ITサービスマネージャへ 終着点と果てなき旅路(1)
はじめに
もう何度目か忘れましたが、いつものとおりです。
この度ITサービスマネージャ試験に合格しました。
ITサービスマネージャ試験とは?
一応定義はここに書いてあるんですが…。
『ITサービスマネジメント』と言ってもなかなか分かりづらいかもしれません。
一言で言うと、
サービス運用チームのリーダーとして、安全性と信頼性の高いサービスを顧客に提供する。
とあるように『システム、サービスの運用部門のリーダ級』を想定した試験です。
基本的にIPA試験のロールの多くは、システムを『開発する』ロールであることがほとんどです。
- ITストラテジスト
- プロジェクトマネージャ
- システムアーキテクト
等、論文試験の過半や、テクニカルスペシャリストの多くもこの範疇に入ります。
しかし、システム監査技術者や、本稿で触れるITサービスマネージャは開発からは独立した立場として設けられているロールで、他の区分とは一線を画します。
長らくプログラマ、SEの登竜門であったIPA試験において、開発と一線を画す試験はあまり人気がなく、高度試験の中ではシステム監査技術者やエンベデッドシステムスペシャリストと並んで受験者数が少ないマイナー区分です。
なんたって今年の受験者数は2886人、合格者は294人と300人を切るレベルですからね。
一方で、このITサービスマネージャは『運用のスペシャリスト』1としては唯一の区分でもあり、逆に合格者が少ない分レアリティは極めて高いと言えます。
論文試験区分ではありますが、レベルとしては三大難関程ではなく、システムアーキテクトと並んで論文試験の最初の関門と言われています。
事前状態(なぜ受けようと思ったのか)
いや…まぁ…ここまで来てしまったから…というのが最初の動機ではあるんですけども。
- 高度情報処理技術者試験は8冠。
- テクニカルスペシャリスト区分全制覇(SC,ES,DB,NW)。
- 論文試験区分4つ(SA,AU,ST,PM)
- 技術士(情報工学部門)。
- 要件定義、設計・開発から運用、保守までを引き受け得る、と国からみなされて(しまって)いる立場。
この区分ただ一つを残し、めぼしいIT系国家試験、国家資格は取得しており、もはや足の裏の米粒、取らないと気持ち悪い所まで来てしまったのです。
ただまぁ、それはそれとして、私の所属する組織の事情もあるにはあったのですよ。
自組織は割と開発系には力を入れるんですが、運用系にはリソースが割かれない傾向があって、運用方面に明るかったり、積極的に手を挙げる人が少ない、という風土になっていました。
私自身も運用についてはかなり知識が乏しかったのです。
- システム、サービスを長期間商用運用した経験には乏しい。
- デモシステム等、(直接お金には絡まない)サービスの維持経験はある。
折しも社内で運用絡みで問題がちらほら起こることも多く、技術士(情報工学部門)であるからには、運用についても最低限の知識をもって隙なくあるべきでは、と思ったのが、おそらくここで言明しておくべきであろう、まっとうな動機です。
教材について
今回は未経験の分野ということもあって、なかなか悩んだんですけども。
参考書
結局参考書は2種類使いました。
まずはこれを読んだんですが、なんとなく物足りなくてですね。
知識よりも試験問題対策に重点が置かれており、前回のプロジェクトマネージャで使用した情報処理教科書に慣れた感覚では、若干鍛えたりない感があったのです。
そこでもう1冊買って読むことにしました。
この本も知識編と演習編に分かれているのですが、知識編の分量が過不足なく、ちょうど良い塩梅でした。
なるべく1冊で済ませたかったところですが、私の知識レベルからするとこれぐらいやって正解だったかもしれません。
実務書
実務書は2冊読み込みました。
この本はITサービスマネジメントそのものというよりも、『ITサービスマネジメントを開発側としてどう設計するか』という開発者側視点から入っていくのですが、逆に開発者としてのバックグラウンドが強い私にとっては非常に学びのある本でした。
『先に運用について考えておく』とは一体どういうことなのかを教えてくれる本なので、運用設計に関わったことのない方は一度読んでおくことをお勧めします。
後半は実際の管理フローを想定した設計考慮事項が細かく書かれていますが、今にして読み返してみると、この中身と考え方は午後2論文で投入可能な論文ネタの宝庫です。
試験対策としても実務書としても有用な一冊です。
ITサービスマネージャ試験で見え隠れするキーワードとして、『ITIL』というものがあります。
英国でまとめられた、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティスガイドブックのことです。
一応、ITサービスマネージャ試験はこのITILを参照していて、ITIL 2011、またはこれを国内標準化したJIS Q 20000シリーズを参照しているのですが、最近のITIL4についても一応押さえておいたほうがいいかな、と思いまして。
実際に読んでいくと、ITILv4はPMBOK第7版のようにアジャイル的な考え方の影響を受けた改訂がなされているようでした。サービス事業者による一方的なサービス提供から、顧客を含めて価値を共創していくというパラダイムシフトが起きており、考え方としてモダンなものになっています。
今年の試験ではITIL4が特段効く、ということはなかったのですが、今後の試験への対策や実務上の考え方として、学んでおく価値は高まってきているかもしれません。
武器は揃ったが…
道具立ては揃いましたが、今回はシステム監査技術者同様、経験が浅い中での戦いになります。経験不足をどう演習で補っていったか、の話をしていこうかなと。
以下次号。
- 実はITサービスマネージャのかつての区分名は、"テクニカルエンジニア(システム管理)"。論文試験が課されていたとは言え、以前はテクニカルスペシャリスト区分だったのです。↩