調と、母との衝突

 ある日、弟から急にLINEが入ったので見ると、こういう話でした。

  • 昨日の夜、寝ている間に父が腰の調子を悪くして起き上がれなくなってしまった。
  • 母を呼んだのだが、呼ばれた母も何もできずにオロオロするだけだった。
  • スマホに手が届いたので、弟に連絡しつつ救急車で病院搬送。強直性脊椎症の診断だった。
  • とりあえず入院等には至らず、湿布等を処方されて帰ってきた。

 慌てて様子を見に行って上記の状況を聞いたのですが、この時点では母は父の危機に対応できないぐらい認知能力が落ちていることが分かりました。

 また別の日のことです。

 父の入院時の見守り機能として、実家の居間には見守りカメラが置いてあって、遠隔の私や弟からでも状況を確認できるようにしていたのですが、ふと心配になって見守りカメラを見ると、母が父に強く問い詰められているような光景が出てきました。父がすごく怒っていて、母は涙ながらに謝りながら萎縮している、という光景です。

 これはまずいなと思いました。老老介護、介護虐待、最悪介護殺人といった言葉が脳裏をよぎりました。

 すぐさま私は父に電話をかけ、状況を聴取したところ、

  • 先日の腰の悪化があったので、緊急ボタンを買って母に渡したのだが、使い方をどれだけ説明しても分かってくれない。

 ということで結構感情的になっていたようでした。

 しかも、どうも1月の段階から、父は精神科に行って安定剤を飲んでいたというのです。母の不安や、認知症特有の繰り返しの質問への対応が、父の精神をすり減らしていることが分かりました。

 つまり母の認知症の症状が、父の体調や日常生活に悪影響を及ぼしている状態で、これは待ったなしだと分かりました。

状況の分析と介護相談会への相談

 幸いなことに私が所属している会社は、(必ずしも十分とは言えませんが)一応社員の介護に関する一定の体制を揃えているところでした。

 毎月『介護相談会』を開いてくれて、希望者は対面やTeams等で、社外の介護の専門家に相談する機会があります。

 以前の私は『なんかやってるなー』程度の感覚だったのですが、この切迫した状況は、まさにこの相談をするべき時です。

 すぐに連絡を入れて直近の介護相談会を予約した上で、現状を取りまとめつつ、家族として何を相談するべきかをまとめ始めました。

現状

 まず現状はこんな感じです。


  • 一昨年頃からうつ病の治療を受けていたが、治療があまり効果を見せていなかったため、日本医大の認知症専門医に見てもらった所、アルツハイマー型認知症と判明。
  • 記憶について
    • 服薬管理ができなくなっており、父の指示で薬を飲んでいる。
    • 以前までできていたゴミ出しの日時、集積所を覚えることができず、ゴミ出しができない。
    • ガスコンロの使用方法を覚えておくことができず、付けたり消したりを繰り返す。
    • 父ががんの手術から退院し、自宅で自ら出迎えたのに、その後訪問してきた近所の人に「まだ入院している最中」と話をしていた。
    • 過去何度も行ったことのあるレストランに行った時、「まだ行ったことない」と忘れてしまっている。
    • Suicaをどこにしまったか、10分間隔程度で忘れ、その都度カバンや財布を開けて調べ始める。
  • 日常生活上の支障
    • 日頃から料理を作っていたのだが、ここ数年料理を作れなくなり、最近は両親とも宅食になっている。簡単な調理(レンジの使用)も使い方が覚えられず難しい状況。
    • 父が救急搬送された際もうまくフォローできなかった。
    • 父が動けない状況になった際、近所に住んでいる弟が行って対応しなければならないことが多い。
    • 一人で病院にいけなくなっており、日本医大での認知症診断時も父と子どもたちが入れ替わりで付き添った。
    • 宅内に適宜張り紙をして日常作業や重要な情報などを思い出させるように苦慮している。
  • 父がいなくなると不安がる。
    • 特に父の入院中は顕著で、時々私と弟が様子を見に来ていた。
    • 一人で外出することが難しい。出不精だったわけではなく、元は仕事で外を駆け回っていたのだが、最近は電車にも乗れなくなってしまっている。
    • 散歩が日課なのだが、最近は寒いと言ってなかなか表に出られていない。
  • 本人に病識が乏しい。
    • 至って健常で自立していて、支援を受ける必要は特にないと思っている。
  • 父はここ半年間で急速に体調が悪くなっている。
    • 昨年9月にがんの手術を受けた。
    • 年末年始に風邪で体調を崩し、正月の帰省予定を3日ほどずらして帰った。
    • 1月に急性の腰痛で救急搬送。強直性脊椎症との診断。
    • また、介護と病気のストレスからか、精神科に通ってカウンセリングを受けたと話していた。
  • 電話した際、救急搬送時の対応について母と話しており、若干責めるような口調になっていた。
    • 直接介護のストレスが結構溜まっていると思われ、万一暴発しないかを心配している。
    • 認知症ケアの観点からも良い対応とは言えず、かえって母の不安が大きくなっているようなので、なるべく早く介護のプロに入ってもらったほうが良いのでは、と思っている。
  • 介護サービスに抵抗感がある模様。
    • 実際は息子たちに支援されて生活が成り立っているのだが、本人たちはまだ自立できていると思っている。
    • 父に「包括に連絡するつもり」という話をすると止められた。
      • 「家族で一度話し合ってから〜」のように先送りしようとする。
      • とはいえ、前述の状況から、息子としては一刻を争うと判断し「まずは現状把握した上での情報収集だから」となだめて理解してもらった所。
      • 一応、包括の人がそちらに行くかもしれない、という話はしておいたが、ひょっとするとまだ抵抗意識があるかもしれない。

 こういう形でまず提出書面として状況をまとめ、弟と話をしながら質問事項を洗い出していきました。

 厄介だったのが、

介護サービスに抵抗感がある模様。

実際は息子たちに支援されて生活が成り立っているのだが、本人たちはまだ自立できていると思っている。

父に「包括に連絡するつもり」という話をすると止められた。

「家族で一度話し合ってから〜」のように先送りしようとする

 という、介護サービスに対する拒否感が先に出ていたことです。

 この点、介護初期の子供、特に良い子として親の言うことをよく聞いていた子供が非常に悩む点だと思うんですよ。

 私も正直良い子の部類だったので、親の意思に反して、親が望まないサービスを受けることに非常に葛藤があったのですが、最終的に私は腹をくくりました。

  • 母や父だけのためだけではなく、一家全体のために介護サービスを子供の意思で、断固として導入しなければならない。

 と。

 たとえ今の段階で意に沿わなかったとしても、一家全体が共倒れになる危機を回避するために、子供の意思として布石を打たなければならないと。

 そしてそれは結果的に父のためであり、弟のためでもあり、私のためでもある、と思い切ることにしました。

質問事項

 この状況を元に、介護の専門家に聞いておきたい事項をリストアップしました。4点ありましたね。

# 質問事項 趣旨
1 直ちに介護認定を受けたほうが良いと考えるが、包括に連絡すれば良いのか? この質問の答えは自分の中ではもう出ていて、どちらかと言うと背中を押してもらうための質問だった感があります。
2 介護情報を収集していくと、『ケアマネが大事』という話を聞くが、ケアマネはどう選べば良いのか? 地域包括のような公共団体は、えこひいきするわけに行かないので、おすすめのケアマネとかは教えてくれません。つまり家族が選ばなければならないわけですが、どう選ぶか、という話です。
3 認知症になると銀行預金が下ろせなくなるなどの資産凍結のリスクがあるようだが、家族信託などの組成は考えたほうが良いか? 介護資金は親の口座から出さなければならない(子も生活があるので、子が負担するわけにはいかない)ので、資金繰りも重要なポイントです。ちょうどこの時期頃に、認知症対策としての家族信託というスキームが喧伝され始めていて、父がこの言葉をどこからか聞いてきました。母はもちろんですが、将来的に父が認知症になった場合にどうするかも懸念事項でした。
4 介護認定はどのように受ければよいか? 家族が同席すべきだとか色々言われているが、母が不利にならないように認定を受けるにはどうすれば良いのか?

 当時の質問事項などを見て改めて思ったんですが、介護についてよく知らなかった当時としてはまぁ頑張っていたなぁという印象があります。

 後からも言及しますが、介護の戦いはいくつかの側面があって、その一つは情報戦なのです。

 今のコンテキストに必要な情報をどれだけ集めているかで、いろいろな決断の結果が良くもなり悪くもなります。

 一方で情報収集には果てがないので、情報収集だけに拘泥してもならず、できるだけのことをした上で限られた状況から決断をしないといけません(これも後で出てきます)。

 不慣れながらもきっちりと現状をまとめつつ、聞くべき事柄を立て、次につなぐための準備はまぁやってたんだなぁ、と思いました。

 ともあれ『ただ介護で困っている』ではなく、具体的な状況を文字にして『このように困っている』『だからこうしたい』と状況と進む先を明らかにするのが大事という話です1。文字にしておくと(家族や介護関係者間の)共通認識にもなりますからね。

 こういった現状説明と質問事項を携えて、私は会社の介護相談に臨むことになりました。


  1. この重要性は介護の各局面において、後で何度も出てきます。

あるITエンジニアが立ち向かった認知症在宅介護の記録(トップページ)

はじめに

 少し前にXでこういう話を見かけまして。

これ、私の経験から全く他人事ではなかったので、こう引用したんですよ。

 実はこの数年間、私は認知症の母の介護に遠距離で関わってたんですが、結構あるあるだなぁと思っていて。

 このやり取りの他にも、

  • それはやったことあって結構しんどいんだ。
  • その手続き、楽なのはこういう方針だと思う。
  • その状態だと他に考えるべきことがあるんじゃないかな。

 みたいな、介護に関する悩み苦しみが、Xには結構いっぱいあるんですよ。いや、Xだけじゃなくて、この日本国内に溢れかえっているのが実情なんじゃないかなと。

母に教わった恩

 この2年間の遠距離介護経験を通して一つ大きく思ったのは、

  • この経験は、きっと母が私に残した最後の訓えなんだろうな。

 ってことでした。

 結構いい歳になって、身の回りの世間のことが概ね分かったと思っていたのですが、母の介護の中で起きてくる問題とその対処に当たって、介護がなければ知ることもなかったであろう様々なことを調べ周り、学びながら何とか乗り切って来ています。

 世の中の介護に関する悩み苦しみを見て思ったのは、

  • 母から受けたこの最後の恩は、介護という形で母に返すのとともに、世間に対して知見を共有して恩送りするのが何よりの報恩なんじゃないだろうか。

 と思ったんですね。母は自分のことより関係する人のことを思いやる、そういう人だったので。

 まぁ母は今も存命で、介護自体は今も施設介護に移行して続いているんですが、ひとまず在宅介護で起きたことや経験を書き残しておくことで、あるいは助かる人もいるんじゃないだろうかと思い、ちょっと筆を起こしてみることにしました。

 淡々と、時間があるときに書いていきますので、特に認知症介護の観点で問題意識をお持ちの方はご覧いただければと思います。

もくじ

dimeiza.hatenablog.com

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(To be continued...)