認知症専門医への転院(2024/5)

診断前後のかかりつけについて
元々、もの忘れ外来に行く前から、母は精神科に通っていて、薬の処方を受けていたことは以前に書きました。
で、日本医大で認知症の診断が下ったあとも、診断結果はその精神科に連絡され、引き続きそこから認知症の薬(アリセプト)を処方されていたのです。弟の伝手とはいえ、紹介状はその精神科から出ていましたからね。
これとは別に、母には脂質異常症の既往があって、別の内科から治療薬の処方を受けていたのです。認知症初期にオーバードーズで問題になったのは、主としてこの辺りの定期処方薬と、精神科の薬に関するものでした。
転院を考えた事情
ただ、私が見た感じ、ここから先の介護を考えるに当たって、今の医療体制を継続するのはあまり良くないかも、と思っていました。
主として理由は3つあります。
1. 精神科の先生との信頼関係が欠如しかかっていた
精神科は徒歩圏内ではなく、父が母を車に乗せて通院していたのですが、特に認知症の診断あと辺りから、通院に連れて行った父が色々と心配をこぼし始めたのです。
『本当に効果があるんだろうか』『わからないまま言われたとおり処方しているんじゃないか』とか。
私からは『よく先生と対話してみたほうがいいよ』とは言ったのですが、どうも毎回行くたびにそんな感じで、腹を割って話せていないようでした。
母は結局1年以上精神科に通院したものの好転せず、私が問題提起して弟が病院手配して、ようやく真因として認知症が明らかになったという経緯があります。
父にとってみればこの経緯は、真因にたどり着けず1年間も漫然と薬を処方されたのも同然で、主治医の専門性を疑うのに十分ではあり、無理のないことではありました。
2. 認知症の専門性を求めるべき局面であること
認知症と介護の準備を進める中で、こういう本を読みました。
この本は認知症の家族を見る子供(親族)の心身の負荷をどのように軽減し、体制構築していくか、という本なんですが、こういう図が載っていました。

認知症については認知症専門医1、他の病気についてはかかりつけ医という分担が書いてあります。認知症の症状進行に従ってしっかりと専門医に頼ることの重要性が示されています。
専門医制度について
日本に医者はたくさんいるんですが、いくつかの医療分野においては、その分野の学会などの団体が、当該分野に特に優れた/詳しい医師に対して『専門医』という認定を与えています。
実は認知症についても日本認知症学会が『認知症専門医』を認定しています。この認定を受けた医者は認知症について十分な経験と知識を持っており、認知症への専門性を期待できる医師です。
認知症専門医がどこにいるかは、認知症学会のページから調べることができます。
このページから、認知症家族がお住まいの都道府県、市町村を入れると、認知症専門医が所属する病院、または医師名が出てきます。
あとは各病院のページから診療状況や来歴を確認し、目星がついたら是非相談に行くと良いと思います。
認知症家族の状況を鑑みる
我々の状況に照らしても、専門性の高い認知症専門医にバックアップしてもらうのは大変ありがたいです。そもそも、認知症を診断してくれた日本医大の石渡先生も、上記の本の著者である西村先生も、そして、この後でご紹介するYoutube動画で啓発してくださっている長谷川先生も、全て認知症専門医です。
これらの先生方から認知症について得られた知見は、認知症について何も知らなかった我々家族にとって非常に重要なもので、相当助かりました。
これから中核症状が進行し、周辺症状が出てきた場合、どのように対処していくべきかということを、家族としては相談したくなってくるはずです。こうしたときに、認知症の専門性を十分に持った医師に相談できる環境を作っておくべき、と私は思いました。
3. 今後の通院負荷の増大
もう一つは、母の症状の進行によって、通院の負荷が確実に増大していくであろうことです。
今はまだ自力で歩けていて、父と同伴で病院に行くことにそれほど困難はないものの、ゆくゆくは表に連れ出すことも困難になってくる可能性があります。そうなった時に、車で連れ出して複数の医療機関に何度も受診しなければならない、というのは家族にとって負担になります。
精神科は車で行かなければならない距離なので、父が車で連れ出す必要もあります。車が使えなくなった場合、公共交通機関で診察に行ける、理想的には徒歩で行けるぐらいの距離に病院があれば、今後の通院負荷に対応しやすくなるのでは、という思惑もありました。
認知症専門医を探す

実は日本医大に行く前に認知症専門医については少し調べていて、
- ちょっと遠いが、精神科も持っていて、認知症向けデイケアを併設している医院
を見つけていました。もし弟が日本医大を勧めなければ、ここに行ってみようと思っていた病院です。
ただ、主介護者として母を連れて行くのは父なので、過去の経緯を考えると、父との相性が合うかどうかが大きなポイントです。なので一度父にこの病院にコンタクトを取ってみるように話をしました。
相談してみた所『いつ来てもいいよ』と先生に言われ、コミュニケーションも問題なかったので、特に問題なければそこに…と思っていました。
が、改めて認知症専門医の検索ページから、実家近辺の専門医を調べ直した所、
- 最寄り駅付近でバスでも行けそう、かつ内科を併設している医院
を見つけました。
結構目立たない病院で、私も時々実家に帰る際に見かけてはいたのですが、単なる内科だと思っていた所、ホームページを見ると『脳神経内科』『認知症について』とさり気なく書かれていたのです。
合わせて包括に『認知症介護についてよく連絡をする(良い評判がある)医院ってどこがあります?』と質問した所、その医院の名前がでてきたのです。
- 最寄り駅、バス通院も視野に入り、相対的に通院負荷がだいぶ低くなる
- 内科を併設しているので、別のかかりつけの薬も一本化でき、ワンストップで完結できる可能性
- 更に言うと、父のかかりつけも引き受けてもらえば両親ともに1医療機関で済む
- しかも包括との連絡もよく行っている(認知症介護実務にも通じている)
これらの条件が揃っているなら言うことはないなと。
父から連絡を入れたら初診の予約が取れたので、(平日でしたが)私も都合を付けて付き添うことにしました。
転院の初診

今でも忘れませんね。あれは雨の日の午前中でした。
病院の前で父母と待ち合わせをして病院に入り受付を済ませた所、父はヒアリングのために診察室に入っていき、一方で母は複数の検査(CTとか血液検査とか尿検査とか)を受けることになりました。
母には私が付き添っていて、待合室で待ちながら個々の検査を受けていくという流れで、私は都度検査に母を送り出していたのですが、全ての検査が終わって母が戻ってきても、父が一向に帰ってきません。
この頃から母は、病院で待つことに徐々に耐えられなくなってきていました。
昨年の日本医大でも結構待たされたのですが、それでも普通に会話をしてしっかり待てていたはずの母が、非常に落ち着かなくなってきていて、とにかくなだめるのに苦労した記憶があります。
数分ごとにトイレに行きたがっていたり、5分ごとに『まだ帰れないの?』と私に聞いてくるなど、かなり堪え性がなくなってきていました。トイレについては後で『過活動膀胱』の診断が下ることになるのですが、同じ質問に同じように淡々と答える、という心づもりが事前にできていなければ、私にも相当なストレスになっていたでしょう。
ただ、その時に待たされた時間は客観的に見ても結構長い時間だったのも事実です。認知症の周辺症状由来で落ち着きがなくなっていたのは事実ですが、私から見ても2時間近く、父が診察室に行ったまま帰ってこないのは疑問ではありました。気づけば午前の診療時間は終了し、受付も閉じ始めています。
もうお昼になるぞ、というタイミングで、母と私が診察室に呼ばれたので入っていくと、診察室には父がいて、前には認知症専門医の先生がいました。
先生は母にいくつか簡単な質問(眠れているか? 食事は取れているか?)をし、その時の母は特に問題なく答えていました。それで診察は終了。
だいぶ長かったね? と父に話を聞くと、どうもかなり長い時間、母の状況をヒアリングしていたそうです。認知症診断に至るまでの病状の経緯はもちろん、母の生い立ちから現役時代の仕事の話まで、ありとあらゆる情報を収集していたのだとか。
一人の患者に対して充てる時間としては法外なぐらい大きく、全力で患者の状況を把握するという姿勢を感じました。
その上で先生は、『認知症の診療ガイドラインに基づいて診療するからね』と言ってくれたそうです。
これは日本神経学会が発行した医療者向けのガイドラインなので一般人が読むのは難しいのですが、認知症の診療方法、基準、指針について専門家がコンセンサスを取った方針なので、我が国の標準に基づいて対応いただけるということで、父の疑念を払拭するに良い説明だったと思っています。
母のかかりつけと薬についても合わせて話をしており、引き受けてくださるという回答だったそうです。これで母についてはかかりつけと認知症対応を最寄りの医院に一本化することができました。
これから母が施設入所するまでの間、過活動膀胱に対する方針、食事の管理に関する問題、健康診断対応、皮膚や腰の問題への対処、補聴器の相談など、あらゆることを相談しており、非常にお世話になりました。
この状況を持ってしても、この先の認知症対応は大変だったのですが、もし転院をしていなかったら苦労はその比ではなかったと思っています。
認知症介護における体制構築においては、医療機関の座組についても十分な専門性でバックアップいただきつつ、負荷最小となるような構成を立てておくことをおすすめします。
ようやく一段落
というわけで、これでひとまず母の認知症介護の初期体制構築は落ち着きました。
ここから約1年半、在宅介護が続いたのですが、次回は続きを話す前に、この在宅介護を支えた情報収集の方法やら、自宅の環境構築やらと言った情報についてご紹介する回にしようかと思います。
- 認知症専門医とは別に、独立行政法人国立長寿医療研究センターが養成している『認知症サポート医』という制度がありますが、これはどちらかと言うとかかりつけ医と専門医の橋渡し役に近い存在です。専門性の観点では認知症専門医のほうが上ですが、お住まいの地域に専門医がどうしてもいない場合は、サポート医にお世話になってもいいと思います。↩
























