Oculus Questで”寝ながらリモートワーク環境”を作る
はじめに
COVID-19の強制力ってのは凄まじいもので、リモートワークに強い抵抗感があった弊職場でも、大分導入の動きが起きています1。
そんなわけで、私もなるべく自宅で作業を進め、職場や社会におけるソーシャルディスタンス確保に貢献しようとしていたんですが、ある日、急に魔女の一撃を食らってしまったらしくてですね。
自宅の椅子は一応アーロンチェアなんですが、この椅子を持ってしても長時間着座がキツイぐらいになってしまい。
2,3日安静にして、急性期はやり過ごしたんですが、それでも座っていると結構疲れる状態でした。
まずはVRに助けられる
仕事は仕事として、職場と話をしながら無理のない範囲で進めていました2。
一方でこの状態だと、業務時間外の各種活動も、必然的に座りながらではなく、寝ながらになっていくんですよ。
そんな時に活躍するのがこのデバイスです。
COVID-19が発生して以来というもの、Oculus Questには大分世話になってるんですが、前機種のOculus Go同様、寝ながらコンテンツを視聴するには非常に適しているんですよ。
急性期は正直寝ているしかないので、朝から晩までYoutubeをこれで視聴していました。
とあるゲームがもたらしたヒント
一方、直近、私はとあるHIDEO KOJIMA GAMEにどハマリしておりましてですね。
(2021/9/7)Directors cut版が出るらしいので、これからプレーする方はぜひ(私もやりたい)。
ぎっくり腰発症前もずっと椅子に座ってプレーしてたんですが、発症後は座るのがキツイじゃないですか。それでもプレーしたいなぁ、という情熱があったわけですよ。
その時、ふと手元のコントローラ(XBox 360 Wireless Controller)に目が止まりまして。
ん? これって無線コントローラだよね?
ひょっとして、この組み合わせ(↓)なら行けるんじゃないの…? と。
で、実際にやってみた動画がこれです3。
DeathStranding with Oculus Quest.
— dimeiza@技術士(情報工学部門) 攻略ガイドブック (@dimeiza) 2020年8月30日
最近腰の調子が悪いので、寝ながらDeathStrandingをしてたんですよ。こんな感じで。
そうしたらふと思いついたアイディアがあったので、試しにやってみてYoutubeに上げてみました。
もうだれか思いついてそうな気もしましたが、ひょっとすると役立つかもなぁと。 pic.twitter.com/aPl4uT8343
追従度も結構高くて、普通にゲームプレーできるなぁ、というのもあるんですが、この後数時間ぐらいずっとこの姿勢でゲームしてたんですよ。
こりゃぁ椅子に座らんで良い分、腰痛的には楽だわぁ、と。
思い出したこと
この態勢で何日かゲームした後で、ふと思い出したんですよ。過去に上げた動画とその反応のことを。
昨年、Oculus Questでコーディングってできないのかな、と思って試した動画だったんですが、いろいろ質問が来ましてね。
Is it like coding with a huge screen? Was it comfortable? I’d like to hear your experience
(デカイ画面でコーディングするのってどうよ? 快適?)
で、実際にやってみた感想としてはこうだったんですよ。
1.Headset is heavy and stuffy.
During a short time, I don't mind this, but in long hours, It became an obstacle of concentrate.
(ヘッドセットが重くて息苦しい:短い時間ならいいけど、長いと集中力が削がれる)
2.Font size vs legibility.
Legibility of codes through oculus depends a font size, and reading a code is harder than with desktop App directly.
(フォントサイズと見えやすさの問題:フォントサイズが小さいとモニタで見るより見えづらい)
ところが、ここにDeath Stranding With Oculus Questの経験を持ち込むと、この辺、実は意外に問題ではないのでは? と思い始めてきたのです。
- ヘッドセットの重さと息苦しさ
- 横になってかぶっていると重さが頭に直接かからないので大分楽。
- フォントサイズと見えやすさ
- Death Strandingの文字は解読可能だった。
- ひょっとしてコントラストと画面サイズ調整の問題では?
後は
- PCに対して入力をワイヤレスで伝えれられる環境と、
- 寝ながらキーボード、マウスを操作できる環境
が揃えば、ゲームするのと同じ方法で寝ながらコーディング(あるいは仕事)ができるんじゃなかろうか?
というところまでアイディアが出てきたので、試してみることにしたという次第です。
やってみた
キーボードとマウスはすでに無線化可能な状態が揃っていました。
キーボードはこれで、
マウスはこれだったので。
後はどうやって寝ながらやるかだったんですが、試しに普通のノートパソコンスタンドを使ってみようかなと。
過去のソリューション的には分離キーボードとかもあって、個人的には興味があったのですが、いかんせんこれは敷居が高い。
なので、まずは安価な投資で試してみることにしました。
結果
ご覧のとおりでございます。
メリデメの棚卸し
とりあえず現状環境のメリデメとしては。
- メリット
- 寝ながら作業できる(唯一にして最強のメリット)。
- PCの単一画面でできることは大抵できる。
- 座り仕事由来の疲労が軽減される。起きていると作業が辛い向きにはオススメ。
- 病気とかハンディキャップがある方には、救いのある作業環境になるのでは。
- 寝ながら作業できる(唯一にして最強のメリット)。
- デメリット
デメリットはたくさん書いてるんですが、作業者のコンテキストによっては、メリットがデメリットを補って余りあると思います。
実はこの前後に、Oculus Questのブラウザ経由で英語の技術文書を読んだりしているんですが、ドキュメントを読む分には問題なく内容読解できていて、フォントの見づらさについては実際の所調整で何とかなります。
この辺のメリデメは、今後の技術進歩で間違いなく変わってくる所なので、数カ月後、数年後には確実に状況が変わっていると思います。鵜呑みにせずにいろいろ試してみるといいと思います。
あと、こういう技を使うと変化があるよ、という話があればぜひ教えてください。私も試してみるかもしれません。
Virtual Desktop以外の候補
VirtualDesktopの代わりにimmersedVRを使うとマルチモニタ、Linux対応にできます。
Linux環境だと操作のタイムラグがひどくて作業にならなかったのですが、Windowsだと複数画面出力でDeath Strandingもできます。
Immersed VRはLinuxで接続するとラグがきつかったんですが、Windowsで接続すると、3画面出力でも操作がスムーズに追従しました。#OculusQuest
— dimeiza@技術士(情報工学部門) 攻略ガイドブック (@dimeiza) 2020年9月6日
寝ながらDeath Strandingしてます。 pic.twitter.com/KzjvMaiUem
この後、実際にBlogを書く作業をしてみたんですが、特に問題なく追従できたので、これを使うのも手です。
Simula VRを使うとLinux環境で作業できるようですが、Oculus Questは対象外なので私は使えませんでした。Linux Driverを持っているVRヘッドセット(HTC Vive等)であれば使えるはずなので、お持ちの方は試してみてもいいかも。
さいごに
必要は発明の母とはよく言ったもので、
- COVID-19というリモートワーク推進のフォースと、実際にリモートワークしている労働者
- ぎっくり腰というさらなるチェンジエージェント
- ゲームプレーというPoC実施を推進する要因
道具が一通り揃った上で、これらの環境が可能性を一つ後押ししてくれた、という印象があります。
ここまで書いていてちょっと気づいたのは、Death Strandingを作った小島監督が紹介している、ヨハン・ホイジンガの『ホモ=ルーデンス』(遊ぶ人)という概念と、今回の活動の類似でした。
人間文化は遊びのなかにおいて、遊びとして発生し、展開してきたのだ。
小島監督自身もこう述べています。
遊びとはただの暇つぶしなのではなく、根源的な創造なのです。ホモ・ルーデンス(遊ぶひと)とは、同時にホモ・ファーベル(創るひと)でもあるのです。
遊びの中には不確定性と創造性があって、これらを単なる消費ではなく、生産的思考につなげて何かを創ろうとすることで、この世に存在しなかった概念や知識体系を創ることができるのではないか。
今回の活動もそうですが、最近の私自身の技術的活動の中で、
- 業務的強制よりも自発的な遊びや探索活動こそが、新たな仕事のやり方や技術知識につながっていることが多い
という気づきを得ていて、あるいはこれがポストコロナにおける知的労働者の指針の一つなのではないか、などと若干大げさなことを考えています。
ちょっと小難しいことを言ってしまいましたが、以上、役に立ちそうであれば試してみてください。