dimeizaのブログ

興味のある技術(IoT/VR/Smart Speaker)とか、資格試験の話とか、日常で出会ったTechな話について書いています。

科学技術分野における最高位の国家資格 技術士(情報工学部門)のご紹介と、資格取得の感想戦について(前編)

本記事はQiita Advent Calendar "IT資格取得をテーマに学びをシェアしよう!【PR】Udemy Advent Calendar 2021" 12/11(土)分の記事になります。

qiita.com

はじめに

 今年はAdvent Calendarを書く気は特になかったんですが、Qiitaにしては珍しく、資格をテーマにしたAdvent Calendarが盛況(カレンダー4つ目)とのこと。

(皆様iPad miniとゲーミングチェアを虎視眈々と狙っておられるようで…)

 『そう言えば、私これ取ったのだから、このAdvent Calendarを書く資格があるなぁ』と今年の自分を振り返ったのが、この記事を書くきっかけでした。

dimeiza.hatenablog.com

技術士とは

 実は技術士、特に情報工学部門については、今年の5月に本を一冊書かせて頂きまして。

(おかげさまで別冊共々、多くの方にご参照いただいております)

zenn.dev

 ここに詳述したので、繰り返しになってしまうんですが、ご紹介するとですね。

www.engineer.or.jp

「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた優れた技術者」の育成を図るための、国による資格認定制度(文部科学省所管)

 です。

 IT技術者界隈では知名度IPA試験より遥かに低いんですが、実は歴史自体はIPA試験とは比較にならないほど古く、由緒正しき国家技術資格です。

第二次世界大戦後、荒廃した日本の復興に尽力し、世界平和に貢献するため、「社会的責任をもつて活動できる権威ある技術者」が必要になり、米国のコンサルティングエンジニア制度を参考に「技術士制度」が創設され、1951年、日本技術士会が誕生し、1957年「技術士法」が制定されました。 

 もう一つ調子に乗って、技術士会に言わせると、こういうことらしいです。

技術士制度について

簡単に言うと、技術士とは、「豊富な実務経験、科学技術に関する高度な応用能力と高い技術者倫理を備えている最も権威のある国家資格を有する技術者」 ということになります。

 『最も権威のある国家資格』と、なかなか大きく出ています。

名称独占と技術分野

 技術士名称独占が法的に認められた国家資格です。名称独占は情報処理安全確保支援士にも認められていましたね。

 技術士は一応士業に当たるんですが、他の士業と違って、認定を受けた技術部門を冠して名乗ることが義務付けられています。

技術士の名称表示の場合の義務)

第四十六条 技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。

 技術士には21の技術分野が定められていて、最も隆盛を誇っている建設分野や、経営工学、果ては上下水道原子力など、日本を支えるあらゆる科学技術分野が包含されているんですが…。

 …この21分野の中にあるのです。情報工学』という部門が。

 ここまで説明して、ようやく技術士(情報工学部門)という資格に到達しました。

技術士(情報工学部門)とIPA試験との差

 IT技術者に説明する際には、IPA試験、特に高度情報処理技術者試験(高度試験)と比較すると理解が通りやすいかと思いますので、比較してみましょうか。

比較項目 高度試験 情報処理安全確保支援士 技術士(情報工学部門)
試験範囲 IT技術全般(区分により異なる) サイバーセキュリティ全般 IT技術全般+技術者倫理+コンピテンシー
要求される技術水準 ITSS Lv4 ITSS Lv4 情報工学全般専門知識+技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
合格後の取扱 能力認定 名称独占(要登録) 名称独占(要登録)
法定義務、責務 特になし 信用失墜行為の禁止、秘密保持、受講 信用失墜行為の禁止、秘密保持、名称表示、公益確保、資質向上
合格率 区分により異なるが10%〜20%の間 約20%前後 (ここ最近)6〜8%
受験資格 特になし 特になし 要実務経験
更新 特になし 3年ごと (現状)特になし
管轄省庁 経済産業省(IPA) 同左 文部科学省(日本技術士会)
知名度 高い 高い 低い

 すごくあっさりとした言い方をしてしまうと、高度試験ではIPAが定めたシラバスの範囲内で、自身のIT知識と経験知を示せれば合格することができます。

 一方で技術士試験ではIT技術に関するウェイトはそれほど高くなく(知ってて当然という前提で)、問題解決能力や、技術者倫理を始めとした行動特性を兼ね備えているかを、実務経験と照らし合わせて検証されるという、IPA試験よりもコンセプチュアルな能力を技術者として問われることになります。

 正直な所、IPA試験よりずっと取っ付きにくく、合格率的にも厳しく難易度も高い試験です。

 技術士試験の各段階については、この先の感想戦で書こうと思っていますが、技術士(情報工学部門)について、もし詳しく知りたい方がいらっしゃるようであれば、ぜひ拙著をお読み頂ければ幸いでございます。

 特にここにまとめてあります。

zenn.dev

技術士(情報工学部門)試験の感想戦

 さて、ようやく本題に到着しました。

 技術士(情報工学部門)の試験でどういう試験がされるかの詳細についても拙著に書いてあって、受験を検討される方はそちらをお読みいただいたほうが良いと思います。

 が、それとは別に、各試験を受けた際の感想戦を書いてなかったなぁと思っていて。

dimeiza.hatenablog.com

よし、これでやっと感想戦ができますね。

 だいぶ放置してしまっていたので、技術士の紹介がてら、Advent Calendarにかこつけて書いてみようかと思っています。

受験前

何故こんなマイナー国家資格と対峙しようと思ったのか

 あれは今から36万…いや、2年前だったか…。

 受験のきっかけは、今から2年ほど前、ITストラテジストという資格に手をかけようとしていた時に遡ります。

 この記事を書く数ヶ月前ですね。

dimeiza.hatenablog.com

 Webで試験対策を調査している時に、こんな記事を見かけましてね。

www.slideshare.net

 これはITストラテジスト協会の定例会で発表された技術士に関する紹介資料です。

 技術士(情報工学部門)という資格自体は、過去に文科省に提出されたこの資料を見て知ってはいたんですよ。

www.mext.go.jp

 これを見たのが2016年、ちょうどエンベデッドシステムスペシャリストを受けた頃で、当時思ったのは、

  • IPA資格とは別にそんなのがあるのかー
  • そりゃぁIPAの方が知名度があるし評価されるから取るよね

 程度だったんですが、2年前にITストラテジストの取得を意識したとき、最初に紹介した資料を見て、ITストラテジスト『先』として見てしまったんですよね。

 ITストラテジストというIPA資格の『(他の区分を取った上での)ラスボス』の先にいる『裏ボス』として。

動機は『実益以外』

 文科省の資料から見ても、技術士(情報工学部門)という資格は直ちに実益に直結しなさそう、ってのは容易に分かったんですよ 1

 なので、この時の私の受験動機は、実益ではなく、憧れというかロマンに近いものでした(平たく言うと自己満足)。

  • 情報工学の技術者資格としては天辺
    • 名目としても、合格率的にも。IPA資格との差別化もできる。
  • 国家が自分に箔を付けてくれる。
    • 国に認められた技術者』ってカッコいいな、と思って。
  • 技術者として独占的な称号を得ることができる。

 まぁ、

  • 資格で会社に仕事を引っ張ってこれるかも知れない。
  • コンサルティング2というキャリアを開く道になるかもしれない。

 と、実益も多少は考えましたが、どちらかと言うと副次的な効果として捉えていた感があります。

 普通の人が資格を取る時って、学習時間や参考書など自己投資を多分に含むだけに、損得勘定で考えることが多いですし、それ自体は職業人としては当然だと思うんですよ。

 ただ、今の技術士資格、特に情報工学部門の立ち位置って、この感覚だとまず受験しようと思わない所3にあって。

 私の場合、この動機の所で頭のネジが一本外れていたのが、受験の大きなきっかけと言えるのかも知れません。

第一次試験

 さて、技術士試験を受けようと思った私なんですが、技術士試験には制度的には2つ、試験としては大きく3つのテストを受けなければなりません。

  • 第一次試験(秋に実施)
    • 多岐選択式のマークシート試験です。これに合格しないと第二次試験を受験できません。
  • 第二次試験
    • 筆記試験(夏に実施)
      • IPA論文試験を遥かに上回るボリュームの論文試験です。3つの試験ではここが最難関。
    • 口頭試験(冬に実施)
      • 20分間、試験官からの口頭での質問を受け、資質能力(コンピテンシー)を試される最終関門。

 ちょうどITストラテジスト試験を受けようとしている最中(夏頃)で受験を考えたので、まずは直近、ITストラテジストとほぼ同時期に実施される第一次試験から受けることになりました。

 ということで、ITストラテジストの試験対策と並行して、第一次試験の学習も進めました。

 幸いなことに、情報工学部門の第一次試験に関しては優遇措置があって、高度試験か支援士試験にパスしていると、専門科目の受験を免除してもらえます。

www.engineer.or.jp

Q:第一次試験の専門科目(情報工学部門)が免除される情報処理安全確保支援士試験合格者及び情報処理技術者試験の高度試験合格者ですが、高度試験の種類について教えてください。

A:ITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験、ネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験、ITサービスマネージャ試験、システム監査技術者試験です。

 私はこの時点で高度を4つ持っていたので、専門科目の免除を受けつつ、専門科目以外の科目である基礎科目(理系学部1,2年次相当の科学技術知識)、適性科目(技術者倫理、関連法知識)の学習に専念していました。

唐突な第一次試験中止の危機

 ところがですね。

 2019年10月という月は台風の当たり月で、この台風が飛んだハプニングを呼ぶことになりました。

【再試験決定!】技術士一次試験が台風の影響で中止や繰り下げ・・・大きな議論を生んでいます

 2019/10/13が第一次試験の日だったのですが、ちょうど巨大な台風が首都圏に襲来しており、全国的にも非常に荒れ模様な天気でした。特に首都圏では交通網がほぼ麻痺状態で、試験会場に物理的に行けない状況。

 この時に日本技術士会は、東京、神奈川の第一次試験実施を『中止』するという声明を出したのです。延期ではなく、中止です。

 これには非常に動揺させられると共に、強く憤慨したのを覚えています。

 技術士試験は年1回実施ですから、中止されてしまうと次に受験できるのは翌年の秋です。受験生としては技術士を取得するタイミングが1年遅れてしまうわけです。

 これについては他技術分野も含めてTwitter上でものすごい騒ぎになって、署名騒動にまで発展しました。

www.change.org

試験中止時の措置に関する法的根拠

 で、これには署名したんですが、それとは別に私はこんなものを見つけてしまったんですよ。

 技術士法第28条に試験の実施について書いてあってですね。

2 文部科学大臣は、指定試験機関が第二十三条の規定による許可を受けて試験事務の全部若しくは一部を休止したとき、第二十四条第二項の規定により指定試験機関に対し試験事務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、又は指定試験機関が天災その他の事由により試験事務の全部若しくは一部を実施することが困難となつた場合において必要があると認めるときは、試験事務の全部又は一部を自ら行うものとする。

 技術士会ができないって言うなら、この条文を元に、文科省に試験の音頭を取ってもらうしかないなぁ、と。

 地域ごとに試験実施状況に差がある状態は法の下の平等に反する、という理屈もつけて、文科省に文書を書いて直接送りつけました4

 その結果、というわけではないですが、最終的に中止の処分は撤回され、東京、神奈川を含めた受験困難者に対しては、再試験という形で延期扱いになりました。

www.mext.go.jp

Covid-19、襲来

 で、(今から考えるとよりにもよって、)再試験は2020年3月に予定されていたのです。

 ちょうどこの時期に襲来したのが、今なお我々を脅かし続けるCovid-19です。

 先だっての中止騒動もあったので、今回のCovid-19によって再度試験が中止の憂き目に合うのでは、と、非常に懸念していて、毎日技術士会のページを確認していたのを覚えています。

ウィルスが齎した試験会場の混乱

 まぁ、技術士会の努力もあって5、第一次試験は無事に開催されたのですが、試験側も経験したことのないウィルスとの闘いで、種々の混乱は見られていました。

  • (今は大分定着していますが、)受験者全員への入室時アルコール消毒の徹底
  • 基礎科目終了後、全員を退室させ空気の入れ替えを徹底化

 対策の勘所が分かってきた最近のIPA試験なんかと比較しても、相当に肩に力の入った備え方になっていました。

 受験者に対しても、全員マスクを持参するように、マスクがない受験者の受験は認められない、と技術士会は何度も勧告していたのですが、マスクを持ってこなかった受験者6がちらほら出てきていて。

 会場内で『(マスクはないが)受験させろ』『職員の指示に従って退出せよ』という、受験者と運営側の押し問答で試験開始が滞る、という一幕もありました7

 というわけで受験するだけでも例年の何倍もキツイ第一次試験でしたが、(再試験までで知識を磨き直したせいもあって)私の成績は上々。無事第一次試験に合格することができました。

 さて、ここから第二次試験に入るのですが、あと半分あるのでここで一旦切りましょう。

 以下、後編に続く。

dimeiza.hatenablog.com


  1. 勤務先の資格取得奨励制度では弁理士、弁護士と並ぶ最高額の奨励金が出ますが、業務独占ではなく、手当も出ず、昇格条件でもなかったですから。

  2. 日本の技術士という称号には、成立当初の"Consulting Engineer"と、国際的標準に合わせた"Professional Engineer"(現在はこれが主流で英名でもある)の2つの意義が含まれています。

  3. これは正直改善が必要なところで、資格にもっと実益が伴うべきだと思っています。

  4. これは単なる手紙ではなく、体裁的には行政手続法に定義された『処分等の求め』に相当します。

  5. さすがに今回中止したら、カレンダー上取り返しがつかないですからね。

  6. ちょうどマスクが品薄だった社会情勢も相まって。

  7. 私の席の近くで情報工学部門の受験者がこのやり取りをしていて、勘弁してくれ…という感じでした。結局別室に行ってマスクをもらって受験したようですが、(技術者倫理にも悖るし)あの調子だと2次試験以降には行けなかっただろうなぁ…。