プログラマが第二種電気工事士を取ってみた(2.ソレダメ!〜あなたの施工は欠陥品!?〜)
技能試験
情報処理技術者試験の午前試験と同じく、基本的にちゃんと準備している人であれば、筆記試験はまず突破できるはずです。
そう、本番はこれから。
概要
事前に決められた13個の候補問題の中から1つが出題され、ケーブルと部品を使って40分以内に問題に記載された一般用電気工作物を施工せよ、という試験です。
出題される問題は試験地ごとに違い、事前に知ることはできません。
詳しいことは教科書や試験要領を参照した方がいいでしょう。
必ず覚えておくべきことは2つ。
- 40分という極めてタイトな時間しかない。
- 『欠陥』と呼ばれるミスを1つでも作品に含めてしまった場合、一発で不合格になる。
ということです。
工具
多分これが鉄板だと思います。
ホーザンの技能試験工具セット。試験会場でも多くの人が持参していました。
他に練習用部材セット付きのものや、後述する合格シリーズのアイテムが同梱されているものもあるので、必要に応じて好きなのをお選びください。
初めての人は対策DVD付きのやつを選んで、基本作業をDVDを見ながら習得するとよいです。非常に簡潔かつポイントを押さえています。人によってはこのDVDだけで合格を狙えるかもしれません。
個人的には腕力がないので、リングスリーブの圧着がきつかったんですが 1、何度もやってるとそのうちできるようになるので、腕力が弱めな人もご心配なく。
追加工具
ホーザンはこの工具セット以外にも『合格』シリーズと称した電工試験用工具を出しているんですが、この中で、『合格クリップ』と、『合格マルチツール』は工具袋に入れておく価値があります。
合格クリップ
圧着作業前に接続の事前確認ができ、誤接続を防ぐことができる
ってのが売りのようですが、私はどちらかというと、『リングスリーブ圧着時に電線の向きと長さをそろえるための固定具』として使用していました。
技能試験では、リングスリーブによる電線の圧着はどの候補問題でも必須の工程なんですが、この際、芯線がリングスリーブから一定の長さ以上むき出しになっていると欠陥を取られてしまい、一発不合格になります。
これを避けるためには芯線むき出し部分の長さを短く揃えた上で圧着する必要があるんですが、送電用の電線は電子工作で使うような細い線と違って、中の導線が太いのでそれなりにやんちゃで、手で固定して圧着しようとすると、すぐに明後日のほうを向いてしまったりします。
特に3本、4本を束ねる場合、リングスリーブに入れづらかったりするので、この辺で結構イライラ感が出ます。こうした際に手を使わず線を固定できるので、作業の円滑化が期待できます。
ただし、試験終了時に合格クリップをつけっぱなしだと、それ自体が欠陥扱いになり、これまた一発不合格になります。
合格クリップを使う場合、リングスリーブを圧着したら、すぐにクリップを外す習慣を演習中につけておきましょう。
合格マルチツール
- レンチ
- ロックナットを固定できる
- ブレード
- 器具の電線外し穴に差し込んで電線を外す
- ゴムプッシングに穴をあける
- リングスリーブ保持穴
の3つの機能がありますが、特にロックナット用レンチとして使い勝手が良いです 2。
技能試験で求められるロックナット固定には、通常ウォーターポンププライヤーを使うのですが、ジョイントボックス内にウォーターポンププライヤーを入れようとすると結構作業しづらいんですよ。
その点マルチツールは小さくてすっと入るので、短時間での作業が求められる技能試験ではこちらがおすすめです。
部材セット
最初、『準備万端』シリーズの1回分のやつを買いましたが、本記事執筆時点ですでに在庫切れでした。
2回目を回した際にはモズシリーズを買い足しています。
この辺りもお好きなのをどうぞ。
基本的にさほど変わり映えはしないはず…ですが、最初に使った準備万端シリーズとモズシリーズで、2.0[mm]ケーブル被覆の剥ぎやすさに違いがあった(準備万端シリーズのほうが剥ぎやすかった)ので、多少評判を見て選んでもよいかもしれません。
教科書
技能試験の教科書も『すいーっと合格』シリーズを見ています。
ただ、この教科書を見る前に、先ほど紹介したホーザンのDVDを見ておくのがおすすめです。
この教科書で1点だけ迷うところがあるとすると、
- ケーブルストリッパとの付き合い方
かなと思います。
筆者は電気工事士の必須技能として電工ナイフの操作技能の習得を重視しており、基本的にケーブルストリッパなしですべての作業ができるように書いてあります。数センチ単位の配線長計測でも、ケーブルストリッパのゲージではなく、手(握りこぶしの大きさ等)や電工ナイフの長さで測定するように書いてあったりします。
合格者が電気工事士の実務に携わることを考慮した、非常に親身な配慮 3 なんですが、合格を狙うだけであれば、ケーブルストリッパをフル活用して、ケーブルストリッパでできない作業をほかの工具で実施するようにした方が良いでしょう。
2021/4/30更新: 2020年度からケーブルストリッパメインの書き方に変わっているようです。安心してオススメできそう。
逆に言うと、電工ナイフでしかできない作業には特に注意する必要があります(ゴムプッシングの穴あけと、VVRケーブルの被覆剝がし)。これらの作業は実施する問題も少ないので、意識して練習しましょう。
技能試験対策に当たってのポイント
1. ケーブルの太さからリングスリーブと刻印を求められるようにしておく。
この辺は筆記試験でも問われることなので、しっかり勉強してきた人にはそれほど苦ではないと思います。
技能試験で使う電線は1.6mmと2.0mmの2種類しかないので、この組み合わせと本数から、リングスリーブの種類と刻印を求められれば問題ありません。
- 1.6[mm]2本=リングスリーブ『小』、刻印『〇』
- 電線全部で8[mm]以下=リングスリーブ『小』、刻印『小』
- 電線全部で8[mm]以上=リングスリーブ『中』、刻印『中』
だけわかっていれば、まぁ大体何とかなるでしょう。
ちなみに刻印間違いも欠陥なので、圧着する際には刻印間違いに十分気を付けましょう。私も練習中に何度かやらかしました。
2. 誤解しない複線図を書く。
複線図を2,3書くと分かると思うんですが、
- 線が交差したとき、接続点なのかそうでないのかがわかりづらくなる
- 隣り合った線の色が赤なのか黒なのか白なのかわからなくなる
汚く書いてしまうと、せっかくの複線図がこういう問題を抱えてしまい、施工ミスの原因になりかねません。
- 線同士の間隔をある程度開けられる程度に大きく図を書く
- 交差するときは大きく黒丸を書き、リングスリーブの刻印を記入しておく
- マーカーを使って電線を色分けする
等、施工ミスを起こさないよう、明確に図を書いておくといいです。
あと、複線図を一度書いたからと言って、思考停止して作業に没頭しないようにすることも大事です。
先ほどリングスリーブのサイズの話をしましたが、特に接続、圧着施工をする際に『これで合ってるよな?』と確認を意識しておくといいでしょう。
圧着直前に複線図の記述ミスに気づいて、慌てて『複線図のほうを』直して正しい施工をした、なんてこともあったので。
3. 基本的には2周回す。
Qiitaの記事だと1周でも、って書いてありましたが、個人的には、
- 合格率7割を目指すなら1周でもまぁ何とか。
- 100%に近づけたいなら2周を推奨。
って感じです。
というのも、
- 1周目の最初の数問の演習では、おそらく規定時間(40分)をオーバーする
だろうからです。
技能試験の候補問題は、どの問題をとっても基本作業の組み合わせなので、異なる問題に取り組む場合であっても、基本作業の習熟に伴って、施工に必要な時間は徐々に短くなっていきます。
最初は40分以上かかります
13問やればだいたいできるようになると思います。
って書いてあるのはそういう話です。
逆に言うと、1周だけでは、
- 初期に取り組んだ問題は40分以内で完了することが保証されてない
ってことです。
1周目は習熟のため、2周目は確認と定着のため、と割り切って2周回すと、勝利条件をかなり固めることができると思います。
4. 必ず時間を測る。
技能試験の時間は40分しかないので、時間に余裕ができることはまずもってありません。余裕ができたとしても、確認のためにリザーブしておくのが賢明です。
このため、
- 指定された作業を規定時間内で確実にこなせるか
- 慣れた環境の場合、大体何分ぐらいで施工を完了できるか(何分リザーブできるか)
を知っておくことは非常に大事です。
あと、各問題の時間を計っておくと、
- 自分が苦手なのはどの問題、どの作業なのか
が如実に見えてきます。その問題は自分の弱点なので、その問題を構成している基本作業には特に注意しましょう。
ちなみに私は候補問題No.11が苦手だったらしく、いくつか作業やり直しが発生し、演習でも30分以上時間がかかっていました(ココ伏線)。
5. 完成後、各部品と配線の欠陥をチェックする。
電気工事士の技能試験の最も恐ろしいところは、実は時間ではありません。
- 施工した電気工作物に、1個でも欠陥が存在した場合、有無を言わさず一発不合格になる。
という欠陥の存在です。
せっかくお金と時間をかけて技能試験までこぎつけたのに、くだらないミス一発で努力を水の泡にされてたまるか! と思ったら、施工終了後、各部品と接続に欠陥がないかどうか、教科書を見ながら1つ一つチェックしていきましょう。
大抵の教科書には(試験要領でもよいです)、各部品についてやってはならない欠陥が列挙してあります。例えばランプレセプタクルなら、
- 正しく『輪作り』ができていない(巻きつき不足、巻きつきすぎ、左巻き等)
- ネジが絶縁被覆を噛んでいる
- 芯線が5[mm]以上はみ出ている
- ケーブル外装が台座内に入ってない
- ネジを締め忘れている
- 極性を間違えている
こんな感じに欠陥が示されているはずなので、これらの欠陥が存在しているかどうかをすべてチェックし、やらかしていたら明確に認識し、きちんと施工しなおしておくことを勧めます。
6. 差し込み型コネクタは再利用しない。先に十分買っておく。
演習用に電線セットを買うと思うんですが、私が買った電線セットには、差し込み型コネクタの予備がなかったんですよ。小スリーブこそ100個ぐらい入ってたんですが、差し込み型コネクタは1周分の最小限個数しかありませんでした。
こりゃぁ使いまわすしかないのかなぁ、と思いつつWebで外し方を探し、実際に見つけて外したりもしたんですが、結構手間で時間もかかるんですよね。
そんな手間で時間を消費するぐらいなら、いっそまとめ買いして、使いまわさず捨てたほうが効率的じゃん、と。
これを買って、使いまわさずに捨ててました。失敗時の付け直しを考慮しても、50個づつあれば2周回しても十分余ります。
再利用の時間がもったいないですし、試験でも実務でも、施工失敗時の差し込み型コネクタは電線ごと切って新しいのを使うので、ケチケチせずに買ってしまった方が楽です。
7. 機器接続→ケーブル切断がおすすめ。
これは『すいーっと合格』シリーズの流儀でもあるんですが、ケーブルを先に切断して、切断したケーブルに機器をつなぐよりも、
- 先にケーブルに機器を結線した後で、ケーブルを切断する
という手順で作業するのがおすすめです。
ケーブル切断は不可逆な作業なので、機器ごとに一つ一つ確認して切断した方が確実ですし、場合によっては結線済みのケーブルを入れ替えることでリカバリすることもできます。
大体この辺を意識して、10月下旬から12月初頭ぐらいまで、週末にひたすら演習していました。
以下、次号。